NEXUS アーティスト・インタヴュー:宍戸留美 「元祖ライヴアイドル」が語る20年前と今

宍戸留美が、アルバム『ルミネッセンス』をリリースする。

89年、高校生のときにオーディションでグランプリをとって歌手デビュー、人気絶頂だった92年に18歳で「フリーランスのアイドル」活動を開始。声優から弾き語りまでさまざま方面で活動し、現在40歳。「30代最後の作品」として作られたのが、このアルバムだ。フレンチポップやネオアコにも通じるような、スウィートで落ち着いたポップソング集の新作は、こちらも7年ぶりのソロアルバムをリリースする上田健司の全面プロデュースによるもの。誕生日の11月6日には合同リリースパーティも開催される。

先日には20年ぶりのテレビ出演も果たし、当サイトに掲載されたコラム(http://www.nexus-web.net/column/indies/2012/07/27/41/)も注目を集めた彼女。今回の取材は「アイドル」「下北沢」「インターネット」というテーマで、話を訊いた。

取材・文=柴那典

テレビ出演は「計算通り」


――アルバム、とてもクオリティの高い一枚だと思います。音と声がすごくいいバランスで。まず、完成した時の手ごたえはどんな感じでした?

宍戸
一年かけてレコーディングしてるので、本当に記録という感じですね。その間にも弾き語りをやったりしていて、歌が少しずつ上手くなってると思うので。バラバラの時期に録ってたので、「これはアルバムにちゃんとなるかな」ってちょっと不安だったんですけど、結果的にはバランスとれたなって思います。

――アルバムの全体像のイメージはどういうところからスタートしたんですか?

宍戸
昔のレコードを意識したものを作ろうと思ったんです。今のCDの音って、私には耳が痛くて聴けないんですよ。特に、ヘッドフォンをして聴くと、シャリシャリしすぎてて。だから、その場所の空気も録れてるようなものが作りたいなと思って。

――しっとりしたアナログレコードの質感みたいなものは意識としてあったんですね。

宍戸
そうですね。もしかしたら若い人には逆に聴きづらいのかもしれないんですけど。

――フレンチポップやネオアコのような、落ち着いてしっとりとしたポップソングを追求するようになったのは?

宍戸
小さい時から聴いていたのはそういうものが多かったので、自分で歌って安心するんです。もしかしたら、自分のアイドル時代のファンの人は求めてない場所かもしれないんですけれど、アニメの歌も歌ってるので、そっちはそっちで、っていう。

――アイドル時代の話でいえば、先日は20年ぶりに『1番ソングSHOW』というテレビ番組に出演されましたよね。いろんな反響があったんじゃないかと思うんですが、どうでしたか?

宍戸
計算通りですね(笑)。

――ははははは!

宍戸
今までは、ずっと断ってきたんです。でも、歌番組だし、アルバムも出るし、時期がちょうどよかったので。今までいろいろプロモーションとかしてきたけど、やっぱりなかなか沢山の人には届かないから、テレビの力はすごいのを知ってるので、「それは使おう!」と思って出させてもらって。1ヶ月ぐらいYahoo!ニューストピックスのエンターテインメントのところのランキングにも上がっていたんで。

――テレビの世界ってどうしても「あの人は今」的なことやりたがるじゃないですか。でも、そういうものではなくて。今の音楽活動がちゃんと充実しているから、テレビのメディア力というものを非常に効果的に使えたというか。

宍戸
うん。私としても今までの経歴にも自信があったのでそこはブレないですからね。あと、今回はスタッフさんがすごく良心的で、良く見えるように描いてくださったので。それも大きかったです。

昔から自分から発信したいと思ってた


――今に至るような音楽的な充実のターニングポイントになったのはどれくらい前のことなんでしょうか?

宍戸
6年前ぐらいですかね。“faire l'amour(フェール ラムール)”っていう曲を鴫原浩平さんと一緒に作って、そこから自信を持って音楽活動できるようになった。浩平さんは「曲書いて」とお願いしたら、すぐに2曲ぐらい私のイメージしてる曲を書いて、直筆のお手紙と一緒に下さったんです。その曲もすごくよかったです。

――同じくNEXUSの『インディ大衆食堂』の連載で鴫原さんが書かれてましたが(http://www.nexus-web.net/column/indies/2012/07/13/41/)、海外でのライヴもやってるんですよね。これはどういう体験だったんでしょうか?

