NEXUS アーティスト・インタヴュー:佐藤タイジ

12月20日、太陽光発電によるロックフェス「THE SOLAR BUDOKAN」が開催される。奥田民生、仲井戸“CHABO”麗市、Char、加藤登紀子、吉川晃司、斉藤和義、Salyu、LOVE PSYCHEDELICOなど、世代を超え豪華なメンツが武道館に顔を揃えるこのプロジェクトを主催しているのが、佐藤タイジ(THEATRE BROOK)だ。

「太陽の力だけで武道館ライヴを成功させる」ということを通じて、新たな自然エネルギーの可能性を示すこのイベント。佐藤タイジの思いに賛同し、これだけの共演が実現する。

インタヴューが行われたのは開催10日前の12月10日、都内リハーサルスタジオでのこと。「THE SOLAR BUDOKAN」開催直前の思いと手応えを、語ってもらった。

取材・文=柴那典

ソーラー蓄電池を使うと圧倒的に音がいいんだよ

――準備も大詰めだと思いますが、今の状況はどんな感じでしょう?

佐藤
まず、電力のほうは見えてきたね。協力してくれる会社がかなり集まって、ステージのギターアンプとかベースアンプ、シンセとかPA、モニターやLEDのスクリーンは全部太陽光で充電した蓄電池でやれるようになった。それから、会場の電気は「グリーン電力証書」の電力を2000kW購入して使うことになった。その電気を作ってくれるのが長野の飯田市にある「南信州おひさま発電所」というところで、そこは市民ファンドでできている独立の発電所なんです。こないだそこにお邪魔して、いろいろシステムを見てきたんですけど、すごかったっすよ。あのやり方を拡大すれば、きっと再生可能エネルギーでやっていくことも可能だと思う。それから、照明に関してはバイオディーゼルを使ってます。バイオディーゼルというのも植物から生まれた自然界のエネルギーってことで、これはもう今回は100% SOLARって言っても全然恥ずかしいところではないシステムになりましたね。

――実際に太陽光の電気で音を鳴らしたりもしてみたんでしょうか?

佐藤
うん。これは言っておきたいんだけど、先日、THEATRE BROOK全員で、ソーラーで貯めた蓄電池を使ってPAも含めて音を鳴らしてみたんですよ。いつも使っているマーシャルアンプを使って、壁のコンセントからくる電気と蓄電池とで、音を比べたわけ。したら、圧倒的に音がいいんだよ! 要するに、普段使ってる電気って、遠くの発電所から運ばれてくるわけだから、絶対ノイズが乗るんだよね。それは当然のことで。でも、電池から直接取ればノイズが全くない。綺麗な電源で使えばアンプもスピーカーも効率が断然いい。びっくりしたよ、音の違いに。みんなで演奏した瞬間に、スカーンと気付いたね。

――確かに、電源を変えると音が格段によくなるということは、オーディオマニアの間ではよく言われていることですしね。

佐藤
そう。音がいいってわかって、未来の道がピカーンと照らされた感じがした。こっちに行けばいいんだと。だって、まず音楽業界は「音がいい」っていうだけでこっちを選ぶ理由になるわけじゃん?

――そうですね。そのことに、やってみて気付いたという。

佐藤
副産物みたいなことなんだけど、ミュージシャンにしてみればそれで十分だし、プッシュできる理由がそこにあるんだよね。低音はむにっと豊かにデカくなって、高音はスカーンと伸びる。だから、音のレンジが広くなって、レベルがちょっと上がったような感じになる。俺のマーシャルだとあからさまに違いがあったから、たぶん、民生ちゃんのマーシャルも、Charのマッチレスも違うと思う、きっと。

――武道館で鳴らしても、お客さんに音の良さが伝わるんでしょうか。

佐藤
わかると思うよ、あからさまな違いだから。だから、ギタリスト、ベーシスト、キーボーディスト、みんなに薦められるね。「電源、電池に替えたら音がよくなるよ」って。まあ、電池って重いし、大変なことはあるんだけどね。でもいい音が出せるのであれば、十分、それを選ぶ理由になる。それで再生可能エネルギーの方に行ける流れが音楽業界で作れるんであれば、何の問題もないと思う。

これ、別に反対運動じゃないんだよね。賛成運動なんだよ

――佐藤タイジさんがこの「THE SOLAR BUDOKAN」の構想を思いついたときというのは、実現への道のりはどれくらい見えていたんでしょう?

佐藤
全く見えてないですよ。なーんにも見えてない。そもそもは、俺が武道館でやったことがないので一度くらいやれないと死ねないっていうのが、最初の理由で。でも3.11があって、すぐ復興支援のアコースティックイベントの「LIVE FOR NIPPON」を始めたのがよかったんですよね。それでミュージシャンの友達もみんな集まったし、仲間がいるっていう確認ができた。だから、自分の夢である武道館を別に取り下げなくていいと思ったし。

――そのときには太陽光発電で武道館ライヴをやろうというアイディアはありました?

