NEXUS アーティスト・インタヴュー:OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND 「このアルバムができて、初めて未来が楽しみになった」――OAUが10年の歩みの中で手にした“自然体”の音楽、そして続けていくことの美学

結成10年を迎えたOVERGROUD ACOUSTIC UNDERGROUND(以下OAU)が、5年ぶりのアルバム『FOLLOW THE DREAM』をリリースした。

心地よく、風通しよく、それでいて芯の強い情緒が染み透っている全10曲。以下のインタビューでも語っているとおり、その背景には彼らが歩み続けてきた道程と、そこで経験したことがしっかりと礎になっている。2011年にリリースされたミニアルバムから再録となった“夢の跡”、震災後の日本を立て直す人々の姿を描いた“朝焼けの歌”など、ここ数年の日本の状況と、彼らがそこで起こした行動とも、リンクしている。

9月13日、14日には、彼らが主催する「New Acoustic Camp 2014」も開催される。アコースティックライヴとキャンプを楽しむ場を作ることをコンセプトに、2010年のスタートから今年で5年目を迎えるこの野外フェスは、OAUの音楽のあり方にも大きな影響を与えているようだ。

TOSHI−LOWとMARTINの二人に、話を聞かせてもらった。

取材・文=柴那典





楽器が自分の身体の一部みたいになっていくのに10年かかった

――ニューアルバム『FOLLOW THE DREAM』は、今までのOAUと大きく違う感触があったんです。音楽性自体はそんなに変わってないと思うんですけど、音の鳴りというか感触が全然違うというか、ナチュラルさと芯の強さが両立している感じがあります。作った側としても、結成から10年、前のフルアルバムから5年で、バンドがかなり変わってきた、熟成してきたという実感があると思うんですが、どうでしょうか?

TOSHI-
LOW
単純に、俺らがアコースティック楽器に触れて、まずそこを鳴らすのに時間がすごくかかったというか。モノを作るのに衝動で作ったフレッシュな感じが初々しくて、誰も見たことないものとして人々の興味を引くのも分かるんですけど。物事なんでも、何かを一つするのにどの職業でもがっちり毎晩やって3年、そしてちょこっとずつだったら10年とか、そういう風に時間がかかる計算があると思うんで。楽器が自分の身体の一部みたいになっていくのに10年かかった。もしくは今ようやくバンドが自然にナチュラルにそういうアコースティックサウンドを聴き心地いい状態で鳴らせるようになった。そういう感じですね。

――MARTINさんはどうでしょう? アルバムが完成して、どんな感触がありますか?

MARTIN
まあ、みんな楽器の鳴らし方はすごく上手くなったと思うんだよね。そもそも上手くならなかったら辞めればいいと思ってるんだけど。みんなが上手くなってきたから、OAUが10年前にやりたかったことがようやくやれるようになったとは思う。あと、演奏だけじゃなくて、曲作りから違うと思うんだよね。曲のもともとのイメージと、一曲ずつの強いテーマがある。前は俺も若かったし、いろいろやりたかった。一曲に出来ることを全部入れてすごいものにしようと思ってた。でも、今回はシンプル、そして面白いっていうのを目指した。全員いっぺんに弾かないこととか、抜けてまたガンッって入ってくるとか。TOSHI-LOWがブルースハープしかやってない曲もあるし、それだってハーモニカをずっとやってるわけじゃない。ギター3本だったら、ガシャガシャになったり強くなりすぎちゃうこともあるし。いろいろ考えて作ったから、全然違う風に聴こえると思うんですよ。
TOSHI-
LOW
実は弾かないほうが難しいんですよ。やる方が簡単というか。鳴らしてれば満足感があるというか。ワーッてやってればそっちの方が安心感もあるだろうし、やってる気持ちになっちゃうんだけど。でも、こういう編成でやってると、いかにやらないかも大事だし、小さく鳴ってることも大事。ロックバンドの考え方と逆な感じがある。

――アコースティック楽器ならではの修練っていうのもあるんでしょうか?

