NEXUS アーティスト・インタヴュー:tofubeats「僕は一人で、しかも地方でここまでできたから、あなたもやれると思います」――時代の寵児tofubeatsが語る、ネット世代の音楽作法

神戸在住のトラックメイカー、tofubeatsによる初のオリジナルアルバム『lost decade』が素晴らしい。

メジャーレーベルのバックアップも、メディアへの広告もないままに、一人の地方の大学生が配信した楽曲“水星 feat.オノマトペ大臣”がiTunes Storeのチャートの総合1位を記録したのが2012年夏のこと。その事実は確実に彼を“時代の寵児”の一人へと押し上げた。中学時代から数々の音源をネット上に公開し、数々のリミックスや楽曲提供などで活躍してきたtofubeats。いまやネット世代のクリエイターの代表格となった彼の本格的なデビュー作とも言えるのが、このアルバムだ。4月24日にリリースされた本作は、やはりiTunes Storeのチャートの総合1位を記録した。

今回は、彼のホームタウンである神戸に訪れての取材が実現。その人懐っこいポップセンスの由来、そしてインターネットと今の音楽をめぐる状況について、語ってもらった。

取材・文=柴那典

楽しい時間は絶対終わるし、終わるときが何より気持ちいい



――アルバム、すごくよかったです。

tofubeats
ありがとうございます。

――まず、タイトルは『lost decade』ですけれど、これはどういうところから?

tofubeats
これはもともと、tomad、DJ WILDPARTY、okadadaっていう友達と4人でやってたイベントのタイトルなんです。つけたのはtomadなんですけど、イベントを始めた時に「lost decadeでいいんじゃない?」ってことになって。で、それを今回拝借したっていう。

――これは「失われた10年」っていう意味ですけれど――。

tofubeats
そんな大した政治的テーマもないんですよね、実は(笑)。僕、中高大と10年間同じ学校に通ってたんですけど、パソコンが部屋に来てインターネットとDTMを始めたのが中1の時で。今回の作品が大学を卒業して出るアルバムなんで、その期間がちょうど10年なんです。いろいろそういう風に説明できるなってことで。

――でも、そういう「失われた」という言葉の響きだけから言うわけじゃないんだけど、基本tofubeatsさんの作る音楽って、「終わることがわかってるけど、だからこそ楽しい」みたいな感覚があると思うんです。それはどういうところから出てきたんだと思います?

tofubeats
なんか、そういうのが好きなんですよ。ドラマの最終回とか、演劇のラストとか。2時間ぐらいやって、泣いて終わって、「ああ、よかったぁ」とか思ってたら明るい音楽が流れてきて「ありがとうございました!」って役者がカーテンコールで出てくるじゃないですか。ああいうのが、なんでかわからないけど好きで。

――クラブミュージックにもそういう感覚ってありますよね。

tofubeats
クラブ自体がそうですよね。夜通し盛り上がって、終わったらみんな何もなかったように解散していく。その流れ自体が好きなんです。例えば映画のエンドロールが流れるときの音楽とか、そういう構造を持ったものをやりたいというのがずっとあって。諸行無常みたいな考え方なのかもしれない。楽しい時間は絶対終わるし、終わってほしい。それが終わるときが何より気持ちいいっていう感じがあるんですよ。

――僕はたとえば小沢健二とスチャダラパーの“今夜はブギーバッグ”とか、リップスライムとかにもそういう感覚があると思うんですけど、どうですか?

tofubeats
オザケンはそうですよね。ただ、僕は比べると、もうちょっと1歩引いた感じなんですよね。リップスライムもオザケンも好きなんですけど、あれは輪の中にいる人たちの感じがする。ああいう感じになるのは東京の人じゃないと無理というか。僕はそうじゃなくて、輪の中にいる人を観客席で観てるタイプ。それはずっと神戸にいるせいかもしれない。友達がいたら違ったかもしれないですけれど。

「これいいよね」って話ができる相手が誰もいなかった

――そもそも、最初に音楽に目覚めたのは中学生の頃に日本語ヒップホップを聴き始めたことだという話を聞きましたけれども。

tofubeats
そうなんですよ。中学校1年生のときに、キック・ザ・カン・クルーとかがテレビで流れてて、「そういうの好きなんだよね」って友達に言ったら「本物の日本語ラップ教えてやる」って言われて、ブッダ・ブランドとか、TWIGYとか、NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDとかいっぱい聴かされて。そこからですね。“人間発電所”(ブッダ・ブランド)のイントロを聴いて「こんなの聴いたことない!」って思って。

――ヒップホップはやっぱり自分の中で核としてずっとある?。

tofubeats
そうですね。ただ、それより前に、初めてお小遣いで買ったCDはSoweluなんですよ。その時すごく売れてたSoweluが普通に好きだったんです。だから、今と全く軸がブレてないっていうか。そのとき好きだったアルバムが、ポップスだと中島美嘉の『TRUE』とSoweluの『Geofu』で、ヒップホップはブッダ・ブランドが好きで。今もやってる仕事がアイドルとクラブミュージックなんで、やってることは一緒だなと思います。

