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第十三回 グレッチ メインセット

最終回は自分のメインドラムセットを。



かれこれ15年くらい前になるでしょうか。海外メーカーのドラムセットは一台、「NOBLE&COOLY」のセットを所有(今はゴスペラーズ他で演奏している杉野さん所有、国内に三台のみのレア物)していたのですが、全てラックタムだった為に使い勝手が悪く、ライブでは国内メーカーのセットを使っていました。

正直、海外の有名メーカーのセットでも、値段が高いだけで音は別に大差ないだろう、と思ってました。

知らないって怖いですね(^^;;



ある日、浅草のドラムシティーに行った時、偶然中古でグレッチのセットが売りに出てました。先に書いたように、別に大差ないだろう、って軽い気持ちで叩かせてもらったんです。積んであった14インチのフロアタムをただ引っ張り出して、チューニングすらしないで叩いたんです。
衝撃でした。

一発叩いた瞬間に、「あ、オレが欲しい音ってこれじゃん」って思いました。ブルーノートや昔のR&Bのドラムの音って、マイキングやレコーディング環境のせいであの音なんだ、って勝手に思い込んでいましたが、まさにその音がただ叩いただけで出てきました。



それからは欲しいサイズのグレッチのセットを探しまくりました。今みたいにネットで探せる時代ではなかったので、都内近郊の楽器屋さんをひたすら巡っては試打の繰り返し。

数週間後、たまたま入った新宿の楽器屋に、薄汚れたグレッチのセットが無造作に積まれていました。数日前に買い取った物だったらしく、掃除すらされていませんでした。試打をお願いすると、店員さんがペダルを持ってきてくれて、バスドラムに取り付けました。さて、ワクワクしながら叩いてみると...

あれ!?

ダンボールを叩いているのかと思うくらい、全く鳴りません。叩きながらフロントヘッドに顔を近づけても、全然音が抜けてくる気配がない。サイズやスペック的にはバッチリなんだけどなぁ、と思いつつ、店を後にしました。帰宅してからも頭から離れず、ずっと思い返します。

「でも考えてみると、パーツは全て揃ってたし、胴も歪んでなかったし、ネジも回ったよなぁ。ひょっとしたら化けるんじゃないかな?」

半分賭けでしたが、翌日車で買いに行きました。

持って帰ってよ?くチェックして見ると、ホコリ、ヤニ、カビ、ゴキブリのフルオプション(^^;; 全部バラバラにして清掃、オーバーホールが始まりました。木胴部分だけを叩いても、最初は「コッ、コッ」しか鳴りません。汚れを拭き取ってしばらく放置しておくと、「コーン、コーン」と鳴り始めました。これはいけるかも!と俄然テンションが上がって、気が付けば一週間かかりきりで作業してました。

そしていよいよライブリハーサルに持って行きます。セットしか買っていなかったので、スネアは国産物でしたが、意気揚々とセッティングし、いざ演奏!

あれ!?

やっぱり全然鳴らない...

それまで使ってきた国産スネアの方が断然鳴っていて音が抜ける。一気にテンションが下がって、その日のリハの事はよく覚えてません。翌日もリハーサルだったので、セッティングしたままの状態でまた翌日も演奏。

あれ!?

昨日と全然音量が違う。

当時メジャー時代のリハには、エンジニアさんも参加してドラムもマイキングされているのが普通でした。我慢できなくなって、モニターからドラムの音を返したんだなぁ、と思って聞いてみると、

「何も返してませんよ」

「えっ!?本当に?ひょっとして...」

「生音が昨日とは全く違いますよ!」

確かに前日はスネアばっかり大きく聞こえていたのが、今日は真逆でスネアが全然聞こえない状態。ドラムセットとしての本領を発揮し始めた瞬間でした。



そんな馴れ初めがあるので、こいつは生涯の伴侶でしょう。

スペック的には70年代のグレッチで、サイズは22インチのバスドラム、16インチのフロアタム、12と13インチのタムという、至極標準的なセット。バスドラムの足やタムホルダーがラディックの物になってますが、改造された形跡がないのでファクトリーオリジナル、もしくはオーダーした楽器屋で改造し、最初からこのスペックで販売した物だと思います。

スプラッシュ用のスタンドのみ自分で改造してあります。



今回のアルバムでは、「想い出ガソリン」「バンド☆エイド」「むきだしの心臓」の三曲で使用しています。メジャー時代のアルバム「ハネムーン」以降のレコーディングは、ほぼ100%このセットで録音されています。