NEXUS アーティスト・インタヴュー:斉藤和義、全盛期を更新し続ける20周年の秘密

飄々とした風貌のまま、ロックスターとして前人未到の領域に達してしまっているのではないか。ここ最近の斉藤和義には、そんな風格すら感じる。デビュー20周年を迎え、先日にはさいたまスーパーアリーナでのワンマンを成功させるなど、ライヴ動員は過去最大を更新中。数々のドラマや映画主題歌、CMソングを手がけ、ソングライターとして引っ張りだこの状況。ここにきて全盛期を更新し続けているのだ。

新作アルバムは、『斉藤』と『和義』という2枚同時発売。“やさしくなりたい”や“かげろう”などヒットシングルを中心に収録した『斉藤』に、ツアーメンバーなど様々な相手とのセッション、一人多重録音、The Birthdayのチバユウスケとの共作“恋のサングラス”など多彩な挑戦を繰り広げた『和義』と、それぞれ二面性の魅力を持つアルバムになっている。

まさに充実の季節を迎えている彼に、新作について、そしてライヴについて、語ってもらった。

取材・文=柴那典

シングル集みたいなアルバムを1枚出しても胸を張れない

―― 今回のアルバムは『斉藤』と『和義』という二枚同時リリースになりますけれども。このアイディアはどこから出てきたんでしょうか?

斉藤
そもそも2011年に『45 STONES』というアルバムを出して、その後に『やさしくなりたい』という曲を出してから、シングルが結構出てるんですよ。だからアルバムとしては、あともう2、3曲新曲が入れば一枚にはなるなっていうのはあって。でも、それだとシングル集みたいになっちゃうし、「新譜です!」って胸張れない気もするなと思って。どうしようかなと思いながら、今年1月ぐらいからレコーディングは常に入っていて、そこで大分曲も増えてきてたので、2枚作ろうと思ったんですね。

―― 最初の理由としては、シンプルに曲が沢山できたと。

斉藤
そうですね。ただ、2枚組にするのは量が多すぎて嫌だろうと思ったので。そこはシングルを集めたやつと、今年入ってからの新曲で固めるのとで2枚にしようと思って。

―― ここ2、3年、曲作りが非常に順調に進んだ結果であるという。

斉藤
順調ではなかったですけどね。ヒーヒー言ってやってますから。ただ、シングル集みたいなアルバムを1枚出しても胸を張れないし、お客さんから「手抜いてんな」とか「ズルすんじゃねえよ」とか思われそうだし。ツアーも控えてるので、ちょうどコラボで作りたいなっていう気分でもあったので、そういう実験的な気持ちもあって、作りましたね。

――『斉藤』の方はタイアップ曲も多いですよね。こういうタイアップでは、皆に愛される曲を書くことと自分の芯を貫くことを絶妙に同居させているような気がするんです。そういうことは意識されますか?

斉藤
確かにタイアップとかは多いですけど、作り方としては意外とドラマや映画のお題に対して作るっていうのは、目安があってわかりやすいんですよ。指名されたら嬉しいし、期待には応えたいと思うし、そのお題でどこまで行けるか挑戦しようと思う。それでむしろ自分が言いたかったことに近いことを書いたりもできるし。そんな感じでやっています。

歌詞のつもりで書いてなかったのが、チバ君にはそう見えていた

――『和義』の方には、ツアーメンバーとのセッションをはじめ、いろんな人とのセッションで作った楽曲が収録されていますよね。まず、いろんな人と一緒にやろうという発想はどういうところから?

斉藤
ぶっちゃけ、一人で2枚を作るのは大変だからみたいなところもあって。バンドメンバーと作った曲も3曲ぐらいあるんですけど、ツアーも同じメンバーで長いことやってて、気心も知れてるし、一部分だけできる曲を持ち込んでみようという感じで作ったりしましたね。

―― “恋のサングラス”でのThe Birthdayのチバユウスケさんとのセッションはどういう経緯で?

斉藤
チバ君とのやつはちょうどThe BirthdayとMANNISH BOYSでツアー回ってたので、その時すごく仲良くなったのもあって。彼はボーカリストとしてもすごいなと思ったし、曲もいい曲が沢山あるんですよね。それで「ちょっとチバ君、一緒に作ろうよ」って話になって。歌詞も一緒に書いて、楽しかったですね。

―― この曲はデモのようなものがあったんでしょうか? それともスタジオに一緒に入って「こんなのどう?」みたいな思いつきで作っていった?

斉藤
思いつきですね。お互い、時間が合うのも二日間ぐらいしかなかったんですよ。だから、なんとなくの出だしぐらいは俺のアイディアはありましたけど、本当になんとなくだけで。それをやって行くうちに曲があっという間にできて。歌詞も、言葉をただ羅列していたやつをチバ君に見せたら「これ、もうできてるじゃん」って言って彼が歌いだして。それがそのまま曲になったんですよ。自分だと歌詞のつもりで書いてなかったのが、チバ君の目からしたら、そう見えていた。最終的にはそこからいじったんですけど、目から鱗でしたね。

―― 一緒にやることでいろんな発見があった。

斉藤
ありましたね。チバ君のこだわり、俺のこだわり、それがすごくいい形に混ざったと思う。作ってる最中からめちゃめちゃ盛り上がってましたね。「これ、すげえいいじゃん!」って。

―― 中村達也さん、KenKenさんとの“Happy Birthday to you!”も収録されていますが、この二人とのセッションっていうのはどういう風に進んでいった感じなんですか?

