NEXUS アーティスト・インタヴュー:パスピエ 「音楽の魅力にハマる手助けをしたい。そういうことを提供していけたら嬉しい」 ――快進撃続くパスピエの“底知れなさ”を探る

パスピエのニューアルバム『幕の内ISM』が高い評価を集めている。昨年にリリースされたメジャーデビュー作『演出家出演』以降様々なロックフェスに出演、ライヴバンドとしての人気をぐんぐん増してきた彼らだが、新作は明らかにその“先”を見据えた作品だ。メロディにしても、曲調にしても、J-POPのど真ん中のフィールドで勝負するスケールの大きさとポピュラリティ、パスピエ独特のセンスが同居している。パッケージにも、バンドのあり方にも、多面性と仕掛けが込められている。

バンドがどういうところを目指していくのか、成田ハネダ(Key)と大胡田なつき(Vo)
の2名に聞いた。

取材・文=柴那典





“和”やオリエンタルな感じを意識した

――まずはCDのパッケージの話から聞こうと思うんですけれども。この『幕の内ISM』というアルバム、初回盤のジャケットを開くと立体になって、奥を覗くと茶室になっているんですよね。これ、相当すごいと思うんですけど。

成田
僕は全然わからないんですけど、カットだったり色だったりとか、出版系の方にはそう言ってもらえてますね。
大胡田
色がキレイに出てるね、とか。

――今回の作品は、パッケージとしても面白いものを作ろうというアイディアがあったわけですよね。

成田
そうですね。全てのアイディアは大胡田から出してしてもらっていて。
大胡田
全部の曲が揃って並べてタイトルを決めてから、ジャケットをそろそろやりましょうかという感じです。前の『演出家出演』も凝ったパッケージにしていたので、今回はどうしようという話をしていたときに、この雛形を教えてもらって。
成田
今って、初回盤にどのアーティストも重きを置いているじゃないですか。その中で、やっぱり僕らだからこそできるものって大胡田のアートワークだと思っていて。平面のものだったら今までもあったと思うんですけど、立体的に見せるってことで、前作よりはパワーアップした作りにできたかなと思います。

――そして、作品のタイトルが『幕の内ISM』。これは“和”というコンセプトやイメージから発想が広がっていったんでしょうか。

成田
曲はいつも僕が書いて、それに歌詞を載せてもらうんですけど、確かに僕自身も“和”やオリエンタルな感じを意識して作りました。ただ、こういう風に曲を書いたからこういう風に聴いてほしいとか固定化したくなくて。大胡田にも「和の世界観で歌詞を書いてほしい」とは全く言っていないんです。でもいざ歌詞やジャケットが出来上がると、大胡田としてもオリエンタル感を意識したものが出来上がってきたので、これまでになく作り始めた段階から完成まで、連なって制作できたなというのは改めて思いましたね。

――大胡田さんはどういうことを感じ取ったんでしょう?

大胡田
私がその時期に、日本のもの、絵でいうと浮世絵とか日本画が好きだったというのもありますし、デモの音源を聴いたときに、日本だけじゃなくてオリエンタルな感じ、いろんな要素が合わさったような雰囲気も感じられたので、これはいま私が気に入っている浮世絵とかが次の作品のアートワークに使えるだろうなと思っていました。

――しかもそれは、「パスピエなりの」というところがフックになっているんですよね。イラストでは制服の女の子が何かを覗き込んでいるし。“和”といっても、それこそ尺八みたいな和楽器とかわかりやすい要素を使ってやっているわけでもない。

成田
僕は音を作るので、いかに音で表現しようかと考えたときに、それこそ例えば尺八の音を使ったり和太鼓を入れたりだとか、そういうことは一番わかりやすいとは思うんです。でもやっぱり僕らはバンドでやっていて、音楽をライヴでも表現していくとなったときに、バンドの制限をプラスに変えられるようにしたいと思っていて。そのうえで、“和”というものを表現していきたい、という。

特定できる一つのものだけで収めたくない

――どういう切り口でどうやったら、このふわっと浮き上がってくるオリエンタルな感じが生まれるのかなと思うんですけれど。

成田
これは“和”ということだけじゃなく全てにおいてそうなんですけど、パスピエって、何か特定できる一つのものだけで収めたくないというのがあるんです。何かと何かを掛け合わせたものにしたいというか。例えばメロディで和を意識しているときは、バックの演奏は激しくロックにしてみたり、ダンスチューンにしてみたりする。ノリがゆったりした民謡っぽい感じだったら、今度は逆にメロディをポップにしたり音色を歪ませたり。ただ一つのエッセンスってわからないようにしようというのがあって。でも、ポイントポイントで、これだったら日本人っぽいんじゃないかなとか、オリエンタル感じゃないかなというのは表現してますね。あとは、僕が今までインスパイアを受けたものとして80年代とニューウェーブというのを挙げているんですけど、そこには例えばYMOのような民族音階をエレクトロで表現している先駆者がいて。そのぶん、僕らとしてはエッセンスを軽くまぶしただけでそれっぽく受け取ってもらえるかもというのは、これまでに曲を出して感じていた部分でもありました。