佐藤
思いついたのはすぐだったと思うよ、武道館はやりたいって思ったけど、3.11で状況は全然変わった。どうしようかなって思ったときに、「ああ、ソーラーでやればいいんだ!」って、2〜3秒で思いついた。これ、別に反対運動じゃないんだよね。賛成運動なんだよ。みんな寄ってきて、みんなで騒いだらええやんっていうイベント。無責任に、みんなバカになって「賛成〜!」って言えばいいんだもん。そうやって続ければいいことだし、しかも音がいいっていう副産物もあるわけだから、音楽業界はそっちに行っちゃえばいいんだよね。長野の飯田市のシステムを導入すれば、ソーラー発電の会社に出資するというモチベーションを得られた上に音もいいわけだから。

――最初の思いつきが確信にどんどん変わっていった感じだったんですね。

佐藤
そうですね。うん。俺、六ヶ所のさ、再処理施設の反対運動みたいのに駆り出されて演奏とかしてるの。地元の人とかはさ、ずっと反対しなきゃいけないわけじゃん? だけど、反対し続けることって、人間の心にとってはとてもしんどいことなんだよね。猜疑心も生まれてしまうし。だから、同じことを「賛成〜!」っていうバカバカしい方でやりたい。このシステムが完成して、もっと広まっていけば六ヶ所も原発もまわさなくてよくなるわけで。その方がいいんじゃないですか?っていう。

今はすごいアイディアがバンバン出てくる時代

――これだけの錚々たるアーティストが集まったわけですけど、これは佐藤タイジさんが一人一人直接声をかけていったんでしょうか?

佐藤
そうですね。やるからなっていう話をずっと言い続けながら「LIVE FOR NIPPON」とかをやっていたので、「俺、予定あけとくから」みたいに言ってくれた人もいたし。Charさんにはお願いしにいきましたね。「20日なんすけど、ソーラーでやるんで」って言ったら、「あー、わかったよ。じゃあ通りがかってやるよ」って、格好よく快諾してくれた(笑)。もちろん人によって考えてることはそれぞれだけど、(斉藤)和義くんとかとは、見てる方向性も揃ってると思う。

――「THE SOLAR BUDOKAN」のような前例のないことを立ち上げて実際に形にしていくなかで、見えてきたことはありますか? エネルギー問題以外のところでも、いろいろな時代の変化やムードを感じられていると思うんですが。

佐藤
あのね、今はすごいアイディアがバンバン出てくる時代なんですよ。だから、俺が考えてるのは、今やんなきゃいけないこと。まず「インディーズ電力」というのをやっていて、これは「地域ごとに適応した、地域ごとの責任でつくられる、新しいエネルギー源の確保」というのを呼びかけてる。あとは食品の線量表示もそうだし、俺には一杯アイディアがあるんで、とにかくそれを出したいと思ってんのよ。

――なるほど。

佐藤
「セルフディフェンスフォース」ではなくて「ワールドディフェンスフォース」とかね。今の世の中を見てると、足りないものが見えるじゃん? グラミージャパンとかさ、沖縄の自治政府樹立とかさ。やっぱり「3.11があったので我々はここまで来れました」っていう未来じゃないとおかしいよね。「3.11があったけど前と同じとこに来れました」だとダメじゃない?

――「復興」というのは元に戻すという発想ですからね。

佐藤
うん、それじゃあ違うんだよ。「あれがあったんだからここに来れた」っていう未来じゃないと。もしそういう未来があるとしたら、そこに世界の基準があるべきだと思うし。

佐藤タイジ
(THEATRE BROOK/ TAIJI at THE BONNET /The Sunpaulo/インディーズ電力)

圧倒的なカリスマ性と独自の感性を持ったギターサウンドでTHEATREBROOKで95年メジャーデビュー。またJAM系、ダンスミュージックのThe SunPauloとしても活動。
自らをROCK STARと名乗り数多くのFesやLIVEを湧かしてきた。
3.11震災直後には【LIVE FOR NIPPON】という復興支援イベントを主催しほぼ毎月開催している。またTAIJI at THE BONNET、インディーズ電力という2つのバンドを始動。
太陽の力だけでロックは存在できるという実証のため、THE SOLAR BUDOKANを企画。
日本の将来に必要な『希望』を絶滅危惧種ロックスターが音楽を通じて戦っている。

http://www.taijinho.com/


THEATRE BROOK
『最近の革命(初回生産限定盤)』

2012年12月12日発売
LNCM-1016


CD+DVD 3,150円(税込)
Mastard Records

[CD収録曲]
1.キミを見てる
2.愛と死のミュゼット with 加藤登紀子
3.最近の愛のブルース
4.理想的サムライ
5.やめられないのさ
6.愛の源
7.(最近の)ありったけの愛
8.昨日よりちょっと
Live ver. (2012.09.07@下北沢Garden)
[DVD収録内容]
「(最近の)ありったけの愛」MV&メンバーインタビュー&メイキング映像 特典映像収録

『佐藤タイジ presents A 100% SOLARS』
2012年12月19日(水) タワーレコード先行販売
2012年12月26日(水)全国販売
TRJC-1011


1,500円(税込)

[CD収録曲]
1. together tonight / 佐藤タイジ×Salyu (作詞: 佐藤泰司、Salyu 作曲: 佐藤泰司)
2. 朝を迎えて 911to311 / 佐藤タイジ fea’Char  (作詞作曲: 佐藤泰司 編曲: Char)
3. MY ATOM LOVER / インディーズ電力 (作詞作曲: うつみようこ)
4. レッツゴ―電力 / インディーズ電力 (作詞作曲: 佐藤泰司)
5. オリジナル電力 / インディーズ電力 (作詞作曲: 髙野哲)
※朝を迎えて 911to311 (M-2)は、THEATRE BROOKセルフカバー、他4曲(M-1,M-3,M-4,M-5)は新曲

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