――さっき、自分には友達がいなかったって言ってましたよね。

tofubeats
そうですね。ずっと一人でやってきて、「いいね!」って褒め合う人もいなかった。地元の友達は、中学校に入ってから2人だけ、10年間付き合いがある人がいるんですけど、2人とも音楽に全然興味ないんですよ。だから、友達がいないわけじゃないんだけど、「これいいよね」って話ができる相手が誰もいなかった。

――それこそ“水星”でのオノマトペ大臣とか、マルチネ・レコード周辺の人とか、今は周辺にそういう人が沢山いるわけじゃないですか。それはインターネットの存在が大きかった?

tofubeats
そうですね。インターネット以後です。大臣と出会ったのは、イルリメとか磯部涼さんがやっていたネットラジオがあって、高1の頃にそこにリミックス作って送ったんですよ。そしたらその音源がかかって「高校生?」「うそやろ?」みたいにいじられまくって。その回を大臣がたまたま聴いてて、tofubeatsってやつが神戸にいるって知ったらしくて。で、mixiに地元のレコ屋のコミュニティがあって、そこで見つけて僕にメッセージを送ってきたのが最初。で、「メシおごってやるから遊びに行こうぜ」みたいな感じで遊び出したのが高校1年生のとき。そこからですね。で、同時期ぐらいにマルチネ・レコードの人ともつながり始めたんです。

ブックオフの棚にあるものは全部並列な情報



――去年に出た“水星 feat.オノマトペ大臣”という曲は大きなターニングポイントになったと思うんですけれども。あの曲ができたときに「これは!」っていう手応えはあった?

tofubeats
いや、最初は2時間ぐらいでできたんですよ。曲ができたのは3年くらい前で。KOJI1200の原曲をループしながら適当に録った曲なんで。あとからこの曲悪くないなってことでオケ差し替えて、評判いいしレコードで出してみようみたいな感じになっただけで。PVとかも、全部後からなんですよね。いい感じだからやろうみたいな。

――不思議ですよね、じゃあ。

tofubeats
でも、基本的に、音楽っていうのは世に出す以上、聴いてもらうっていうのが前提にあるわけじゃないですか。J-POPって「人に聴いてもらうために作られたもの」だと思うんです。僕はそういう風に思って音楽作ってるから、自分の曲は全部J-POPだって人に説明していて。

――“水星”の元ネタになってるのって、今田耕司がやってたKOJI1200の“ブロウ・ヤ・マインド”ですよね。ああいう曲って、言ってしまえば今はブックオフで安く叩き売られてるようなCDじゃないですか? そういうところに愛おしさを感じたりするようなところはある?

tofubeats
大好きですね。入手がしやすいから集めやすいっていうのもあるんですけど、そのときのJ-POPってすごいお金が使われてたもので、そうやってすごい大量の資本が投入されたものが250円とかで買えるわけですよ。いい音楽がいっぱいある。著作者にお金入らないのはどうかなって思うときもあるんですけど、それでも自分にとって安く買えるのはブックオフだった。1億円予算かかったものを200円で買えるわけですよ。って考えたらそれはいいに決まってるわけで。

――なるほどね。

tofubeats
あと、“ブロウ・ヤ・マインド”に関しては、テイ・トウワさんが元々すごく好きなのはもちろんあるのに加えて、そういう人たちが肩の力を抜いて作ってるものに異常に憧れるんです。ノベルティ・ソングというか、天才が遊びで作った曲みたいなものって得てしてすごくいいんですよ。そういうイメージがずっとある。ダウンタウンがやってたGEISHA GIRLSもそうだと思うし。“ブロウ・ヤ・マインド”はそういう曲の中でも最右翼だと思うんですよね。

――たとえば、渋谷系の時代も、埋もれて忘れられた音楽に掘り返して光を与えていたわけで。デビュー当時のKREVAも100円で買ったレコードからサンプリングしてるって言ってたし。そう考えると、時代は変わってもやってることは変わらないとも言えると思うけれど。

tofubeats
僕らの上の世代はそうですよね。でも、それが僕らはブックオフになってる。なんでかって言うと、それは普通に経済的な問題だし、入手のしやすさなんですよ。

