NEXUS アーティスト・インタヴュー:サカナクション「「新しい時代の取っ掛かりになる立場でいたい」――山口一郎が語るバンドの現在と未来」

6枚目となるアルバム『sakanaction』を完成させたサカナクション。ここに至るまでに繰り広げてきたバンドの数々の挑戦が結実した、まさに渾身の一枚だ。

『僕と花』『夜の踊り子』『ミュージック』とヒットシングルを連発し、様々なフェスでヘッドライナーをつとめ、名実ともに今のロックシーンを代表するバンドへと上り詰めた彼ら。アルバムは、そんな今の勢いを象徴すると同時に、彼ら5人の深い音楽愛を突き詰めたような作品になっている。

キーワードは「表裏一体」。

本作で目指したものについて、そしてバンドの現在と未来について、山口一郎(Vo/G)とじっくり語り合った。

取材・文=柴那典

一つのアルバムを通して表裏一体であることを感じさせたい

――このアルバムは、“表裏一体”というテーマを掲げて作っていったということですよね。それを考えるようになったのは、いつ頃のことでした?

山口
去年の9月くらいだったかな……。いや、もっと前だ。今回のタイトルを『sakanaction』にしようって決めた時点で、“表裏一体”っていうテーマはありましたね。これだけタイアップやるんだから、それをきっかけに聴いてもらった人にもカルチャーショックを与えたいっていう気持ちがあった。

――なるほど。『sakanaction』っていうタイトルにするアイディアは制作の初期からあったんですね。

山口
そうですね。もともと3年前くらいから、普段はサカナクションっていうカタカナの表記で活動して、sakanactionっていう英語の表記で活動するときはインストでやりたいっていう話をしてたんですよ。で、それを象徴する「サカナクション」と「sakanaction」という“表”と“裏”からなる2枚のアルバムを同時に出したいという話をしていて。でも、スケジュールも忙しくなってきてたし、現実的に2枚作るのは難しくて。だから「sakanaction」という英語表記をアルバムタイトルにして、“表裏一体”というテーマをそこで表現しようとした。外に向けて学習して発信している部分と自分たちが本当に好きな部分、いわゆる戦略と本能を一つのアルバムにしてしまいたいっていう。そこにシフトしていったのはありますね。

――初期の構想では、いわゆるテレビのタイアップが象徴するような歌モノのアルバムと、自分たちの好きなクラブ・ミュージックを突き詰めたインストのアルバムっていう、2枚組になる可能性もあった?

山口
ありましたね。時間があれば。

――でも、このアルバムは全然そういうものではないですよね。

山口
うん。混ざってる。

――僕は時間がなかったからこうなったって話じゃないと思ってるんですよ。混ざってるほうが必然だし、断然こっちのほうが正しいと思う。

山口
嬉しいな。そう言ってもらえると。

――何故かと言うと、これがもし表と裏の2枚組だったら、「私はこっちだけ聴きます」「私はこっちのほうが好きです」という分断が生じるかもしれない。でも、このアルバムはどこにも分かれ目がないんですよ。それが“表裏一体”っていうことの説得力になっている。

山口
そこは工夫しましたね。一つの作品にまとめるってことになると、やっぱり繋げなきゃいけないから。一つのアルバムを通して表裏一体であることを感じさせたいからね。

“INORI” でアルバムが始まることで一つのルールができる

――今回、曲順には山口くんは関与してないの?

山口
ほぼやってないです。メンバーに任せたんで。

――今回、曲順がすごくいいんですよ。“intro”と“INORI”から始まるのも“朝の歌”で終わるのも、すごく必然的だと思う。

山口
あ、そこは俺が言いましたね。最初と最後は決めてた。

――“INORI”から始まるっていうことに、このアルバムの大きな意味がありますよね。

山口
うん。だって、ビックリするでしょ?(笑)。頭に合唱で始まって、それを聴いて「エモーショナルな盛り上がりを見せるのかな」って今までのファンは思うし、タイアップの曲しか聴いてない子からすると「なんかすごいのが始まった」って思うはずで。そこから一気にテクノに裏切る。そこで攻めてる感じもするし、その裏切り自体がサカナクションのスタイルなんだっていう提示にもなる。だから、この曲でアルバムが始まることで一つのルールができると思ったんですよ。そうすれば、その次に来る“ミュージック”の聴こえ方が変わる。“ミュージック”はこういう曲なんだっていうことも示せると思ったんですよね。

――確かに“ミュージック”ってシングルと聴こえ方が全然違いますよね。

山口
でしょ? ミックスも変えてるから。

――そうなんだ。ビートが強くなってる感じがします。

山口
シングルのときはテレビの主題歌だったけど、アルバムのバージョンにはシングルのミックスでやれなかったことを盛り込んでもらったんだよね。「ミックスを変えたい」ってエンジニアに言ったらその通りやってくれました。

――アルバムのオープニングの“intro”はバイノーラル録音で音がいろんなところから聴こえるSEの曲ですけれども。これは最後に完成したんですよね?

