SAKANAQUARIUM2013 sakanaction ライヴレポート

Photo : 石阪大輔(hatos)   Text : 柴 那典


今までにない、特別な体験だった。

とても胸揺さぶられるステージだったし、いろんな意味で、新しい発見が沢山あった。「SAKANAQUARIUM2013 sakanaction」と銘打ち、全国ツアーをまわってきたサカナクション。キャリア初の幕張メッセ2daysは、バンドにとって特別な場所になっただけでなく、音楽シーン全体にとって、ライヴやコンサートの一つの革新的な方法を提示した、とても大きな意味を持つものになったと思う。何より、あそこに足を運んだ数万人の一人一人にとって、記憶に強く残る瞬間になったのではないだろうか。

僕がレポートするのは、2daysの一日目。階段を降りてフロアに足を踏み入れると、見渡すかぎり周囲はスピーカーにぐるりと囲まれている。ドルビーの協力により6.1chサラウンドシステムが導入された、今回の公演。使用されたスピーカーの数は228本、サブウーファーは68本。このホールで行われる通常のライヴでの使用本数をはるかに上回る。開演前のSEの時点で、ぐるりと音が回っているのがわかる。期待が高まる。



暗転し、大歓声の中、海と空の風景が重なり合うような映像からライヴはスタート。バイノーラル録音で立体音響を再現したアルバム冒頭の“intro”と同じように、左右から、後ろから、様々な音が響く。踏切の音、階段をのぼる足音、楽器を試し弾きする音、メンバーの息遣い。水滴の音。様々な音に包まれる。6.1chサラウンド、すげえな! そんなことを思いながら、ふと、あることに気付いた。あ! これ、あの部屋の音だ。

「アルバム『sakanaction』は、僕の部屋で全てレコーディングしていったんです」

この日のMCでも山口一郎はこう言っていた。つまり、これらのオープニングSEは単なる「6.1chサラウンドのデモンストレーション」ではなく、幕張メッセの広いフロアと山口一郎の自宅を繋げる仕掛けとして機能していたのだ。そのことに気付いたとき、僕はこの日最初の鳥肌が立ったよ。



大歓声に迎えられて5人がステージに登場、まずはラップトップを前に5人が並ぶスタイルで“INORI”から“ミュージック”。ダンスミュージックの高揚感を強く打ち出した新作アルバムの冒頭2曲で、一気にフロアの温度を上げる。「みんな一緒に踊ろう!」と山口一郎は煽る。序盤から相当の興奮状態だ。曲中のブレイクでバンドスタイルに転換し、そのまま“M”を挟んで“アイデンティティ”から“ルーキー”とキラーチューンを連発。興奮のボルテージを一気に高め、最初のクライマックスへと上り詰める。



“multiple exposure”からは会場の雰囲気は一転。ゆったりとしたビート、神秘的なサウンドスケープと柔らかなメロディで、サカナクションのもう一つの側面を展開する。スクリーンにはオイルアートが展開され、その美しい世界に徐々に引き込まれていく。コンセプチュアルな映像を展開した“アルデバラン”や“ホーリーダンス”など、音と光の世界観が完璧にリンクしているのも彼らのライヴの魅力の一つだ。



続く“僕と花”の曲後半からは、再びバンドスタイルからラップトップスタイルへ転換、トランシーなサウンドと強力なビートを打ち出したダンスミュージックでギアを上げていく。そのまま“『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』”、“ネイティブダンサー”と、「SAKANAQUARIUM 2013 VERSION」としてリアレンジされた3曲をプレイ。会場を無数のレーザーが飛び交い、ミラーボールが輝き、舞い降りる無数の雪辺のような泡を照らす。5人の背後には、さっきまでなかった巨大で立体的な照明セットが登場しギラギラ光っている。かと思うと、曲中のブレイク暗転で再びそれが姿を消し、気付いたら5人はもう一度バンドスタイルに戻っている。圧巻の演出だ。



「まだまだ踊れる!?」
山口一郎がそう呼びかけ、本編ラストは“Aoi”から、ミュージックビデオにも登場している二人の踊り子がステージに登場した“夜の踊り子”。絶頂につぐ絶頂のクライマックス。フロアには、汗だくのオーディエンスの興奮の声が響く。実は、ここまでずっとMCなどで音楽が途切れることは一切なし。ロックとダンスミュージックの熱狂、強烈な興奮が息をつく間もなく訪れ続けるようなステージだった。