TOSHI-
LOW
やっぱり電気を鳴らす訳じゃなくて、空気を鳴らすので。その辺が実はより細かいというか。振りかぶってガンッとやる方が楽で、そっと息止めてスッとやるみたいなものの方が難しいっつうか。俺らは特に振りかぶることをずっとやってきたから、だから一番初めの頃にはMARTINとめちゃめちゃ喧嘩もしたし。

――喧嘩してたんですね。

TOSHI-
LOW
だいぶしましたね。MARTINはアコースティックの畑から来てるし、俺らはどうしてもロックの畑から来ちゃってるから、その小さい鳴らし方が初めはどうしても掴めなかったというか。ただ、すごい喧嘩して何度も辞めようかって話になったんですけど、でも「なんかあるんじゃないか」って思って続けてきた。それでレコーディングして、曲作りをして。あの時の「なんか」っていうのはもしかしたらこれのことだったんじゃないかなっていう。そういう繋がり方が、俺の中ではすごくあった。

より自然になった。音楽がより身近なところにあると思うようになった

――その「何かあった」っていうのは、先ほどMARTINさんが言った、シンプルになったということと繋がっていますか?

TOSHI-
LOW
シンプルになったのには理由があって。より自然になったんだと思いますね。自然になったっていうのがどういうことかというと、自分達がやってみたい音楽がより身近なところにあると思うようになった。前までは、やっぱりMARTINが元々アメリカ人として持ってるルーツ的な音楽であったり、「ここはケルトっぽくしよう」とか「アイリッシュっぽくしよう」とか「○○風にしてこう」っていうことで世界の風景を書いてた気がする。そうじゃなくて俺がいるところのこれが風景なんだって自信を持つようになった。MARTINもそういう風に曲を持ってくるようになったし、俺達もそれに対して自然に一番いい味付けするようになった。塩だけでOKなら塩だけでOKみたいな、それ以上何にもやる必要がない。ゴチャゴチャケチャップ入れて、何時間蒸してとかする必要はないっつう。

――MARTINさんも曲を書いたり、メロディーを作ったり皆でアレンジをしてく中で、身近なものが音楽に繋がってる感覚ってありましたか?

MARTIN
自分達のルーツっていう意味でいうと、このアルバムはある意味、特に俺には近いかな。俺の子供の頃の周りにあった音楽を聴いて懐かしいって思える歳になってると思うんで。ブルースとかカントリーとかは、俺の親がやってた音楽だから。それに、俺に日本のルーツもできたなって思うし。特に“朝焼けの歌”のメロディーはすごい日本っぽいと思う。


――この曲は和というか、日本のノスタルジーに繋がるものがありますよね。これはMARTINさんが書いた曲?

MARTIN
メロディーはそうですね。これは自分でもびっくりしたよね。メロディーを思いついた時、「日本のメロディーじゃん、これ」って。まさかそういうのが俺から出てくるって自分でも思わなかったけど、実際その曲がすごい好きなの。アイリッシュのメロディーの寂しさと、日本のメロディーの寂しさって、そんなに離れてないと思うんだ。ただ、スケールが違うだけ。日本の音階とアイリッシュの音階が違っていて、でもエモーションは大体同じ。その国のフォークだから。ケルトだって、日本だって、笛と太鼓で始まる。だから似てる部分は出てくると思うんだよね。

「今いるここが俺の国なんだ。当たり前じゃねぇか」

――TOSHI-LOWさんはどうでしょう? “朝焼けの歌”っていう曲は、どういう位置づけの曲になったと思います?

