NEXUS アーティスト・インタヴュー:高橋優 「景気が良くなろうが悪くなろうが人の闇は消えない」 ――高橋優が2013年に歌う意味と理由

高橋優が3枚目となるアルバム『BREAK MY SILENCE』を完成させた。

「今日思ったことを今日歌う」というキャッチコピーでメジャーデビューを果たしてから3年。アーティストとして着実に成長を果たしてきた彼だが、そのスタンスは本質の部分では何も変わっていない。ぐうたらなところ、ユーモラスな面も含めて自分自身をオープンに歌の中でさらけ出す。そして、世の中の「声なき声」に寄り添い、沢山の人が「見ないことにしている」ものをえぐり出す。新作もそういうアルバムだ。

今回のインタヴューでは、アルバムについてだけではなく「彼が見る今の日本のムード」についての話もした。そういうところからも、彼の歌い手としてのスタンスが浮かび上がってくると思う。

取材・文=柴那典

もっとざわざわしたものをやりたい

――新作の『BREAK MY SILENCE』は、言いたいこと言ってるし、遠慮してないし、かき回そうとしてる、そういうアルバムになっていると思うんですが、今回はどういうところから作品を作り始めたんでしょうか?

高橋
4月に出したシングルの“(Where’s)THE SILENT MAJORITY?”っていう曲ができたのが今年1月くらいだったんですけど、そこからでしたね。アルバムの構想というか、「BREAK MY SILENCE」というテーマでやっていこうかなと思ったのは。

――去年にミニアルバム『僕らの平成ロックンロール②』を出したことは、何かのきっかけになりました?

高橋
あれを作ったのは音楽以前に、一人の人間としてどういう風に生きていくのか、何をどう歌っていくのかみたいなことを悩んだ後の時期だったんです。だから、単純にやりたいことやろうっていう想いでした。別に今までやりたいことをやれてなかったわけじゃないんですけど、ドラマの台本を読んでから曲を書くとか、CMの企画を頂いてからとか、いろんな経験をして。もう、シングルとかアルバムとか、そういうことも全部置いておいいて、純粋に曲を作ることとそれをライヴで表現するってことを楽しむってことをやりたいと。じゃあどういうことが自分にとって楽しい音楽なんだろう?っていうことを考えて作ったのが『僕らの平成ロックンロール②』だったんですよね。

――そこからの流れがあった。

高橋
はい。だから、後悔のないようにしたい、充実したものをやっていきたい、と。で、次に出てきた自分のテーマが、もっとざわざわしたものをやりたいということだった。聴いてくれた人も何か言いたくなるような、声をあげてもらえるようなものをやりたい。僕自身も遠慮なく、時に誤解の生まれるような表現方法であっても、心に傷を付けたくてやってる音楽ではないので。きっと誰かには届くんじゃないだろうかっていうことを信じて、声を大にしてやっていこうってことが今年に入ってから自分のテーマになってきたんです。

今自分に必要なものは、僕の一番素直な状態をさらけ出すこと

――では、自分のやるべきことがハッキリして、曲を作り始めていって、そこからは順調に進んできた感じですか?

高橋
順調ではなかったですね。迷いはないんですけど、やっぱりこだわり抜きたいので。どこまでそのこだわりを作品に反映させるかっていう。どこまで自分を出して、どこから先を聴く人に委ねようっていうところのバランスが大事になってくると思ったんですね。

――これまで2枚のフルアルバムを作ってた時は、そのバランスってどういう風に考えてました?

高橋
今までの2枚の時はとにかく必死だったんですよ。『リアルタイム・シンガーソングライター』に関しては、もう本当にとにかく衝動的に自分が今思ったこと、自分が歌いたいことを表現しなきゃいけなくて必死だったんですよね。それがどう届くかとか、聴いてもらう人はどう思うんだろうかっていうところまで考えてなかったと思うんです。で、『この声』というアルバムをリリースした時は、全国ツアーを回ったりした後だったんで、ちょっと聴く人を意識するようにはなったと思うんですけど。それでもやっぱりまだ自分の殻を破れてなかったというか。でも2013年に入ってから思ってるのは、やろうと思えばもっといろんなことができる、ということで。曲を書こうと思えば30曲40曲書けるんですよ。それでやみくもに作るっていうんだったら、今までと何も変わらない。その中から自分がいかにして聴いている人達の期待を裏切るのか、それに応えるのか、もう少し客観的に見れるようになったんだと思うんですよね。そういう余裕も少し出てきたというか。

――面白いのは、聴く人に自分の曲がどう見えるのかをより意識したことで、より角が取れたものになるっていう話だと分かりやすいけど、高橋優さんの場合は逆にゴツゴツしてきている、角の立つものになっているということだと思うんですよ。それはどういう結果だったんだと思います?

