NEXUS アーティスト・インタヴュー:DJやついいちろう(エレキコミック) 「『あれも好き、これも好き』って言ってたらカートが一杯になってた」 ――やついいちろうが語る、ボーダーレスな「楽しさ」の秘密

「YATSUI FESTIVAL! 2014」が、3回目を迎える今年も開催される。お笑いコンビ「エレキコミック」のやついいちろうが主催する「音楽とお笑いのエンタテインメントフェス」の、このイベント。一言でいえば「どうかしてる」催しだと思う。出演者は総勢160組以上。6月21日、渋谷地区の複数会場を舞台に、バンド、ソロシンガー、アイドル、DJ、お笑い芸人、文化人が、めまぐるしく登場する。レキシや曽我部恵一から、爆乳ヤンキー、ホリエモンまで。はっきり言って、カオス。でもそれが「楽しさ」の秘訣になっている。

6月4日にはtofubeatsが作曲を手掛けた新曲“そりゃそうよ”も収録されたROCK MIX CD第6弾『PARTY』もリリース。夏フェスで1万人が踊る彼のDJパフォーマンスのほうも、いわば「新たな文化現象」と言っていい状況になっている。これは一体何なのか? フェスについて、DJについて、そして今の時代のサブカルチャーのあり方について、話を聞いてみた。

取材・文=柴那典

自分の家の本棚みたいな感じです

――今年の「YATSUI FESTIVAL!」は、3年目を迎えて会場も出演者のバリエーションも増えて、いよいよ今までにない場になってきたと思うんですけれども。

やつい
ホントですか? ありがたいです。

――これ、そもそも立ちあげた時は、どういう事をイメージして始めたんでしょうか?

やつい
最初は、曽我部さんに「やつい君、フェスやった方がいいんじゃない?」って言われて。

――3〜4年前のことでしたっけ?

やつい
そう。「やつい君は今すごいキテるから。やった方がいいよ!」って言われたんですけど。でもその頃って、世間的にも全くキテないんですよ。だけど、曽我部さんが言うし、じゃあやろうかなと思ったのがきっかけで。そんなに大それたことを考えていたわけじゃなかったんです。

――最初は知り合いとか友達のミュージシャンを誘ってイベントやろう、くらいのイメージだった。

やつい
それ以前も新宿LOFTで誕生日イベントとかをやってたりしてたんで、それの大きいヤツだな、くらいの考えで。いとうせいこうさんとか、池ちゃん(池田貴史/レキシ)とか、堂島君(堂島孝平)とか、ノーナ(NONA REEVES)とか、ゴーイング(GOING UNDER GROUND)とか、一緒に飲んでたり、関係がある人達に頼んだという。それが一回目だったんです。

――バンドとソロミュージシャンとアイドルとDJと芸人と文化人と、そういう垣根を超えたラインナップが揃うイベントにしようっていうイメージは当初からありました?

やつい
ありましたね。元々自分のやってたイベントもお笑い芸人に出てもらってたし、僕がお笑い芸人ですから。お笑いも音楽もアイドルも好きなんですよ。後は、宮沢章夫さんとかプロフェッショナルな人の話を聞くトークイベントも好きなんですよ。なので、そういうのもやりたいなっていう。

――クロスカルチャーなフェスをやろう!というコンセプトありきじゃなくて、自分の好きなもの、観たいものを集めた感じだった。

やつい
そうですね、自分の家の本棚みたいな感じです。あと、僕、普段から音楽をかけながらテレビも付けて、ゲームをしながら本を読んでる感じなんですよね。

――そうなんですね。それは昔から?