宍戸
今は海外でアニメが人気なので、私の認知度は行くとこに行けばあるんですよ。それこそ「私、こんなに人気があったんだ」っていうくらい。サインに並ばれたり。普段、東京でそんな経験することないですからね。海外に行く前に下北沢の駅前の高架下で歌ってみたら、ワンコーラスくらいで警察につかまった(笑)。

――下北沢という場所を自分の音楽活動の拠点と意識されたのっていつぐらいから?

宍戸
やっぱり6年前くらいですね。昔から、いろんな人が集まって、出ていく場所だと思っているので。そこで人脈作りをしましたね。(“faire l'amour”が挿入歌になった)『死刑台のエレベーター』の監督の緒方明監督もそうだし、いろんな出会いがありました。

――10代はアイドルとして、その後は声優として活動されてきて、その頃はあんまり街に拠点を置くっていう考え方ってそんなに無かったんじゃないかと思うんですけれど。

宍戸
そうですね。

――そこと今を比べて、なんらかの感覚の変化ってありますか?

宍戸
昔から、自分から発信したいなって思ってたんです。待つのがイヤだから。そうしたら、ちょうど6年前からTwitterとかUstreamとか、自分でできるようになって。で、どこからでも世界中に発信できるのに、都合がよかったのが下北沢だったんです。映像をやってる人もいたし、いろんな人と繋がることができたから。

――ちょうどその頃に、インターネットを使って人を結びつけるツールが沢山でてきたんですよね。時代の転機だったんでしょうね、きっと。

宍戸
私がiPhoneを持ち始めたのもその頃でしたね。今は亡くなられた飯野賢治さんとお食事した時に「今すぐ自分でツイキャスした方がいいよ」って言われて。「明日買います!」とか言って買いに行ってツイキャスを始めたり。とりあえずソーシャルなものは全部一応やってみて、自分に合うかどうか試してました。

――そこで大きかったのが、もともと発信したい側の志向を持っていたということだった。

宍戸
だからアイドルには向いてないですよね(笑)。アイドルって、大人に作られるものだから。

――むしろ、人と人を結びつけるみたいな仕事の方が向いていたんじゃないかと。そんな実感はありますか?

宍戸
ありますね。ライヴハウスの店長になりたいっていうくらい、「誰と誰をブッキングしたらお客さん増えるんじゃないか」とか、そういう人を繋げるのが大好きで。そのおかげで生きてる感じですね。私のワンマンライヴって、お客さんに絵描きがいたり、写真家がいたり、クリエイターとかの集まりになってたりして。そういうところで人と繋がっていけば私も嬉しいですしね。

宍戸留美

1989年 ロッテ主催『ロッテ CMアイドルは君だ』4代目グランプリ受賞。約8万5千人の中から選ばれる。
1992年 18歳でフリーアイドルとなる。朝日新聞、文芸春秋等にその行動が掲載。
2010年5月9日に下北沢で実施したデビュー20周年記念ライブの模様がUstreamで中継され中継時間内の瞬間最大視聴率が「世界一」を記録した。
2013年 Contrary Paradeのたなかまゆとキラキラポップユニットでも音楽活動中。
ホフディランのワタナベイビーとのゆるポップユニットでも音楽活動中。
妹分☆蝦名恵のアルバム制作進行中。
予てから憧れの上田健司氏プロデュース!30代最後のアルバム「ルミネッセンス」を1年かけて制作。40歳ブレイク説に向けマイシン中!!

rumi-shishido.com


< LIVE INFORMATION >
宍戸留美&上田健司 合同リリースパーティー 〜ルンルンお誕生日おめでと〜
日時:11月6日(水) OPEN 19:00 / START 19:30
会場:渋谷gee-ge
チケット:前売り 4,000円 / 当日 4,500円(1DRINK 600円別)



宍戸留美『ルミネッセンス』

2013年11月13日(水)発売
SNDL-0003 / 2,500円
[ 収録楽曲 ]
1. 春風
2. 仔猫のタトゥー
3. samida-rain
4. 乱れてロンリー
5. スコア
6. for you
7. ランプ
8. 君はライダー



上田健司『楽しい追憶』

2013年10月9日(水)発売
KMY-011A〜B / 2,500円(税込)
[ 収録楽曲 ]
・DISC1
01. 見たい鏡
02. 水時計
03. 雨宿り
04. 乱れてロンリー
05. あの日忘れた時の夜
06. ムーニームーン
07. samida-rain
08. キミがいる
09. ランプ
10. 楽しい追憶
・DISC2 (2001年発売アナログシングルより)
01. 窓辺
02. 君はライダー
03. ナイトメア
04. 日々・君・恋し


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