高橋
音楽を聴く人って高橋優だけ聴いてる訳じゃないじゃないですか。テレビをつければCMの音楽が流れてるし、流行の音楽があって。誰かのことを批判する訳じゃないけど、耳障りのいい音楽だったら、世の中に溢れてるんですよ。そんなものを僕が改めて作っても、誰も喜ばないと思ったんですよね。自分がそうしたいと思って作るんだったらいいんですけど、今自分に必要なものは僕の本当に正直なものを出す、一番素直な状態をさらけ出すことだと思ったんです。それが角の立たないものになるのか、角の立つものになるのかっていうのは、形にしてみないとわからないってことです。

――なるほどね。

高橋
素直であろうというのが第一で、サウンドと歌詞を書くやり方はどっかで聴く人に委ねようって思ってやっていった結果、それがゴツゴツしたものになったのか、柔らかいものになったのかっていうのは、僕からすると大きな問題ではなくなってるんですよね。でも、どっかで自分の色を濃くしたいと思ってやってるので、今回のアルバムはゴツゴツしたものが自分らしいものだったっていう、結果的にそういうことだと思います。

言葉にならないグッとくるものがあるかどうか

――“(Where’s)THE SILENT MAJORITY?”っていう曲が一つのターニングポイントになったわけですよね。この曲でBRAHMANの4人と一緒にやったことで自分が得たものってどういうものだと思いますか?


高橋
すごく大きかったですね。思ったのは、歌詞とか、メロディーラインとか、バンドサウンドとか、その一つを取り上げてこれがいいって言われることはありますけど、どれか一個だけでいいなんてあんま大したことないなって思ったんですよね。やっぱ全部を総括した時に、なんか言葉にならないグッとくるものがあるかどうかってことだと思ったんです。BRAHMANは、レコーディングの時も、お酒飲みながら音楽について語っている時も、理論みたいな話はあんまりないんですよ。テイクを録ってて、なんか今のプレイがどうだからここのプレイをこう直そうだとかじゃなくて、「今のはグッと来ない」とか、「今のは『おお!』ってならない、だからもう一回やろう」っていうような話になるんですよ。でもそれってすごく大事なことだと思うんですよね。BRAHMANのライヴに行くと、皆が「おお!」って言ってなんか言葉にならない感情をステージにぶつけるというか、会場が狂喜乱舞するじゃないですか。あの本能的に訴えかけるものっていうのは、音楽のすごい大切なものだと思ってて。それを見てて、「高橋優は歌詞が大事だ」とか言われて、歌詞にとらわれすぎて、奥にある大事なものに手を伸ばしてなかった気がしたんですよね。それを気づかせてもらいました、すごく。

――奥にある大事なものっていうのは?

高橋
音楽を純粋に楽しむってことだと思います。メロディーがあって、そこにちょうどよくグルーヴなのか、表情なのか、そこまでの人生のストーリーなのか、とにかく何かが乗っかった時に、やっぱり感動が生まれると思ったんですね。「おお!」って本能に訴えかけるもの、グッと来るか来ないか、みたいなことを“(Where’s)THE SILENT MAJORITY?”のレコーディングですごく教えてもらったので。それ以降のレコーディングは、僕の中でのジャッジのポイントはそうなったんですよね。テイクごとに自分の中で納得できるかどうか、心が沸き立つか沸き立たないか、という。でも、それだけ完成させてしまわないで、これより先は聴く人に委ねようっていうところもちゃんと残すというか。そういうところも全部BRAHMANから改めて見せてもらったというか、教えてもらった気がしますね。

高橋優

1983年12月26日生まれ。秋田県横手市出身。札幌の大学への進学と同時に路上での弾き語りを始める。2008年、活動の拠点を東京に。2010年4月、デビュー前に“福笑い”が東京メトロCMソングとして大抜擢される。7月シングル『素晴らしき日常』でメジャーデビュー。2011年2月、ニューヨークタイムズ紙に意見広告を掲載。これは日本人アーティストとしてオノ・ヨーコさん以来。2011上半期「福笑い」がラジオチャート邦楽1位になる。2011年4月20日、ファーストアルバム『リアルタイム・シンガーソングライター』はオリコンウィークリー初登場8位を記録。2012年1月18日、シングル『卒業』は初登場9位、 2012年3月14日、セカンドアルバム『この声』も初登場9位を記録。2012年の全国ホールツアーでは2万人動員している。2012年12月26日『僕らの平成ロックンロール②』と、自身初のLIVE DVDをリリース。2013年には2か月連続シングルをリリースし、5月31日より全国ライヴハウス&ホールツアーを敢行中。

www.takahashiyu.com/


3rd ALBUM
『BREAK MY SILENCE』

2013年7月10 日発売
初回限定盤(CD+CD):WPCL-11519 / 3,570円(税込)

通常盤(CD):WPCL-11521 / 3,150円(税込)

【収録曲】
01. ジェネレーションY
02. (Where’s)THE SILENT MAJORITY?
03. 陽はまた昇る
04. 人見知りベイベー
05. 空気
06. CANDY
07. スペアキー
08. 蝉
09. 泣ぐ子はいねが
10. 同じ空の下
11. 涙の温度

[ 初回限定盤特典 ]
「ボツ曲大全集①」(CD)
1. 傍観悲観者
2. 足フェチ
3. ブランク
4. テレビを見ながら

[ LIVE INFORMATION ]
高橋優2013全国ホールツアー
「BREAK OUR SILENCE」


7月27日(土) 福岡 福岡国際会議場メインホール
8月11日(日) 秋田 秋田市文化会館
8月17日(土) 東京 渋谷公会堂
8月18日(日) 東京 渋谷公会堂
8月24日(土) 大阪 オリックス劇場
8月25日(日) 大阪 オリックス劇場
8月30日(金) 北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
9月21日(土) 宮城 仙台市民会館
9月23日(月・祝) 福島 いわきアリオス中劇場
9月27日(金) 広島 広島アステールプラザ大ホール
9月29日(日) 愛知 愛知県芸術劇場大ホール

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