やつい
何かを一個集中してやる時ももちろんあるんですけど、基本、全部付けちゃうんですよ。テレビも観て集中してきたら他を消すんですけど、全部が鳴ってる感じがわりと好きだったりするので。その感覚をそのままイベントにしたっていう感じですね。

アジテーション的なものって、どうでもいい。結局自己肯定だから

――今、そういうタイプの人ってすごく増えた感じがありますね。アイドルとロックが象徴的だけど、いろんなものを雑食で楽しむ人が増えた。

やつい
そんな感じはしますね。

――ジャンルで島をわけて、こっちが優れてるとか、ホンモノじゃないとか、そういう風に言う人が減った気がする。

やつい
あんまりなくなりましたね。昔はあったと思うんですけどね。

――そうそう。90年代以降のサブカルで育ってきた人はきっと覚えてると思うんです。自分の趣味で優越感を競うようなところが、確かにあった。

やつい
ありましたね。

――この音楽を聴いてる俺が格好いいとか、このお笑いを知ってる俺が格好いいとか。そういう風に何を好きかで優越を競うような人が減って、それこそアイドルにおける「DD」(=誰でも大好き)みたいに、全部を楽しんじゃうムードが広がってきたと思うんです。

やつい
そうですね。あんまりなんかこう、どうでもよくなっちゃったっていうのはありますけどね。自分としては、そういうアジテーション的なものって、面倒くさいというか、どうでもいいと思ってるんですよ(笑)。それって結局ただの自己肯定だから、やってもしょうがないんじゃないかなと思って。まあ、最初は「大きな音で音楽を聴いたら楽しい」って、それくらいな感じだったんですけど。

――なるほど。すごく原始的なところから出発した。

やつい
でも、今はいろんな人が求めてるものと、その近辺もしくは完全に離れてるものっていうのの最大公約数をとりたい、っていうイメージはありますね。その上で、この最大公約数を作ってる要素をなるべく多く関わらせることで、「ひょっとしてこれもいいのかな?」って思ってもらって、最終的に端のほうまで広がっていくといいんじゃないかなって思います。

楽しさへの信頼が生まれているのは嬉しいです

――3年目を迎えて、やっぱりフェスが育ってきた感っていうのはありますか?

やつい
嬉しかったのは、初年度にあるライターさんが「誰かの熱烈なファンが来てるんだったら、一箇所にお客さんが集中して他がスカスカになることってよくあるけど、やついフェスは全部のステージに満遍なく人が入ってたし、それがフェスとしてすごくよかった」と言ってくれて。去年もそういうムードがあったから、それはよかったなって思いますね。

――やついフェスには独特のムードがあるんですよね。これは何でしょうね?

やつい
何すかね。まあ、沢山の出演者が出てくれてるっていうのはデカいと思いますね。絶対に全部は観れないし。特に今年は160組以上出ますから、一日の出演者だけだったら日本最大じゃないかな。

――それはすごい!

やつい
どうかしてるんですよ(笑)。でも、僕、家に平気でCDが1万枚あったり、本とかコンテンツが1〜2万あったりするんですよ。で、買い物ジャンキーじゃないですけど、「あれも好き、これも好き」って言ってたらカートが一杯になってる状態になっていて。だから会場を増やしたんだけど、また一杯になったっていう。ほんと、どうかしてます。どっかで整理しないのかっていう(笑)。

――そうなってくると、友達かどうかとかではない、出演のセレクトが出てきますよね。

やつい
それは、僕が面白いと思うかどうかってところは多いですね。でも、やついフェスって、わりと人情的な感じなんですよ(笑)。「出たいんですけど」って言われれば大体「じゃあいいですよ」って言っていて。あまりにも雰囲気が合わないとか、そういう時は考えますけどね。

――渋谷の道玄坂を上がったライブハウス一体がその日は基本全部やついフェスのステージになるわけで、イメージとしては文化祭っぽい感じがありますよね。

やつい
そういう感じはありますよね。

――作ってる側として高揚感を感じるときはどういう時ですか?

