NEXUS アーティスト・インタヴュー:MONO

MONOは海外での活動をメインにしている、4ピースによるインストポストロックバンドである。巨大な滝から流れ落ちる水のような圧倒的な音像と、聴いているだけで胎内回帰するような叙情的な旋律は、言語を超えた世界共通言語として多くの衝動と感動を響かせている。

そんな彼らのニューアルバム『For My Parents』は、前作から大胆に導入されたオーケストラと共に構築して行った一大叙情詩のようなアルバムで、まるでこの1枚を聴いているだけで自分の人生をすべて振り返ったかのような気持ちになる最高傑作だ。
音楽に生きる意味を求めるのは理屈ではなく、その音楽が生きる意味を鳴らしているからである。MONOは人間のみならず、この世界のすべてが生きていて、そして何かを伝えようとしている事を、そのまま音楽にして鳴らしているように感じる。だからこそ彼らの音楽は国境を越え、音楽のジャンル的にもすべてを越境するエネルギーと優しさに満ちている。

今やアメリカを中心にインディーロックシーンの中で独自のポジションを築いているMONOだが、彼らの音楽は日本ではまだまだマイナー扱いだ。しかし先日のフジロックフェスでの感動的なライヴの空間からは、彼らの音楽がこの地でも開かれようとしている事を告げていた。そんな今、リーダーであるTakaakira “Taka” Gotoから、いろいろな話を聞かせてもらった。 音楽によって何かを超えようとしているあなた、是非読んで下さい。

取材・文=鹿野淳 構成=柴那典

バンドを始めて12年経って、やっと日本でスタートができた

――今回の取材では、先日のフジロックの話、そして、そもそもバンドが今に至るまでどうやって活動してきたか、それから新作アルバムについて、その3つの話をさせてもらえればと思っています。

Takaakira “Taka” Goto(以下Goto)  わかりました、よろしくお願いします。

――まず、フジロックフェスでのMONOのライヴを観て、本当に感動したんです。あれはオーケストラを従えた新しいアルバム『For My Parents』を初めてライヴで再現するものだったんですけど、何しろ素晴らしいライヴでした。

Goto
まず、あのライヴを実現できたというのが、本当にありがたかったです。そもそも転換の時間が50分しかないのにオーケストラでやれるのか?というところから始まって。でも、スマッシュ(フジロックの主催イベンター)の人が「俺がどうにかする、責任を持つから」って言ってくれたことでやれるようになって。それから、雨が降るかもしれないという問題もあった。オーケストラの人に、楽器が濡れるのが嫌な人はステージから退場していいですから、とも言いました。でも、やらない理由を探すことより、とにかくトライすることに価値があると思った、みなさんとの大きな共同作業でした。僕たちとしても去年の9月以来のライヴだったし、新曲で、オーケストラで、フジロックに出るというのは、本当にギャンブルだったんです。でも、終わったあとにはスタッフの方が泣いていてね。メンバーのみんなとも抱き合って………今思い出しても夢のような日でした。

――ライヴを終えて、どういう実感がありました?

Goto
バンドを始めて12年経って、やっと日本でスタートができたという思いがありました。12年前には、僕らどこにも居場所がなかったんです。インストバンドをやってるって言ったら「Charでもやるの?」とか言われたりしたこともあった(笑)。下北沢のライヴハウスさんにも出演を断られて、音楽がこんなに好きなのに音楽をやる場所がない。だったら海外でやるしかないって思って、NYに行ったんです。でも、そこでも案の定お客さんは5人くらいで、やっぱり無理だったんですよね。当たり前に考えたら、日本から来た無名のバンドのライヴに人が入るわけはないんです(笑)。でも何を勘違いしたのか、現実逃避でNYにいって。楽器も全部売っ払って旅費を作ったんですよ。そのときには、落ち込むどころじゃなかったです。自分がどう生きていったらいいのかわからなかった。でも、そのときにメンバーが「Gotoさん、こんなのどこに行っても一緒ですよ」って言ってくれた。その一言で始めることができたんです。

――日本でやってもどうせ同じなんだから、広い海外でとことん失敗しながら可能性を求めようという事ですね。

Goto
はい。それからアメリカで活動して、少しずつ口コミで広がって。ヨーロッパに行って、オーストラリアに行って、アジアにも行くことができた。それなのに、日本だけはずっとなかなか伝わらなかった。それが12年経って、やっとあのステージに立てたんです。日本人として帰化できたみたいな感じでした。「ありがとう」と日本に初めて思いました。それが正直な気持ちです。

4人の演奏する音がベートーヴェンみたいな音にならないものかという発想になった

――MONOはこれまで逆輸入バンドとしてメディアにフィーチャーされることもあったし、海外で評価を得ているバンドという認知は日本でもきっちりとあったと思うんです。でも、Gotoさんの中では、現実的に今回のフジロックのあの景色を見るまでは、帰ってきた実感はなかったんだ?

