NEXUS アーティスト・インタヴュー:tofubeats 「楽しさがなくなったら一番キツい」――tofubeatsが語る時代と音楽と自分

いよいよtofubeatsがEP『Don't Stop The Music』でメジャーデビューを果たした。神戸市在住の22歳が、インターネットを拠点にDIYで作り上げたアルバム『lost decade』をスマッシュヒットさせたのが今年4月のこと。ネット世代のDJ/トラックメーカー代表としてメディアや音楽ファンからの注目もさらに高まる中、デビュー作はその期待に120%応えるような出来栄え。森高千里をフィーチャリングした表題曲、の子(神聖かまってちゃん)を迎えた“おしえて検索 feat.の子(from神聖かまってちゃん)”を筆頭に、90年代や00年代を踏まえて新しいJ-POPのスタンダードを開拓するような、ワクワクする楽曲になっている。

神戸を訪れ実現した前回の取材に続き(http://www.nexus-web.net/interview/tofubeats/)、彼の“音楽作法”をじっくり語ってもらった。

取材・文=柴那典

嬉しいのか悲しいのかわからない気持ちは、音楽とかでしか言えない


――今回は、まず、なぜ森高千里さんをメジャーデビュー曲でフューチャリングしようと思ったかを訊かせてもらえれば。

tofubeats
自分であまり歌いたくないというのがあって、そこから誰かヴォーカリストを呼ぼうという自然な流れがあったんですけど、前回の『lost decade』で南波志帆さんやAAAの日高くんみたいなメジャーのアーティストに声をかけてやることに成功していて。しかも自分の出資、僕の口座からお金を振り込んでオファーをするという、かなりよくわからない方法で仕事ができてしまったんで、単にメジャーな人とやるだけでは見ていて面白くないだろうと思ったんですね。YUKIさんとかflo ridaのリミックスもあったし、そういう中で誰を呼べば一番ビックリするか、というところからですね。で、「無理を承知でもいいから本当に好きなアーティストを冗談半分でも言ってみてくれ。馬鹿なフリして聞いてあげるから」とスタッフさんから言われて。で、僕は森高さんの名前を一番上に挙げたんですよ。そしたらOKをいただいていて。だから、誰を呼べば驚かれるかなってのもあったんですけど、本当に純粋に好きなアーティストだったというのが一番大きいです。正直、「通るか? 通らんやろ!」と思ってたくらいなんで。

――まず、ファンであるというのが大きかった。

tofubeats
もちろんそうです。曲が好きで。

――どういうところが好きだったんですか。デビューした頃はリアルタイムじゃないですよね?

tofubeats
そうですね。92年とかが一番売れてた時だと思うので。僕の森高さんの原体験は“ロックンオムレツ”をポンキッキで見ていたということなんです。よく考えたら、あとからブックオフで買っているCDって安室奈美恵、鈴木蘭々、スチャダラパー、斉藤和義もそうですし、森高千里、大江千里もそうだし、全部子供番組で刷り込まれた趣味なんじゃないかと思ったりすることもあって。で、森高さんは、そういう風にブックオフとかで昔の音源にアクセスしている中で、一際異彩を放っているアーティストなんですよ。当時の盛り上がりを知ってる人はミニスカとか話題性込みの人だったって言うけれど、僕からしたら音楽しか残ってないから、そういうイメージが一切ない。それがわからない分、アーティストにしか見えないという。だから、純粋にいい音楽だなあって。すごくかっこいいなと思いましたし。

――最近、蜜というユニットが森高さんの“私がオバさんになっても”をカヴァーしてたんですよ。「どういうところが好きだったんですか?」って聞いたら、「すごく音楽的だ」って言っていて。

tofubeats
そうですそうです。あの曲はすごい曲ですよ。あと、最近ずっと言ってるんですけど、宇多田ヒカルっぽいっていう。突拍子もないかもしれないですけど。“Goodbye Happiness”と“私がオバさんになっても”が似ているっていう。それは音楽でしか言えないメッセージっていうことなんです。嬉しいのか悲しいのかわからない気持ちってあるじゃないですか。それは言葉では言えないけど、音楽を使って説明ができてる。それがあの曲のすごいところ。だから超音楽的で。そういうのが森高さんの曲には一杯ある。だからすごくアーティストだなって思う。自分で作詞もされたり、楽器も演奏されてますけれど、それって音楽やっていたら当然持つ興味だと思うんですよ。そこにもちゃんと行っている。そういう興味の幅の広がりがあるのも好きで。

