NEXUS アーティスト・インタヴュー:SKY-HI 「5年前は俺以外誰も想像していなかった」全てを自分の力で認めさせた男・SKY-HIが“人生をひっくり返した”理由

SKY-HIが1stアルバム『TRICKSTER』をリリースした。

昨年にシングル『愛ブルーム/RULE』でメジャーデビューを果たした彼。ヒップホップシーンにとどまらず、フェスへの出演や様々な客演を通じて、本格派のスキルと実力と華を兼ね備えるラッパーとして、シーンに名を知らしめてきた。一方で、ダンス&ヴォーカル・グループ「AAA」のメンバー日高光啓としては、4年連続の紅白歌合戦出演も果たしている。

メジャーシーンのど真ん中で活動しながらアンダーグラウンドなクラブの現場でフリースタイルの腕を磨いてきた彼は、ここに至るまで、自らの手でSKY-HIとして形にしてきた。偏見や先入観の目で見られたことも沢山あったはずだし、思うようにことが運ばなかった経験もあったようだが、それを乗り越えてきた経験もアルバムの充実には大きく寄与している。

「生き様がアートになっている」。そういう意味でも、とても格好いいヒップホップ・アルバムだと思う。本人に話を訊いた。

取材・文=柴那典


人生がいい方向に転がったって言ってもらわないと、やってる意味がない

――デビューアルバム、ほんとにすごい作品だと思います。ヒップホップシーンだけじゃなくて、幅広い人に届く格好よさと面白さを持ったアルバムだと思っていて。

SKY-HI
ありがとうございます。嬉しいです。

――活動のスタートから長い時間を経てこの作品にたどり着いたんですよね。2008年頃から企画書を書いていたという話を聞きましたけど。

SKY-HI
そうですね、たぶん2008年末だと思います。

――アルバムが完成しての手応えや実感はいかがですか?

SKY-HI
まず、毎日自分のアルバムを聴いているんですけど、そのくらい音楽としても楽しいな、というのが一つですね。5年前くらいからずっと持っていたものが、色を変え形を変え、育っていって。思想とか感情、自分自身そのものが強くなっていって、それがしっかりと言葉になって、音像になって、それがいま物質としてある。だから、その自分にもう一度パワーをもらっているというか。一つの正解、最高を生み出せたなという実感はあります。コンセプトの段階で、人の人生にしっかり携われるものを作りたいと思っていたんですが、それを成し得るものがちゃんと出来ている自信と達成感はすでにあるという感じですね。

――その「人の人生にしっかり携われるもの」というコンセプトはどの時点から描きはじめたものだったのでしょうか?

SKY-HI
ファーストアルバムを作ると決まったときというよりは、制作を進めながらですね。アルバムの制作途中の段階で、この2014年にわざわざCDを作る意味とか、音楽をやっている意味とかを考えて。というのは、単純に趣味として自分が格好いいと思うものをアートとして世の中に出すのであれば、フリーでやってしまえばいいんですよね。

――そうですよね。特に今はそういう時代になってきている。

SKY-HI
それは正しいことが起こっていると思っているんですけど、そんな中でもCDを出したり興行としてライヴをやるというのは、つまりは人様の時間をお金をもらってそこに対価を提示するということで。それは俺の思想とか感情とかを物質化したものに時間やお金を頂いているんだから、そこで俺のエゴイズムとかトレンドがどうのとかは、リスナーには一切関係のないと思うんです。単純にどういう生き方をしていても、どんな人生を送っていても、いま何歳でも、男でも女でも、SKY-HIに辿り着いてよかった、SKY-HIをあのタイミングで知ったから、『TRICKSTAR』を聴いたから人生がいい方向に転がったって言ってもらわないとやっている意味がないな、と。