TOSHI-
LOW
もちろんさっきルーツって言った話の中で言えば、完全に自分達の中では聞き覚えのあるメロディーであるし、その切なさの部分でもそういう風に思えるような曲だと思ったけれど。ただ、曲としてどうこうっていうより、できた過程が俺はすごく大事で。それを一緒に共有出来たことがまず大きいですね。っていうのはこの10年間を一緒に過ごしてきて、2011年に東日本大震災があって、それを挟んでいろんなことがあるなかで、まず一緒に生活した。まだ乗り越えてはいないんだろうけど、そこの過程にいてくれたっていうのがまず大きい。

――この曲は歌詞もこの3年間、TOSHI-LOWさんなり、皆さんのやってきたことがあるからすごくリアリティのある言葉になっていると思います。

TOSHI−
LOW
たった3年前、ここの事務所(TACTICS RECORDS)で支援物資を集めてたんですよね。

――米を集めてたりしてましたね。

TOSHI-
LOW
何でも集めてた。一番初めは生活用品から集めてたし、あの頃は東京も真っ暗だったでしょ。あのとき、MARTINだって、帰れる国があったらさ、帰る方が普通だと思うの。それで帰ったとしても怒んなかったし、うちの周りの大使館の人達が一目散に帰っていったのも俺は見てた。だからMARTINにも「帰っていいんだよ」って言った時に「ふざけんなよ」って言われて。「今いるここが俺の国なんだ。当たり前じゃねぇか」っていうのを目の前で言われた。そのときの怒った顔というかグッとした顔って、一生に何回かしか出ないと思うんですよ。男がグッと腹を括った瞬間だった。それが俺が男として好きな顔だった。

――なるほど。それがすごく大きかった。

TOSHI−
LOW
俺もそっから津波の被害にあった街に行くようになって。でも、そこに行って一番後悔したことは、これが例えばボランティアして何かしたとしても「歌を歌いに来たいな」と思ったの。だけど、歌を唄うにも俺は下手過ぎるなと思った。「兄ちゃん何やってるの?」「本当は歌を歌ってるんです」って言ってさ、「じゃあ歌を歌いに来てよ」って言われた瞬間に俺「あ、はい!」とは言えなくてさ。自分が下手っつうか努力してないのは知ってるから。だからその帰りの車の中で真っ先に思ったのは「帰ったら練習しよう」と思って。もちろん次に支援物資何持ってこようとか、こうやってボランティアしようとか思いながらもう一つ「あぁ、ちゃんとバンドやりたかった。やっときゃよかった」ってすごい後悔して。その時が、“夢の跡”って曲がちょうどリリースされる時だったんだよ。

終わりの歌だったものが始まりの歌に聞こえてきた



――あの曲がシングルとして出たのが2011年の5月。曲自体は震災前にできていたんですよね。

TOSHI-
LOW
震災前に録音した曲で、ただ震災とドンピシャのリリースで、しかも(海と浜辺が写っている)ああいうジャケなので、デザインの変更を示唆されたり、リリースも遅れて。だから、今考えればそれも含めた上で自分達にとっても大きな転機、ターニングポイントになったんじゃないかなって思う。なので、5年空いたけど、実質3年の経験が作り得た歌がこの“朝焼けの歌”だった。その何一つ抜けても出来なかったと思う。ただMARTINがメロディーを思いつくだけでも出来なかっただろうし、俺がただ単に音楽だけを勉強してたら出来なかっただろうし。

――“夢の跡”も、今回のアルバムで再録されてますよね。あの曲は、作った時から比べると曲の持つ意味もかなり変わってきてるんじゃないかと思うんですが。

TOSHI-
LOW
全く違うんじゃないですかね。実はもうちょっと哀しいイメージで歌詞を書いた歌だったから。その風景があったとしてもいずれそれが消えてなくなってしまう。目の前に大事な人がいても、その大事な人もいつか消えていく。自分も消えていく。っていうことを思って書いた曲だったから。その先を考えてなかったのが、震災を経て結局その消えた先に何があるんだって考えるようになった。全ては終わる。じゃあその続きは何なんだ。そっから3年間、そういう意味がどんどん出てきた。終わる果てに始まりがある。全てのものはなくなる。だけど、全てのものが始まっていく。全てのものが始まっていくと思ったらやっぱりそれは希望になっていく、という。だから曲は別に変わってない。歌詞も変わってない。だけど、終わりの歌だったものが始まりの歌に聞こえてきたっていう。それが自分達にとってもすごくでっかい変化なんじゃないかなと思って。