――ドラムとか叩いてますもんね。

tofubeats
そうなんですよね。ドラムもめっちゃいいですし。純粋にミュージシャンとしての部分が今は印象的に見えるじゃないですか。そこがすごくいいんですよね。

――でも、お話を聞いていると、「嬉しいのか悲しいのかわからない気持ちを音楽で表現する」って、tofubeatsの音楽の良さだと思うんです。tofubeatsの語る森高千里の良さっていうのがそのままtofubeatsの音楽の良さにつながる部分がある。

tofubeats
だから自分が目指している部分を体現しきっているところがあるというか。森高さんはキャリアが成熟した今も何百曲とセルフカヴァーをYouTubeにアップしてたりする。あれ、最初は趣味みたいな感じでやっているみたいなんですよね。そしたらだんだん凝り始めちゃってああいう感じになったらしくて。そういうのってすごくいいじゃないですか。周りのスタッフさん含めて、音楽が好きでやっている人たちの集まりっていう感じがすごく最高で。そもそも僕とやることをOKしてくれましたからね。22歳のデビューシングルに「いいよ」って言って、大御所の方の努力とか歴史とかをお貸ししますよって言ってくれるのがありえないことだと思いますし。ものすごく喜んでいますね、僕自身は。

――いろんな意味でバッチリだったんですね。

tofubeats
本当にそうですね。「こんな事になればいいな」っていうのになってしまったというか。

今は「確変が起きている時」

――メジャーデビューが決まって以降、変わった部分と変わらなかった部分とあると思うんですが、tofubeatsという人の状況と周りと環境でいうと、どうでしょう?

tofubeats
端的に言うと、これまでやってきたことが100%できなくなってきたというのはあります。フリーで全部やるとか、完成した瞬間に解禁とかはやっぱできなくて。正直今回のアルバムとかも解禁日とかも細かく設定されていて、できる限り協力していただいているんですけど、これまで通りあけすけにやったりとか素材を発売前に出したりとかはできなくなってきている。その代わり森高千里さんと一緒にできるような規模の大きな話とか、あとは露出もありますし。

――変わらなかった部分としてはどうでしょう。

tofubeats
変わらない部分としては、僕は神戸に住んでいてのんびりやっているっていうこと。そこは基本的には変わらないです。東京にいる時は忙しいっていうのも一緒で。

――そっか、元々神戸に住んで、ちょくちょく東京に来ていたわけですもんね。

tofubeats
そうですそうです。だから、そういうスタイルは変えずにメジャーデビューさせていただけて、神戸にいる時は相変わらず静かに過ごしているので、それもすごくありがたいというか。

――東京に出てくるという選択肢は選ばなかったわけですもんね。

tofubeats
そうすると毎日稼働しなきゃいけない気がして、東京に来ればその日に全部のスケジュールを入れてくれるじゃないですか。それがいいっていうか。あとはずっと言っていることなんですけど、楽しくやれることが一番なんですよ。今はそれでお金がもらえるフィーバー中というか、「確変が起きている時」と思ってないといけないっていうのがずっとあって。マネージャーといつも話をしてるんですけど、3ヶ月楽しくなかったら方向性を話し合う。自分が楽しくやれないと絶対にいい曲できないんで。売れたらいいし、売れないとちょっと会社的にも問題あるんですけど、自分としてはそれをそこまで気にしすぎてしまうといいものができないし、どうせまた病気になって倒れるだけなので。自分のできる範囲でやるというのはものすごく意識しますね。かたくなに神戸を離れないのも、神戸がいいとか、地方的な問題、スタンスを楽しむというのももちろんあるんですけど、一番の理由はそれが個人的には音楽自体を楽しくやる手段だから。東京にいて芸能っぽい動きが増えてしまうと、音楽ばっかりはできないかもしれないし、一人でモノを考える時間を取れないとしんどいですね。人付き合いがメインになってしまって、僕らみたいに若くてこれから駆け出しの人とかは、その中で評価されるために音楽を作るってことになりがちだと思うんで。褒められたら乗ってしまうし、言われたら流されてしまうし。だから言われないし流されないところにいると、自分本位でできるじゃないですか。それがいいっていうか。