――聴いた人にとってプラスの影響を与えるものを作りたかった。

SKY-HI
たとえば学校が憂鬱だとか、会社が嫌だとか思いながら毎日を過ごしていたりするような人って沢山いますよね。ネガティブなものはポジティブとイコールだし、絶望は大きくなればなるほどそこに希望がちりばめられているんだけど、そこから目をそらして、ネガティブや絶望と共存するのを選んでいる人が沢山いると思うんです。それをひっくり返すきっかけを作りたいという気持ちなんですよ。それは何故かと言うと、まず自分自身がひっくり返せたから。もう音楽辞めてしまおうかなみたいなところまで行ったけど、でもやり続けることによって、その先の希望まで自分を導くことができた。絶望を欺くことができた、だから俺はトリックスターだと思うんですよ。俺の言ってることって、「戦おうぜ」とか「困難を打破するんだ」とか、そういう説教くさいことと一緒かもしれないんですけど、それをそのまま暑苦しく語ったところで、よっぽど俺のことを好きな人じゃないと100%聴いてくれないから。楽しんでいるうちにそういうメッセージが心に残るものを作るというのが、音楽の本来の正しいやり方だし、俺ができることだなと思った。しかも物質になったら反永久的にそこに存在するから。そういうことをしよう、と思ったんです。

――いや、もう、アルバムを聴いた感触、ほんとにそのままその通りな感じです。

SKY-HI
本当ですか? やったー!(笑)

――やっぱり日高さんはスター性があると思うんです。でも、SKY-HIとしてのそれは作られたスターの感じじゃなくて、これまで有言実行でやってきたことが音楽の内実にちゃんと作用している。曲とか声とか言葉とか、一つ一つにちゃんと中身の確かさが備わっている感じがあって。

SKY-HI
嬉しいです。最高にありがたい感想です。

――ここに至るまでのターニングポイント、風向きが変わったきっかけはありました?

SKY-HI
きっかけは一つじゃないと思います。振り返るといろんなターニングポイントがあって。現段階で俺がそんな大した結果を出せているかというのは置いておいたとして、振り返った中で自分で自分のことを褒めてあげたいことがあるとすると、それはポイントポイントで貪欲であれたこと。一つ一つのきっかけにちゃんと意味を持たせようと意地でもやってきたから、状況は常に好転していったし、自分自身の人生も楽しくなった。自分の芯の部分もそういうことを経て強くなってきているというのは一つ褒めてあげたいところです。作品にもそれは顕著に影響していると思うし。例えば、毎日を憂鬱だなと思いたくなるようなところからヒップホップと出会ったこともあるし。ただ趣味として格好いいと思うものを突き詰めるだけなのか、人に届けたいと思ってやっているのか、それに見合ったものを作る人間でいられるのかとか考えた瞬間もあるし。メジャーデビューを目指したところとか、結果に貪欲になったタイミングとか、実際にメジャーデビューまでこぎ着けたときとか、企画が通ったときとか、本当にいろいろあると思います。あとは共鳴してくれるアーティストが増えたこともそうだし、それらのポイントポイントが繋がってきて、それが結果になってメジャーデビューして。そうしたら人の前に立つ機会がたくさん増えて、そこでいろんなところから自分のところにたどり着いてくれているリスナーの存在があって。フェスで見たとか、昔からヒップホップを聴いてたからとか、AAAを昔から応援してたからとか、それはもう関係なくて、いまSKY-HIの目の前にいてくれていること対する愛と感謝とリスペクトしかなくて。今こうやって振り返るのであれば、その全てのターニングポイントに感謝してる感じです。

SKY-HI/日高光啓

1986年12月12日生まれ。2005年9月、AAAのメンバーとしてシングル「BLOOD on FIRE」でデビュー。同年末、日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞。その後、AAAと並行しながら、SKY-HI名義での楽曲制作など精力的に活動。2013年2月、ソロデビュー前ながらも初のワンマンツアーを開催し、イトーヨーカドーCMでの高速ラップでも話題となる。同8月、シングル「愛ブルーム/RULE」でSKY-HIとしてメジャーデビュー。2014年3月、1stアルバム『TRICKSTER』をリリース。

オフィシャルサイト

1stアルバム
『TRICKSTER』

2014年3月12日(水)発売

CD+DVD:AVCD-38908/B / 3,675円(税込)

CD:AVCD-38909 / 3,150円(税込)

【収録曲】
・CD
01. 逆転ファンファーレ
02. トリックスター
03. Blanket
04. TOKYO SPOTLIGHT
05. キミサキ
06. 愛ブルーム
07. ILLICIT LOVE
08. Diary
09. サファリ・システム
10. Tyrant Island
11. RULE
12. またね

・ DVD
01. トリックスター (Music Clip)
02. 愛ブルーム (Music Clip)
03. RULE (Music Clip)
04. トリックスター (Music Clip Making)

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