斉藤
元々たっつぁんは一緒にやってますけど、KenKenとも一昨年くらいに、とある機会でジャムったりしたことがあったんですよ。「バンド名も付けよう」つって、「じゃあ“ドキドキ中毒”にしよう」つって。略して「ドキ中」って(笑)。その時のジャムが楽しくて、いつかこの三人でやろうねって話はしてて。その流れで今回来てもらいました。

―― じゃあ、これは完全にセッションで作っていった?

斉藤
そうですね。ただ集まって適当に皆でジャムって、「ここんとこ良かったね」っていうところをちょっとまとめて曲にしたんですけどね。二人が来てくれたの一日だけだったので、その日のうちに曲が完成した。後で俺がちょっと編集したりはしましたけど。

――『和義』の方にはツアーメンバーとセッションされた曲もいくつか入っていると思うんですけども、今の斉藤和義バンドのバンドメンバーというのは、一緒にやっていてどういうムードが生まれる面々なんでしょうか?

斉藤
バンマスやってくれてるベースの隅倉君(隅倉弘至)は、もう10年やってるし、キセルの豪ちゃん(辻村豪文)も、The Birthdayのフジケン(フジイケンジ)も、豊夢君(玉田豊夢)も、何年もやってるし。ツアーをやってる時は「斉藤和義」っていうソロ名義ではあるけど、自分はバンドのボーカルとサイドギターという感覚でもいるんですよ。付き合いも長いし、俺がどう行きたいかも皆なんとなく分かってくれているし。単純に歌いやすいですね。

―― 一つ一つの判断や感覚が通じあってる。

斉藤
そうですね。だから、「ここまで出来てるんだけど、この先なんかない?」って言った時に、自分ではそっちに行かないコードや展開になったりする。それも新鮮ですね。あとは、次のツアーからキーボードで高野君(高野勲)に入ってもらうんですけど、彼はちゃんと音楽理論を分かっている人だから、いろいろ発見もあるし。何しろ早いですね。

“かげろう”は7、8回書き直した

―― シングルとしてもリリースされた“かげろう”についても訊ければと思います。これは映画『潔く柔く きよくやわく』の主題歌でもありますが、これは先ほど言っていたような「お題」として、どういう風に作っていったんでしょうか?

斉藤
これは今回の2枚の中でも一番時間がかかった曲なんですね。まず、映画のエンディングでかかるっていうことがあって。脚本を頂いて、原作も全部読んで、そうしたらすごくテーマが深い話だった。だから、締めに相応しい曲というイメージを持って作っていって。特に歌詞にはえらい時間がかかりましたね。7、8回書き直しました。

―― ここは苦労したとか、このラインは中々出てこなかったみたいなのってありますか?

斉藤
いや、もう全部です。映画に沿ったものにすることもないなと思いつつ、やっぱりリンクしてたいとは思ってたので。だからこれが一番大変でしたね。

――『和義』収録の“カーラジオ”はどうでしょう? FMの「JAPAN FM LEAGUE」の20周年ソングとしては、非常にストレートにお題に答えた曲だと思いますけれども。

斉藤
“カーラジオ”に関しては、「“ラジオ”ってワードはできれば入れてください」っていうリクエストが先にあって、そこから膨らんでいったんです。あれはオケが先にできたんですよ。それも久しぶりにストラトキャスターを買ったことがきっかけで。ここのところレスポールとかが多かったので、ストラトを久々に買って、それが嬉しくてスタジオでギターを弾いてたら浮かんできたフレーズで。そこからできていった曲です。

―― スタート地点はシンプルにギターリフから膨らんでいくんですね。

斉藤
大体そうですけどね。その時に買ったばかりで自分の中でブームのギターを使いたいから弾くという。あとは、このアンプ買ったからこれ鳴らしたいなとか。本当そのために楽器買うようなとこもあったりして。その音色に呼ばれて出てくるフレーズっていうのもあるので、そっから膨らんで曲になっていく感じですね。

ライヴは唯一ナチュラルハイになれるところ

―― 来年にかけてのツアーの話も訊ければと思います。55都市62公演という過去最大のツアーが決まってるわけですけども、どういうツアーになりますか?