――楽しくやるっていうのは、特にこれからの時代、すごく大事なことだと思います。

tofubeats
それは絶対守りたいですね。別にお金はなくなってもどうにでもなりますけど、楽しさがなくなったら一番キツい。それはありますね。

――でもね、たまにいると思うんですよ。「いやーtofubeatsくん、そんなこと言っていられるのは今のうちだよ?」とか「成功するには楽しくやるなんて甘いこと言ってられないよ?」みたいな説教をする人。でも、僕が思うに、そういうことを言う人は得てして「自分自身が楽しくやってない人」なんですよね。

tofubeats
こっち来たらよく言われるんですよ。「上昇志向が足りない」とか。でも、別に上昇させること自体が僕の仕事じゃないし。売ってもらえるのに値する音楽を作るのも、自分がやっぱ楽しくないとね、って思います。それが本当の意味でのセルフマネージメントというか。プレッシャーとか、極力かからずに生きていたいじゃないですか。今はやっぱり相当かかってるんですけど、神戸にいると多少は楽ですから。

――いわゆる華々しいメジャーデビューのタイミングですけど、自分がこの先10年どうやって音楽をやっていくかの方が問題のスケールとしてはデカい。

tofubeats
てか「そっちのほうが絶対大事だし!」というか。さっきも言いましたけど、今は絶対フィーバーが起きているだけ、当たっている時なので。ワーナーさんの力で今は当たっているだけ。宣伝してくれているのもワーナーですし、森高千里さんと繋げてくださったのは会社ですし、別に自分の力ではないので。曲は僕が書きましたけど、くらいで思っとくのが丁度いいかなと。じゃないと怖いなぁというのはありますね。

――そういうスタンスを取れているのは、これまでの活動の成果も絶対あると思うんですけれども。

tofubeats
そうですね。だからやっぱフリーで配って楽しかったっていうのがあるじゃないですか。僕らはお金がなくてもその時はその時で結構楽しかったので。今はお金があるからもっと楽しいけど、よく考えたらそれ抜きで音楽やっていても楽しかった。もちろん規模は小さかったっていうのもあるし、一度大きいのを知ってしまったら戻れないというのもありますけど、でも無理してやっていく感じではないと思いますね。

tofubeats

1990年、平成2年生まれ、神戸市在住のトラックメイカー / DJ。インターネットで100曲以上の膨大な量の楽曲を公開し続けるかたわら、YUKI、FPM、佐々木希、ももいろクローバーZ、Flo Rida など、様々なアーティストのリミックスも手がけており、その手腕はジャンルや世代、メジャーインディー問わず高い評価を得ている。他にwebCM などのクライアントワークも多数。
2011年からは清純派ヒップホップアイドルlyrical schoolに継続的に楽曲プロデュースで参加。作詞から作曲まで一貫して手がけるその手腕には定評があり、2013 年には9nine など他アイドルの楽曲プロデュースも行う。
また、現在までに自身の名義を含む6枚のアナログ盤をリリースするなど、インターネットだけに絞られない活動を行っており、盟友オノマトペ大臣と2011年末にリリースした「水星 EP」は初回プレスが発売直後に即完売。2度の追加プレスを重ねアナログ盤としては異例のヒットに。後の強い要望を受けてリリースされたデジタルバージョンはiTunes 総合チャートを1位を獲得。iTunes Best of2012にインディペンデントアーティストであるにもかかわらず選出され、翌2013 年のニューアーティストにも選ばれる。こうしてリリースされた2013 年最初のデジタルシングル「夢の中まで feat.ERA」もiTunes で総合チャート1位を獲得、4月24日リリースした待望の1stアルバムもiTunes でアルバム総合チャート1位を獲得。
世界のインターネットに散らばる最新のクラブミュージックからJ-POPまで、凝り固まらない平成生まれのバランス感覚を持った新進気鋭の若手トラックメイカーである。

http://www.tofubeats.com/


メジャーデビューアルバム
『Don't Stop The Music』

2013年11月13日発売
初回限定盤:WPZL-30767/8 /
2,000円(税込)

通常盤:WPCL-11643 /
1,575円(税込)

■収録曲
<Disc-1>
1. Don't Stop The Music feat.森高千里
2.おしえて検索 feat.の子(神聖かまってちゃん)
3.神戸で逢えたら
4. In Real Life
5. Don't Stop The Music feat.森高千里(tofubeats URL mix)
6. Don't Stop The Music(Instrumental)
7.おしえて検索(Instrumental)
8.神戸で逢えたら(Instrumental)

<Disc-2>
朝が来るまで終わる事の無いダンスを -mix for Don't Stop The Music-
初回限定盤のみ封入ソノシート収録楽曲

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