やつい
みんなが楽しそうにしてたりとかはやっぱり、素直に嬉しいですよ。おかげさまで一年目も、二年目もチケットが売り切れて、今年も一ヶ月前にチケットが売り切れて。それが早くなってるってことは単純に、やっぱりある程度、このフェスが楽しいっていう信用が出来てきてるのかなとも思いますし。出演者発表をする前にも発売開始したんですけど、それでもかなりの枚数が売れたんですよ。

――それはすごい。

やつい
誰も発表してないのにそんなに買ってくれるんだと思って。楽しさへの信頼が生まれているのは嬉しいですね。それに応えようと思って毎回やってます。

DJやついいちろう
(エレキコミック)

1997年エレキコミック結成。やついいちろうが音楽好き、相方の今立進が漫画好きだったことがコンビ名の由来。音楽好きで友人も多く、お笑い界一音楽業界に顔の広い(?)芸人とも言われている。2005年には曽我部恵一氏のプロデュース・作曲でエレキコミックとして、オリジナルアルバム『エレベスト』発売。友人でもある曽我部恵一氏の勧めでDJを始め、2005年「COUNT DOWN JAPAN 05/06」DJブースにて、フェスデビュー。以後、夏の「ROCK IN JAPAN」、冬の「COUNT DOWN JAPAN」にはゲストDJとして欠かさず出演。「DJやついいちろう」名義でMIX CDをリリースするなど幅広い音楽活動を展開している。

オフィシャルサイト


『PARTY』

2014年6月4日(水)発売
初回限定盤(おひとりさまフェスセット付):VIZL-683 / 3,000円(税抜)

通常盤:VICL-64172 / 2,400円(税抜)

【収録曲】
01. ジャズィ・カンヴァセイション / SOIL &“PIMP”SESSIONS feat. RHYMESTER
02. キラーボール / ゲスの極み乙女。
03. distance / MAN WITH A MISSION
04. アブラカタブラ / グッドモーニングアメリカ
05. 爆裂パニエさん / tricot
06. トラベリング / KEYTALK
07. ないものねだり / KANA-BOON
08. 17才 / Base Ball Bear
09. everybody feels the same / くるり
10. 方位 / Bloodthirsty Butchers
11. I DON’T WANNA DIE FOREVER / 銀杏BOYZ
12. でんぱれーどJAPAN / でんぱ組.inc
13. ドリームビート / Wienners
14. 首なし閑古鳥 / 米津玄師
15. JAMAICA JUMP UP feat. YOUR SONG IS GOOD / CUBISMO GRAFICO FIVE
16. Velvet Touch / Dragon Ash
17. The Cosmos / YOUR SONG IS GOOD
18. 夜の踊り子 / サカナクション
19. 虹 / フジファブリック
20. Sunny Day Sunday / センチメンタル・バス
21. 天文学的夏休み / 夜明ケマエ
22. ミラクルをキミとおこしたいんです / サンボマスター
23. にんげんっていいな / ガガガDX
24. SAD GIRL / The SALOVERS
25. 想い出してごらん / 銀河鉄道
26. 針の山 / 人間椅子
27. フィーバー / パスピエ
28. 聖槍爆裂ボーイ / りぶ
29. Sex On The Beach / SPANKERS
30. Tacata’ / MAX
31. そりゃそうよ / DJやついいちろう feat.tofubeats

<おひとりさまフェスセット内容>
・スマホを入れたまま操作!フェス専用スマホ/パスケース(特製ネックストラップ付)
・おひとりさま缶バッジ(PARTY ver.)
※おひとりさまフェスセットは初回限定盤特典です。
※特典内容は変更となる場合がございます。※非売品です。


「YATSUI FESTIVAL! 2014」

日時:6月21日(土)
開場 / 開演 12:30(11:00リストバンド交換開始)
会場:TSUTAYA O-EAST / TSUTAYA O-WEST / TSUTAYA O-nest / TSUTAYA O-Crest / duo MUSIC EXCHANGE / 7th FLOOR / club asia / VUENOS / Glad / SOUND MUSEUM VISION

チケット:6,500円(D別) SOLD OUT!!