Goto
ないですよ、そんな気持ち一度もなかった。そのおかげで海外の活動を頑張れたというところもありますけど、でも今は、やっと日本にいて「ここは自分の国なんだ」と思えるようになってきた感じがしてます。逆に、海外にいるときにはむしろ、「自分たちは日本人だ」「日本人として振舞わないといけない」ってより強く思うようにしていて。

――それは何故ですか?

Goto
最初はアメリカのインディーバンドに憧れてバンドを始めたんです。でも、ただそれを真似しても、アメリカにはそんなバンドが死ぬほどいるんです。だからそれじゃダメだと思うようになった。でも、日本人としてのサウンドはなんだと考えると、日本人のルーツがよくわからなくなって……。たとえば、ロシアのラフマニノフとかチャイコフスキーが日本で公演するのを聴くときには、ロシアの空を感じたいと思うじゃないですか。それと同じように、僕らがロンドンでライヴをやるなら、日本の空を感じさせるようなライヴをやりたい。そういう風に俯瞰で物事を見るようになって。日本人だからこそできる音楽を世界でやりたいと思って。そこから、オリジナルな音楽を追求していくようになったんです。

――それでもMONOは最初の頃から独自の音像を追求していたし、3枚目のアルバムの『Walking Cloud and Deep Red Sky, Flag Fluttered and the Sun Shined』からは、スティーヴ・アルビニ(ビースティボーイズやニルヴァーナの名作を輩出した、アメリカを代表するロックプロデューサー)と組んで制作してきたわけですよね。

Goto
スティーヴ・アルビニはもともと大ファンで。ソニック・ユースとか、他にもファンの人は沢山いたんですけれど、みんなとお会いすることができたんですよ。でも「あれ?」って思ったんです。だって、着てる服も“洋服”って言うじゃないですか。「おかしいな? なんで洋服なの?」って。日本人が着る服って言ったら、和服? でも和服なんて誰も着てないじゃんって。僕は洋楽の格好良さも知っている。でも、日本文化や自分のルーツを考えたら、とても混乱してきて。それを探していったら、自分が昭和の一般家庭の出で、ピアノがあって、小さい頃からベートーヴェンやショパンを聴いて育ってきたということに行き当たったんです。川があって、山があって、日常の中にベートーヴェンがあった。で、2003年くらいに、突然「クラシックもインストゥルメンタル・ミュージックじゃないか」と思って。スタジオの中で4人の演奏する音がベートーヴェンみたいな音にならないものかという発想になったんです。ギターノイズだけじゃなく、この空間でシンフォニーが鳴ったら素晴らしいんじゃないか、それが自分のルーツなんじゃないかと思って。それでベートーヴェンにコネクトした昭和の日本人のアイデンティティを持って活動したいと思ったんです。

MONO

Takaakira “Taka” Goto(G)
Yoda(G)
Tamaki(B)
Yasunori Takada(Dr)
海外でのリリースやツアーも精力的にこなし、世界各地で熱狂的な支持を受けている4人組インストゥルメンタル・ロック・バンド、MONO。近年では、オーケストラをフィーチャーしたその楽曲スタイルが国内外でも非常に高い評価を受け、もはやロックミュージックの域では収まらない音楽性を発揮。ライブにおいても20名規模のオーケストラを従えた編成でのスペシャルショウをニューヨーク・東京・ロンドン・メルボルン・クアラルンプールで成功させ、今や日本が世界に誇るインスト・ポストロック・バンドである。

http://www.monoishere.com/


New Album

New Album『For My Parents』
DDCB-14016 ¥2,400(税込)
2012年8月22日発売(日本先行発売)

【ライヴ情報】
8月31日(金)東京・恵比寿Liquid Room
9月7日(金)大阪・梅田Shangri-La

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