山口
そう。もう、ギリギリにできた。マスタリングの日の朝だったからね(笑)。しかもバイノーラルの音はそのときに録ったものですから。

――バイノーラル録音を自分たちのアルバムに取り入れるというのは、どういう意味を見出してやったこと?

山口
クラブ・ミュージックとかミニマル・テクノの聴き方って、歌がないから、リズムや音を追いかけなきゃいけないんですね。それで5分から6分を聴くというのは、普段そういう音楽を聴かない子たちからすると「いつになったら歌が入るんだろう?」っていう待ち時間に思われちゃうかもしれないんですよね。でも、バイノーラルって音の鳴ってる空間を聴かせるものだから、鳴ったときにビックリするし、声じゃなくて音を探すんですよ。その耳の状態のままインストに入っていくと、より繊細な音を聴こうとすると思うし。

――なるほど。導入としての効果がある。

山口
それに、試聴機で聴いたときのビックリする感じも重要だなと思って。

サカナクション

山口一郎(Vo/G)、岩寺基晴(G)、草刈愛美(B)、岡崎英美(Key)、江島啓一(Dr)からなる5人組。

2005年、地元・札幌で活動開始。
2010年に日本武道館単独公演「SAKANAQUARIUM21.1(B)」を実施。
翌年のツアー(SAKANAQUARIUM2011
"DocumentaLy"」)ではキャリア史上最大キャパシティとなる幕張メッセ公演を行い、2万人を動員するに至った。2012年には、ドラマ主題歌やCMタイアップ曲をシングルとしてリリース。出演した4本の夏フェスでは 3本でヘッドライナーを務める。

高度な文学性を感じさせる歌詞、フォーキーなメロディ、ロックバンドフォーマットからクラブミュージックアプローチまでこなす変容性。様々なスタイルを持つバンドとして音楽的な評価も受けながら、「ミュージシャンの在り方」そのものを先進的にとらえて表現し続けるその姿勢は、新世代のイノベーターとして急速に支持を獲得している。

http://sakanaction.jp/


NEW ALBUM『sakanaction』
2013年3月13日発売

初回生産限定盤(CD+Blu-ray):VIZL-519 / 3,990円(税込)
初回生産限定盤(CD+DVD):VIZL-520 / 3,780円(税込)


通常盤(CD):VICL-63999 / 3,000円(税込)


[ CD収録曲 ]
01. intro
02. INORI
03. ミュージック
04. 夜の踊り子
05. なんてったって春
06. アルデバラン
07. M
08. Aoi
09. ボイル
10. 映画
11. 僕と花
12. mellow
13. ストラクチャー
14. 朝の歌
15. 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』(Ks_Remix)

[ Blu-ray、DVD収録内容 ]
sakanacalendar 2012 (LIVE)
sakanacalendar 2012 (ドキュメント)

[ Blu-ray収録内容 ]
僕と花(MUSIC VIDEO)
夜の踊り子(MUSIC VIDEO)
ミュージック(MUSIC VIDEO)


< TOUR INFORMATION >
SAKANAQUARIUM2013 sakanaction
3月27日(水) 神奈川・川崎CLUB CITTA'
3月30日(土) 東京エレクトロンホール宮城
4月06日(土) ZEPP SAPPORO
4月07日(日) ZEPP SAPPORO
4月10日(水) 京都KBSホール
4月11日(木) 京都KBSホール
4月13日(土) 新潟LOTS
4月14日(日) 新潟LOTS
4月20日(土) 高知BAY5 SQUARE
4月21日(日) 広島BLUE LIVE
4月24日(水) ZEPP NAGOYA
4月25日(木) ZEPP NAGOYA
4月27日(土) ZEPP FUKUOKA
4月28日(日) ZEPP FUKUOKA
5月18日(土) 幕張メッセ9-11
5月19日(日) 幕張メッセ9-11
5月22日(水) 大阪城ホール
6月01日(土) 沖縄・沖縄音市場

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