――そっか、渋谷系の時代だと、それが宇田川町のレコードストアにあったわけだ。

tofubeats
そうですよね。あと、僕らはオザケンを今、新譜として聴けるんですよ。YouTubeでオザケンとKREVAの曲を並列に聴けるし、どちらがいつに出たかっていうことが関係ない。そういう音楽の聴き方になってる。ブックオフもそうで、1年以上前のものだったら全部安いじゃないですか? ってことは、あの棚にあるものは全部並列な情報なんですよね。値段も一緒だしパッケージもほぼ大差がない。そこを聴いていくと自然と雑食性を帯びてくるんです。

tofubeats

1990年、平成2年生まれ、神戸市在住のトラックメイカー / DJ。インターネットで100曲以上の膨大な量の楽曲を公開し続けるかたわら、YUKI、FPM、佐々木希、ももいろクローバーZ、Flo Rida など、様々なアーティストのリミックスも手がけており、その手腕はジャンルや世代、メジャーインディー問わず高い評価を得ている。他にwebCM などのクライアントワークも多数。
2011年からは清純派ヒップホップアイドルlyrical schoolに継続的に楽曲プロデュースで参加。作詞から作曲まで一貫して手がけるその手腕には定評があり、2013 年には9nine など他アイドルの楽曲プロデュースも行う。
また、現在までに自身の名義を含む6枚のアナログ盤をリリースするなど、インターネットだけに絞られない活動を行っており、盟友オノマトペ大臣と2011年末にリリースした「水星 EP」は初回プレスが発売直後に即完売。2度の追加プレスを重ねアナログ盤としては異例のヒットに。後の強い要望を受けてリリースされたデジタルバージョンはiTunes 総合チャートを1位を獲得。iTunes Best of2012にインディペンデントアーティストであるにもかかわらず選出され、翌2013 年のニューアーティストにも選ばれる。こうしてリリースされた2013 年最初のデジタルシングル「夢の中まで feat.ERA」もiTunes で総合チャート1位を獲得、4月24日リリースした待望の1stアルバムもiTunes でアルバム総合チャート1位を獲得。
世界のインターネットに散らばる最新のクラブミュージックからJ-POPまで、凝り固まらない平成生まれのバランス感覚を持った新進気鋭の若手トラックメイカーである。

http://www.tofubeats.com/


NEW ALBUM
『lost decade』

2013年4月24日発売
QYTB-00001
¥2,100(税込)
CD/\1,500(税込)Digital

■収録曲
1. intro
2. SO WHAT!? feat.仮谷せいら
3. ALL I WANNA DO
4. Les Aventuriers feat.PUNPEE
5. Fresh Salad feat.SKY-HI
6. m3nt1on2u feat.オノマトペ大臣
7. I don't care 8. time thieves
9. 夢の中まで feat.ERA
10. old boys
11. No.1 feat.G.RINA
12. touch A
13. OMOI-DORI
14. synthesizer
15. 水星 feat.オノマトペ大臣
16. LOST DECADE feat.南波志帆
17. SO WHAT!?
(EXTENDED FULL POWER DIGITAL MIX!!)
【iTunes配信限定ボーナストラック】
シンセサイザーになっちゃうよ feat.オノマトペ大臣

REMIX ALBUM
『university of remix』

2013年4月24日発売
SECL-1310
¥2,500(税込)

■収録曲
1. 電気グルーヴ/MUD EBIS (tofubeats DORO-EBIS mix)
2. Fantastic Plastic Machine/Hey Ladies (tofubeats 正体不明REMIX feat. オノマトペ大臣)
3. 東京女子流/Rock You!(tofubeats 1988 dub version)
4. 9nine/夏 wanna say love U(tofubeats remix)
5. SOUL'd OUT/kopernik (tofubeats BXVTS remix)
6. 佐々木希/パペピプ♪パピペプ♪パペピプポ♪(tofubeats“SHAKE”remix)
7. 近藤晃央/テテ (tofubeats remix)
8. ねごと/sharp♯ (tofubeats remix)
9. Matt Cab/Touch The Sky feat. VERBAL (m-flo)(tofubeats remix)
10. 小泉今日子/艷姿ナミダ娘 (tofubeats BXVTS remix)
11. G.RINA/Did It Again(Tofubeats X G.Rina)
12. さよならポニーテール/まったりしてしまったり(tofubeats remix)
13. 南波志帆/はじめまして、私。 (DJ NEWTOWN remix)
14. tengal6/プチャヘンザ!

DIGITAL REMIX ALBUM
『college of remix』

2013年4月24日発売
iTunes限定アルバム / 1,050円(税込)

■収録曲
1.tofubeats x Paulie Rhyme/Put It Up
2.SNEEEZE/Desperation(tofubeats zero, seven and eight mix)
3.SLik d × PUNPEE/Motion(tofubeats remix)
4.AJAPS /The Light feat. Wise(tofubeats remix)
5.HALFBY/さんぽ (-tofubeats Remix-)
6.99LETTERS/LA DANCE(tofubeats remix)
7.tofubeats/Miku loves you(OKNUW EDIT)
8.エスエフ/プロペラソング(tofubeats remix)
9.L-VOKAL/PURPLE MUSIC feat,SEQUICK
10.CHOOCHOOGATAGOTO/A.H tofubeats remix
11.GARNiDELiA/Hands(tofubeats remix)

インタヴューArchives