「みんな自由に踊ってたね」
山口一郎はMCで、そう満足気に言っていた。「もっと自由にみんなが音楽を楽しめる場所を作りたい、それを次の目標にしたい」とも語っていた。
そのとき、僕は二つ目の大事なことに気付いた。今回の幕張メッセ2daysは、これまでとはまた違った意味で、オーディエンスが思いっきり踊って、自由に音楽を楽しむことで完成するライヴだったのだ。



6.1chサラウンドを初めて使った今回のステージ。けれど、実は5人の演奏するサウンド自体は、基本的には全て前方のスピーカーから鳴っていた。たとえば岡崎英美のキーボードの音が横から後ろへグルグル飛び交ったり、山口一郎の声が後ろのスピーカーから聴こえるような、奇抜な仕掛けをすることはなかった。もちろん技術的には可能だったと思う。でも彼らはやらなかった。かわりに印象的だったのは “『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』”や“Aoi”にある多重合唱のパートが、まるでフロアを包むように響いていたこと。

僕はAブロックとBブロックの間あたり、ほぼ会場の真ん中でライヴを体験していた。そのせいかもしれないけど、途中から、オーディエンス一人一人の歌う声や、手拍子が、まるでサラウンドスピーカーから鳴っているかのような錯覚をおぼえていた。5人の鳴らすサウンドと、お客さん一人一人の歓声や手拍子がシームレスになっていた。



6.1chサラウンドのスピーカーは「音楽に包まれる」感覚をもたらしてくれるものだと思ってた。そのことは、ある程度予想していた。でも、それだけじゃなかった。あの幕張メッセのフロアで思いっきりハンドクラップして、叫んで、歌って、踊っていた数万人は、文字通り「音楽と一つになっていた」わけだ。
そのことに気付いたとき、僕はもう一度、鳥肌が立ったよ。
間違いなく、魔法がかかっていたと思う。

オフィシャルサイト


SAKANAQUARIUM2013 sakanaction
2013.5.18(土) 幕張メッセ国際展示場9〜11ホール

■セットリスト
01. Inori
02. ミュージック
03. M
04. アイデンティティ
05. ルーキー
06. multiple exposure
07. mellow
08. ボイル
09. アルデバラン
10. なんてったって春
11. ホーリーダンス
12. 僕と花
13. 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』
14. ネイティブダンサー
15. アルクアラウンド
16. アドベンチャー
17. Aoi
18. 夜の踊り子
EN1. ストラクチャー
EN2. 三日月サンセット
EN3. 朝の歌


<RELEASE INFORMATION>

  • 6th ALBUM『sakanaction』
  • 2013年3月13日発売
  • 初回生産限定盤
    CD+Blu-ray:3,990円(税込)
  • 初回生産限定盤
    CD+DVD:3,780円(税込)

  • 通常盤(CD):3,000円(税込)
  • [ 収録楽曲 ]
  • 01. intro
  • 02. INORI
  • 03. ミュージック
  • 04. 夜の踊り子
  • 05. なんてったって春
  • 06. アルデバラン
  • 07. M
  • 08. Aoi
  • 09. ボイル
  • 10. 映画
  • 11. 僕と花
  • 12. mellow
  • 13. ストラクチャー
  • 14. 朝の歌
  • 15. 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』(Ks_Remix)

  • [ DVD収録楽曲 ]
  • 初回限定盤の特典DVDならびにBlu-rayにはサカナクションの2012年の活動を記録した様々な映像や写真データをカレンダー形式で楽しめる「sakanacalender 2012」を収録。 10曲のライヴ映像、夏フェス会場でのライヴ写真、「僕と花」「夜の踊り子」ミュージックビデオのメイキング、山口一郎自宅、スタジオでのレコーディングドキュメンタリー等となっている。さらに、Blu-rayにのみMUSIC VIDEO3曲を収録。

  • ■ ライヴ映像
  • version21.1 forth
  • ・DocumentaRy
  • TOKYO FM&JFN present EARTH×HEART LIVE 2012
  • ・アルクアラウンド
  • SAKANAQUARIUM 2012 ZEPP ALIVE
  • ・OPENING
  • ・Klee
  • ・フクロウ
  • ・ホーリーダンス
  • ・インナーワールド
  • ・サンプル
  • SWEET LOVE SHOWER 2012
  • ・アイデンティティ
  • ・ルーキー
  • ■ MUSIC VIDEO (※Blu-rayのみ収録)
  • ・僕と花
  • ・夜の踊り子
  • ・ミュージック


<TOUR INFORMATION>

■ SAKANAQUARIUM2013 sakanaction
6月01日(土) 沖縄・沖縄音市場

■ SAKANAQUARIUM2013 sakanaction in Taiwan
6月15日(土) 台湾 台北WALL


[アーティストインタヴュー]
サカナクション



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