NEXUS アーティスト・インタヴュー:長澤知之 「音楽に愛される」歌い手が辿り着いた、喜びの場所

最近、いろんな場所で長澤知之の名前を聞くようになった。赤い公園・津野米咲や小南泰葉や、数々の若くて才能あるミュージシャンが、彼の音楽に影響を受けた、すごく好きだった、救われた、と言っているのを耳にした。数々の同世代や年上のミュージシャンから愛されていることも知った。彼の歌を聴くと、その理由がすごくよくわかる。その響きには「音楽に愛されてる」さまが息づいていて、そのことが沢山の人を魅了しているのだと思う。

2枚目のフルアルバム『黄金の在処』を完成させた長澤知之。新作では、その津野米咲や、Nabowaや、ボカロPのれるりりなど、多彩なゲストを迎え、バラエティ豊かで開放感あるサウンドを実現させている。でも、何より大きいのは、かつて孤独の淵から歌い始めた彼が、今「音楽を心から楽しんでいる」というムードを、喜びと共に結実させていること。そして、そのことを自分自身の支えにしていることだと思う。

充実の一枚を作り上げた彼に、話を訊いた。

取材・文=柴那典

肯定的な気持ちを言おうと思って作っていた

――前のミニアルバム『SEVEN』から一年ちょっとぶりということで。お久しぶりです。

長澤
お久しぶりです。

――早速アルバムの話をしたいんですけれど、本当に豊かな、実りのアルバムという印象で。前のミニアルバム『SEVEN』は、カラフルになって方向性も広がった一枚だったと思うんですけれど、その先にあった音楽的な充実が詰まったような感じがします。どうでしょう、完成した時の感触は?

長澤
マスタリングが終わった時は、「ああ、終わった」っていう感じでしたね。開放感があったというか。

――時間をかけてじっくり紆余曲折ありながら作っていったという感じでした?

長澤
そういうところもありますね。アルバムの制作が軌道に乗り始めてからは速かったんですけど、時期的に、自分の精神状態があまり良くない時が続いていて。特にこのアルバムでは肯定的な気持ちを歌おうと思って作っていたので、そういう状況で作れないことが嫌だったんですね。だからなるべく、自分の気持ちが乗らないような状況では作らないようにして。ただ、制作そのものはトントン拍子に行きました。

――音楽的にどうこうというより、そこに自分を持っていくことの方が大変だった時期があった。

長澤
そうですね。「さあ作ろう」となって、焦点を絞っていけばどんどん作れるので。ただ、違うところで苦しんだりはしました。

――アルバムの大きな特色として、いろんなミュージシャンと一緒に作っていて、しかも曲調もかなり幅広くなっていますよね。これは、最初からそういうコンセプトがあったのか、一曲一曲作っていって最終的に曲を並べて集めたらこんなにバラエティ豊かなものになったのか、どっちでしょう?

長澤
どっちもなんです。複合的なアルバムで、最初にテーマがあって、そのテーマからずっと同じレールを辿っていこうと思って作っていったんですけど、やっぱり音楽は生き物なので、やっぱり欲望っていうものが「あっちに行きたい」「こっちに行きたい」っていう風になって。で、こうなったっていう感じですね。

目の前にいる人間に喧嘩を売るより、相手を口説くような言葉で

――最初のテーマっていうのはどういうものだったんですか?

長澤
突飛なテーマだったんですけど、一曲一曲ごとにストーリーを作って、それが一つの映画になるようにしよう、みたいな感じだったんですね。でも、結局のところ、音楽を作り始めると、やっぱりこういう楽器がほしいとか、こういう人とやりたいとか、こういう曲がほしい、こういう曲があるから作り直したいだとか、そういう風に、どんどん欲望が膨らんでいって。それが詰まってこういう形になっちゃった、という。

――結果的に、一つの曲にちゃんとストーリーがあってそれが集まって一編の物語になっているっていう最初のテーマは達成されました?

長澤
いえ、全然そういうところには行かなかったです。

――そうなんですね。

長澤
そればかりがテーマでもなかったんですよね。それより大きなテーマとして、楽しもうというのがあったんです。楽しめたらいいねっていうことと、あと、聴きやすくあれたらいいねっていうのがあって。その2つのレールは意識して作っていたと思います。

――その「楽しもう」っていうのと「聴きやすくあれたらいいね」っていう感覚をもう少し噛みくだいて説明してもらうとするなら、どういう感じなんでしょう?