――「RYDEEN」なんか、まさにヨナ抜き音階を上手く使った曲なんですよね。そのDNAみたいなものが日本の音楽リスナーに浸透していると。

成田
そうです。日本の民謡だったり古い歌に使われている音階にもあって、そういう音に日本人は敏感に反応するものだと思っていて。でも、だからこそ、それをあまり使いすぎてしまうと、伝えたい“和”の印象ではなくなってしまう。“和ロック”みたいに取られてしまうと違うなと自分の中で思っていて。あくまでもパスピエというバンドが表現している“和”にしたかったので、そういう点で音階の部分だったりとか、サウンド面でどう聴かせるか試行錯誤しながら作りましたね。

――ここは絶妙なバランス感覚ですよね。僕もアルバムを聴いて感じたんですけれど、“和”のテイストは、ふわっとしたイメージとしてすごく感じるんです。でも、それそのものになることを絶妙に避けている感じがある。

成田
それはもう本当にその通りです。絶妙に避けるようには作っていますね。やっぱり、バンドにイメージをつけられたくないんですよね。「パスピエってこういうバンドだよね」ということではなくて、あくまでパスピエの表現としていきたかったので。それは大胡田の声質というのもあると思っていますね。独特のちょっと人間っぽくない感じがあるというか。これまで、いろんな喩えかたをしてもらってきたんですけれど、その方向に進んでいくと、その先入観がバンドについてしまう。なるべく創作の段階ではそういうものを避けるように作っています。




パスピエ

Vocal:大胡田なつき
Keyboard:成田ハネダ
Guitar:三澤勝洸
Bass:露崎義邦
Drums:やおたくや

2009年に成田ハネダ(key)を中心に結成。バンド名はフランスの音楽家ドビュッシーの楽曲が由来。卓越した音楽理論とテクニック、70s〜00sまであらゆる時代の音楽を同時に咀嚼するポップセンス、ボーカルの大胡田なつきによるMusic Clipやアートワークが話題に。11年に1st ミニアルバム「わたし開花したわ」、12年に2nd ミニアルバム「ONOMIMONO」をリリースし、ロング・セールスを記録中。13年3月に初のシングル「フィーバー」をリリース、6月12日にメジャー1stフルアルバム「演出家出演」を発表。その後数々の大型ロックフェスに出演、好評を博し、また東阪で行われたパスピエ主催によるイベント”印象A”、 ”印象B(w/the band apart)”もソールドアウト。10月末から12月21日の赤坂BLITZまで初のワンマンツアー「印象・日の出」、追加公演「印象・日の出外伝」を開催、全箇所ソールドアウトし成功を収める。 14年3月26日初の両A面シングル「MATATABISTEP/あの青と青と青」をリリース、4月に自主企画イベント第三弾"印象C"に9mm Parabellum Bullet/クラムボン/髭を招いて開催、即日ソールドアウト。6月18日に2ndフル・アルバム「幕の内ISM」をリリース。11月から全国ツアー「幕の外ISM」をスタートさせる。

オフィシャルサイト


『幕の内ISM』

2014年6月18日発売
初回限定盤:WPZL-30860/1 / 2,778円(+税)
*初のオフィシャルライブ映像DVD付
「パスピエ TOUR 2013 “印象・日の出” 外伝 at AKASAKA BLITZ」
*特殊パッケージ仕様

通常盤:WPCL-11854 / 2,300円(+税)

【収録曲】
・幕の内盤[DISC1]
01. YES/NO
02. トーキョーシティ・アンダーグラウンド
03. 七色の少年
04. あの青と青と青
05. ノルマンディー
06. 世紀末ガール
07. とおりゃんせ
08. MATATABISTEP
09. アジアン
10. 誰?
11. わすれもの
12. 瞑想

・幕の外盤[DISC2]
*初回限定盤特典 DVD
パスピエ TOUR 2013 "印象・日の出外伝"
at AKASAKA BLITZ (2013.12.21)
1. OPENING 〜 S.S
2. デモクラシークレット
3. トロイメライ
4. 名前のない鳥
5. とおりゃんせ
6. フィーバー

■TOUR INFORMATION

パスピエ TOUR 2014
"幕の外ISM"


11月14日(金) 川崎CLUB CITTA'
11月16日(日) 水戸LIGHT
11月17日(月) 下北沢GARAGE
11月20日(木) 新潟LOTS
11月22日(土) 熊本B.9 V1
11月24日(月・休) 福岡BEAT STATION
11月28日(金) 名古屋DIAMOND HALL
11月29日(土) 大阪なんばHatch
12月01日(月) 京都KYOTO MUSE
12月04日(木) 浜松Live House
12月06日(土) 高松オリーブホール
12月08日(月) 広島ナミキ
12月11日(木) 仙台Rensa
12月13日(土) 札幌PENNY LANE24
12月21日(日) 東京Zepp DiverCity(TOKYO)

チケット一般発売日:9月27日(土)

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