NEXUS アーティスト・インタヴュー:山崎まさよし 「音楽の種を蒔く」決意の理由

山崎まさよしが約3年ぶりのアルバム『FLOWERS』をリリースした。

昨年から今年にかけてツアー「TOUR 2012-2013 “SEED FOLKS”」を行ってきた彼。「種を蒔く人」というツアータイトル通り、全国の小さな町にも足を運び、各地で音楽の種を蒔いてきた。それを受けて咲いた「花」を集めたアルバムが、今作だ。

でも、そもそも彼が「音楽の種を蒔く」ということを意識したのは何故なのか? デビューからは18周年、通算10枚目のオリジナルアルバム。艶のある歌声と確かな音楽的素養をもとに、安定と充実のキャリアを築いてきた彼。それでも、40代となりミュージシャンとしての問題意識は大きく変わってきたようだ。アルバムには、ボブ・マーリィのカバー曲“Redemption Song”や、憲法9条について書いた“#9 story”など、社会性を持ったメッセージ性の強いナンバーも収録されている。

この先も「SEED FOLKS」ツアーは続いていくという。彼の決意を探った。

取材・文=柴那典

歌と社会との関わりをもう一回考えてもいいと思う

――アルバムは3年ぶりですけれど、タイトルだけでなく、音楽的な面でも「SEED FOLKS」から繋がっているものは非常に大きいと思いました。すごく土に根付いたグルーヴ感があるというか。

山崎
そうかもしれないですね。グルーヴを見せるというのも、「種を蒔く」というツアーの一つの面だったわけですし。それをお客さんに届けるのも意味があることだと思いましたし。その結果『FLOWERS』というアルバムに結びついたわけなので。ただ、このアルバムに関しては、やっぱり3年くらいは遡るんです。あのツアーもあるけれど、やはり震災が大きかった。

――シングルとしては、震災後の2012年の5月に『太陽の約束』をリリースられたわけですよね。

山崎
そう。でも、あの曲も震災から1年後くらいかかっているんですよ。今回は震災が起こって、その後に作ったアルバムであるということは大きいです。

――2011年からの3年間で、山崎まさよしさんご自身のミュージシャンとしての問題意識が変わってきたところがある。

山崎
震災後はがらっと変わりましたね。今まで信じていたものが信じられなくなったりもしたし。でも、ああいう出来事が起こると、自分の可能性や、自分にできることも考える。そこで、進むべき道が明確になってきた感じはありましたね。やるべきことを考えるから。

――たとえばどんな変化があったんでしょうか。

山崎
自分なりにメッセージを投影したものにすることは考えましたね。CDという媒体がこの先どうなるかはわからないけれど、やっぱり、自分がアルバムとしてこれだけ広まるものを発売できる境遇にあるというのは稀なことですから。前は、いわゆる政治に関しても無知だったと思うんです。でも、今は、音楽をやっていて、言葉や音に落としこんでいるのだから、時代を投影したものにするということは考えました。

――今回のアルバムには、ボブ・マーリィの「Redemption Song」のカバーが収録されていますよね。この曲を今歌うという意味合いも含めて、いろんなことを考えさせられるアルバムになっていると思います。

山崎
特に今回のアルバムは抵抗なくカバーを入れられると思いました。自分の身体を通して過去にあった曲が何かに受け継がれていっても素敵な話ですしね。

――アルバムの「裏テーマ」として、どことなく60年代に通じるような感覚も感じました。ボブ・マーリィのカバーが収録されているのもそうですけれど、たとえば「Flowers」のリズムの感じも60年代っぽい。

山崎
確かにそうですね。ブギーっぽい三連のリズムだったり。モータウンのようなリズムもある。それは自分の好きなリズムでもあるので、不思議と60’sっぽいところはありますね。それはあえて意識せず、自然とそうなっていったかもしれないです。

――これは深読みかもしれないですけれど、「Flowers」というところから、60年代にあったフラワー・ムーブメントという繋がりも感じたりしました。

山崎
フラワーチルドレンとかね。「SEED FOLKS」もフォークソングのフォークなんだけれど、そういう時代の音楽って、若者も政治に関心があったと思うし。それがペンなのか、歌なのか、何をもって社会に、時代に関わるかというところがあった。歌と社会との関わりをもう一回考えてもいいと思うんですよね。

――音楽を歌うことが、人々の営みと通じるし、それが当然社会と通じるという。

山崎
そうですね。たまたま僕は音楽をやっているし、ちょうど歌があった。今、ここにきてそんな気がしていますね。

この先、いろんな人が前に進んでいくための足がかりになればいい

――アルバムを経て、これからのライヴはどんな感じになっていくんでしょうか。

山崎
ツアーの「SEED FOLKS」は今後も続けていこうと思ってますね。ただ、『FLOWERS』というアルバムにとらわれるツアーにしようとは思ってないです。今回のアルバムの曲もやるでしょうけど、「この曲をやらなきゃいけない」と考えると、やっぱり縛られちゃうんです。

――改めてお伺いしたいんですけれど「SEED FOLKS」というコンセプト、「種を蒔く人」というテーマを考えたのは、どういうところからなんでしょう?

山崎
最初に考えたのは、主要都市ではなく、いろんなところに自分から自ら赴いて、音楽の種を蒔くという。そういう意味合いだったんです。人の心に音楽を届けるためのツアーだという。それこそ、震災後に考えたことと繋がってますね。この先、いろんな人が前に進んでいくための足がかりになればいい、という意味がある。それがコンセプトですね。

――一過性のものではない。

山崎
そう。だから、今後も続けていきたいと思ってますね。その間に、こういった花を咲かせながらやっていこう、という。

――これから先、5年や10年後を踏まえたビジョンについてはどうでしょう?

山崎
まあ、何かしらやっているんでしょうね。あんまり見据えてはいないです。目の前にあることをやっていくという、それだけですね。続けていくという。ま、その間には東京でオリンピックもありますしね(笑)。

山崎まさよし

1995年に「月明かりに照らされて」でデビュー。1997年公開の主演映画『月とキャベツ』の主題歌「One more time, One more chance」がロングヒットし、ブレイク。精力的な全国ツアーを行ってきたほか、全国各地のフェス・イベントへの出演、ミュージシャンとしてのセッション参加なども数多く、音楽ファンのみならず多方面から支持を得ている。
2013年9月18日には約3年ぶりとなる待望のオリジナルアルバム「FLOWERS」をリリースする。大盛況のうちに終了した”SEED FOLKS”というツアータイトル通り、“種を蒔く人”となり、全国各地で音楽の種を届ける旅を続けてきた。多くの方と共に育ててきた大輪の花の数々を収録。

www.office-augusta.com/yama/


『FLOWERS』

2013年9月18日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD):
UPCH-29151 / 3,675円
※シングル4曲のPVを収録したDVD特典付き

通常盤(CD):UPCH-20328 / 3,059円

【CD】
01. はじまりのDing Dong
02. 太陽の約束
03. Redemption Song
04. Higher Round
05. #9 story
06. アルタイルの涙
07. 星空ギター
08. ネタバレシャッフル
09. アフロディーテ
10. Green Bird
11. Flowers
12. #9 story (reprise)
13. 道

■初回限定盤特典DVD収録曲
01. 太陽の約束 (MUSIC CLIP)
02. アフロディーテ (MUSIC CLIP)
03. 星空ギター (MUSIC CLIP)
04. アルタイルの涙 (MUSIC CLIP)

山崎まさよし
TOUR 2012-2013 ”SEED FOLKS”

  

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