長澤
『SEVEN』の時は七通りのそれぞれ違う曲を作ろうっていうテーマがあったんです。そこが起点となっているところは変わってないんですね。だから、一つの芯は通っているけれども、それぞれバラバラの色を持つものであってほしい、カラフルさがほしいっていうのはあって。それを楽しもうと。音楽を純粋に楽しみたかったんです。例えば、自分が最初に作ったアルバムの『JUNKLIFE』というのは、楽しもうというよりは、どちらかというと殴り込もうという感覚に近かったんです。このアルバムに関しては、どちらかと言うと、もう少し肩の力を抜いて音楽をやろう、っていう感覚の「楽しもう」っていう感じですね。それと、「聴きやすさ」っていうのは、また『JUNKLIFE』の話に戻っちゃうんですけど、1stアルバムの時は目の前にいる人間に喧嘩を売るような感じで作ってたんです。でも、今回はそれよりは相手を口説くような言葉でいこう、聴きやすくあろう、というようなテーマですね。音楽的にも、言葉的にも。

――“誰より愛を込めて”はNabowaとのコラボレーションで作っていますよね。この曲は、まさに音を鳴らすのを楽しんでいる感じがする。これはアルバムを作るにあたってのきっかけというか、推進力みたいなものになりました?

長澤
なりました。この“誰より愛を込めて”っていうNabowaと一緒にやった曲と、その前に『SEVEN』でやった“あんまり素敵じゃない世界”という曲が起点になっていて。そこで「一緒に虹を刻む」っていう、この「虹」をビートやリズムとかメロディのメタファにして、それをギターの六弦で刻むっていうことをして。COILの佐藤洋介にギターソロを弾いてもらったり、その次に“誰より愛を込めて”っていう曲で、Nabowaと一緒にやったりして。そこから「音楽を楽しんでる」っていうような感覚になって、それが起点となってアルバムができていったという感じはしますね。

――いろんなプレイヤーがいい音を鳴らして、アイデアを共有しあって「これいいね!」みたいにして出来上がっている曲ですよね。これをやっている自分と、例えば10代や20代はじめの頃の自分と比べてみるとどうですか?

長澤
もう大きな違いがありますね。とてもこういうことは出来なかっただろうなと思います。こういうジャムセッションが出来るっていうのも、単純に技術的な話じゃなくて、人間的にはある程度コミュニケーションが出来ているんだな……というと笑える話ですけれど(笑)。一緒に「せーの」でやった時に音楽が流れていって、楽しくセッション出来たっていうのはすごく自分にとって重要なものでしたね。

長澤知之

2006年「僕らの輝き」でデビュー。以降、コンスタントにライブ活動を行いながら、2011年4月に発表した自身初のフルアルバム 「JUNKLIFE」が各所で大評判となり、活動の幅が一気に広がっている。 只今もっともアツいアーティスト。 2013年11月6日セカンドフルアルバム「黄金の在処」をリリース。12月には、 “共演したいアーティスト”を招く対バン型自主企画イベント「シークレット ライド7」、2014年2月には、全国5カ所で、ワンマンバンドツアー「Nagasa・Oneman8 Band Ver.」を開催する。

オフィシャルサイト


2nd Full Album
『黄金の在処』

2013年11月6日(水)発売
ATS-047 / 2,500円(税込)

【収録曲】
01. GOODBYE, HELLO
02. フラッシュバック瞬き
03. スーパーマーケット・ブルース
04. そのキスひとつで
05. 誰より愛を込めて
06. 追憶
07. 黄金の在処
08. 無条件幸福
09. VACANCES
10. あんまり素敵じゃない世界
11. あとの祭り
12. ハレルヤ
13. STOP THE MUSIC

■ ライブ情報
『黄金の在処』発売記念
〜シークレット ライド7〜

12月14日(土) 渋谷 WWW ※SOLD OUT
12月17日(火) 大阪 Music Club JANUS
※東京公演と大阪公演のゲストは異なります。

チケット料金:4,200円(税込)
一般発売中

■ ツアー情報
「Nagasa・Oneman8 Band Ver.」
2月15日(土) 大阪 Music Club JANUS
2月17日(月) 名古屋 アポロベイス(旧アポロシアター)
2月22日(土) 広島 BACK BEAT
2月23日(日) 福岡 DRUM SON
2月28日(金) 東京 LIQUIDROOM
Band Member:西川進(G) / 松田“FIRE”卓己(B) / タナカジュン(Dr)

チケット:4,200円(税込、整理番号付、ドリンク別)
※未就学児童入場不可

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