――“夢の跡”という曲が入っているアルバムが『FOLLOW THE DREAM』っていうタイトルになっているわけですよね。一曲目がその表題曲で始まり、最後の“Question”で夢というテーマがリプライズしている。そういう意味でも続けてきたことっていうのがすごく糧になった。そういう感じのアルバムだと感じました。

TOSHI−
LOW
続けたことしか結果は出ないですよね。終わっちゃったらこれを見れないまま終わってしまったと思う。もしMARTINがフロリダに帰ってしまったらそれはそれで終わってしまった話なんだろうしっていう。

OVERGROUND
ACOUSTIC
UNDERGROUND

MAKOTO - BASS, CELLO
KAKUEI - PERCUSSIONS
MARTIN - VOCAL, VIOLIN, ACOUSTIC GUITAR
RONZI - DRUMS
TOSHI-LOW - VOCAL, ACOUSTIC GUITAR
KOHKI - ACOUSTIC GUITAR

繊細で雄壮。刺激的で柔らかい。6人の男たちの紡ぐ音の糸。ケルトの風や南国の浜辺。幾つものルーツミュージックが有機的に絡み合う。そして肌に心に触れてくる。開放感と哀愁で編まれるアコースティックメロディー。
2005年結成。キャンプフェス「New Acoustic Camp」のオーガナイザーも担う。2014年9月3日、約5年ぶりとなるフルアルバム『FOLLOW THE DREAM』を発売。

オフィシャルサイト


New Album
『FOLLOW THE DREAM』

2014年9月3日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD):
TFCC-86487 / 3,241円(税抜)
通常盤(CD):
TFCC-86488 / 2,593円(税抜)
iTunes Store

【収録曲】
ディスク1
01. Follow The Dream
02. Broken Glass
03. 夢の跡
04. Blind Moonlight
05. Making Time
06. Pilgrimage〜聖地巡礼〜
07. Ride Today
08. N.A.C
09. Treason Song
10. Clumsy Queen “Isabella”
11. 朝焼けの歌
12. Question

ディスク2
1. Making Time (Music Clips)
2. 夢の跡 (Music Clips)
3. otherwhere (Music Clips)
4. New Tale (Music Clips)
5. all the way (Music Clips)
6. Thank You (Music Clips)
7. Dissonant Melody (Music Clips)
8. New Acoustic Camp Live and Digest

■TOUR INFORMATION

OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
TOUR 2014 「FOLLOW THE DREAM」


10月06日(月) 石垣島 島野菜カフェリハロウビーチ
10月11日(土) 水戸 LIGHT HOUSE
10月12日(日) 高崎 CLUB FLEEZ
10月17日(金) 仙台 darwin
10月19日(日) 福島 AREA 559
10月23日(木) 新潟 ジョイアミーア
10月24日(金) 松本 まつもと市民芸術館小ホール
10月31日(金) 梅田 Shangri-La
11月01日(土) 京都 GROWLY
11月02日(日) 岡山 Renaiss Hall ルネスホール
11月04日(火) 広島 CLUB QUATTRO
11月07日(金) 福岡 the voodoo lounge
11月09日(日) 鹿児島 CAPARVO HALL
11月15日(土) 名古屋 TOKUZO

-TOUR FINAL-
11月21日(金) 六本木EX-THEATER
11月29日(土) 石巻 BLUE RESISTANCE
11月30日(日) 宮古 KLUB COUNTER ACTION

OAU全国ライブツアー特設サイト
http://www.asoview.com/lp/oau/

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