出演:
DJやついいちろう / 赤い公園 / アカシック / 阿佐ヶ谷姉妹 / 麻美ゆま / アップアップガールズ(仮) / アナログタロウ / アメリカザリガニ / アルカラ / Yes-man / イツエ / いとうせいこう / ウエストランド / うしろシティ / 宇野常寛 / 江戸むらさき / エレ片 / エレクトリックリボン / エレファントジョン / OL Killer / 大槻ケンヂ / 踊ってばかりの国 / 鬼ヶ島 / 快速東京 / カオポイント / かせきさいだぁ&ハグトーンズ / 片平実(Getting Better) / かみぬまゆうたろう / 嘉門達夫 / Charisma.com / カルメラ / 危険日チャレンジガールズ! / 起(笑)転結 / 吉川友 / キック / GUEEN / くうきにみつる / クウチュウ戦 / くじら / グッバイフジヤマ / 栗コーダーカルテット / 黒木渚 / GEZAN / ゲッターズ飯田 / KETTLES / GeroBAND / GOING UNDER GROUND / ゴールドラッシュ / 後藤まりこ / サイクロンZ / SAKANAMON / THE GEESE / さくら学院 クッキング部 ミニパティ / The SALOVERS / ザ・チャレンジ / THE BOHEMIANS / Salia / 三四郎 / 360°モンキーズ / 三拍子 / さんみゅ〜 / ジグザグジギー / 磁石 / 篠原ともえ / 渋さ知らズオーケストラ / しまおまほ / シャムキャッツ / 住所不定無職 / 瞬間リアライズ / 少女ジャンプーズ / 白幡いちほ&最終未来兵器mofu / しりあがり寿 / 新生軟式globe / 水曜日のカンパネラ / スカート / 杉作J太郎 / スタンプラリー / スパローズ / Small Boys / セカイイチ / 曽我部恵一 / TAIGA / タカラダミチノブ / 田上よしえ / ダブルオー・テレサ / ダブルブッキング / タルトタタン / チャラン・ポ・ランタン / ツィンテル / 津田大介 / DJみそしるとMCごはん / D.W.ニコルズ / DPG / デスラビッツ / 東京アヴァンギャルド / 東京女子流 / 堂島孝平 / どぶろっく / tricot / ナイツ / 永野 / 中村一義(Acoustic set) / 流れ星 / 並木橋Hi-School / 南波志帆 / 日本エレキテル連合 / ニューロティカ / 人間椅子 / Negicco / NONA REEVES / ハイスイノナサ / hy4_4yh / 爆乳ヤンキー / バクバクドキン / 爆烈Q / パスピエ / ハナエ / 花香よしあき / はなわ / バニラビーンズ(BAND編成) / ハマカーン / バンドじゃないもん! / ビックスモールン / HINTO / phatmans after school / Who the Bitch / 風藤松原 / 藤子 / 風男塾 / Bryan Associates Club / FLY OR DIE / BELLRING少女ハート / ポカスカジャン / ホシカワ / ホナガヨウコ企画 / bonobos / ホフディラン / 堀江貴文 / 堀潤 / マシンガンズ / 街裏ぴんく / 松田“CHABE”岳二 (Cubismo Grafico) / MIKA☆RIKA / 魅起法則 / 宮沢章夫 / 宮本菜津子(MASS OF THE FERMENITING DREGS) / 望月哲 / MOP of HEAD / MOROHA / モンブランズ / 安本精肉 / ゆってぃ / 夜明ケマエ / 吉田豪 / 吉村潤 / ラブレターズ / RAM RIDER / Lantern Parade / lyrical school / LinQ / レキシ / レッスン祐輝 / RON RON CLOU / 忘れらんねえよ / ワンダフルボーイズ / ワンリルキス

YATSUI FESTIVAL! 2014

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