斉藤
まだぼんやりとしかイメージしてないですけどね。もちろんアルバムが中心だとは思うんですけど、長いし、アルバムも2枚出してるから、それだけ全部やればいいってもんでもないだろうし、いろんなパターンができると思いますね。メンバーはいつものメンバーに新しくキーボードで高野君が入るので、できることも沢山ありそうだし。

―― 先日のアニバーサリーライヴも「しんどい」って言いながら3時間半やり切っていて。ここにきて、ミュージシャンとしてさらにタフになっている、体力が増しているようなイメージもあるんですが。

斉藤
いや、体力はなくなってますね(笑)。ちょっと鍛えた方がいいのかなって、こないだふと思いました。でも、ライヴの体力ってライヴでしか養えない気もするし。でも、50代になったらそんなことも言ってられないのかなとも思ったりするんですけど。

―― ミック・ジャガーとか、50代になってからさらにエネルギッシュになってるロックミュージシャンっていますよね。斉藤和義さんもそうなりそうな気がします。

斉藤
いや、でも今挙げたような人達はちゃんと鍛えてそうですからね。でも、鍛えるの嫌いなんですよ(笑)。なるべくそこは楽したいんですけど。

―― わかりました。最後に、これは大きな括りの話として「斉藤和義にとってライヴとは何か?」ということを訊ければと思うんですけれども。

斉藤
これは前から言ってるんですけど、例えリハーサルを100回やったとしても、一回ライヴやってみないと何もわからないとこがあって。自分の演奏だけをただ披露すればいいってものでもないし、そこに来てくれたお客さんとのぶつかりあいみたいなところもあるので。それによって同じ曲をやっても違う感じになるし、その日の自分の気分や体調でも変わってくるし、本当に生き物って感じがしますね。

―― 同じ曲をやっても、毎回違う感じがあるような?

斉藤
そうですね。何回やっても同じにはならないので、その変わってく感じがツアーをやってると楽しいし。スタジオで曲を作って、その青写真がツアーをやっていく中で進化して、終わる頃にアルバムが完成したって気分になるんですよ。そういうこともあるし、なんせ、精神衛生上一番いいですね。

―― 何より自分を解放できる場所でもある。

斉藤
そうですね。何とも言えない万能感みたいのがずっと続くのもあるし、何よりミュージシャンは演奏して回ってるっていうのが一番健全な姿だと思うし。ツアーをやっていると気分はいいですね。

―― 下ネタ含めてあそこまで愛され続けている場所って他にないですよね。

斉藤
下ネタは、後でライヴ聴き返すとそこが情けないですけどね。「馬鹿じゃないの!」と思って、そこだけ聴き飛ばす(笑)。

―― 斉藤和義さんの中にはいろんな側面、いろんなご自分がいらっしゃると思うんですけど、ステージの上にいる「斉藤和義」ってご自分の中ではどういう自分なんでしょうか。

斉藤
自分でもよくわかんないけど、普段はね、あんなにテンション上がることもないので。唯一ナチュラルハイになれるところ。それが自分でも面白いですね。

―― 万能感がある。

斉藤
「何でも出来るぞ」みたいな気分になれるというか。そういう感じが楽しいし、単純に爆音を出せるっていうのも楽しいし。家だとやっぱりそんなにデカい音出せないし。楽器が好きなんで、楽器本来のいい音で出せるっていう場ということもデカいですね。

―― なるほど。何より気持ちよくギターを鳴らせる場所ですもんね。

斉藤
そうそう。それが楽しいですね。アンプとの相性の組み合わせとか、新しく買ってきたエフェクターも試せるし。そういうのも楽しみなんですよね。バンドメンバーもそういうの大好きな連中ばっかりだから、ほとんど楽器自慢にきてるみたいな感じだったりします(笑)。

斉藤和義

デビュー20周年となる2013年、アニバーサリーライブを神戸ワールド記念ホール、さいたまスーパーアリーナで敢行。
第1弾シングル「ワンモアタイム」、第2弾シングル「Always」(PENTAX K-50 CMタイアップ曲)、第3弾シングル「かげろう」(10/26公開映画「潔く柔くきよくやわく」主題歌)を立て続けにリリース。
そして、10/23にはアルバム「斉藤」と「和義」を2作同時リリースし、史上最長・最多となる55都市62公演となるワンマンライブツアーを行う。

www.kazuyoshi-saito.com/


16thアルバム『斉藤』

2013年10月23日(水)発売
VICL-64120 / 2,980円(税込)

[収録曲]
01. やさしくなりたい
02. Hello! Everybody!
03. ワンモアタイム
04. メトロに乗って
05. 罪滅星
06. 今夜、リンゴの木の下で
07. ひまわりの夢
08. パズル
09. かげろう
10. 月光

17thアルバム『和義』

2013年10月23日(水)発売
VICL-64220 / 2,980円(税込)

[収録曲]
01. カーラジオ
02. 恋のサングラス
03. Cheap & Deep
04. Happy Birthday to you!
05. 流星
06. MUSIC
07. 天使の猫
08. Always
09. それから
10. メリークリスマス

■斉藤和義バブルヘッド人形付き限定セット:VIZL-920 / 7,500円
※ アルバム2タイトル+バブルヘッド人形を10,000セット限定で販売

20周年第3弾シングル
『かげろう』

2013年10月16日(水)発売
※10,000枚限定生産
VIZL-820 / 680円(税込)

1. かげろう
※映画「潔く柔く きよくやわく」主題歌

■エッセイ『斉藤和義本』

2013年10月23日(水)発売予定
価格:1,575円(税別)


<TOUR INFORMATION>

KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2013-2014 “斉藤&和義”

10月26日(土) 埼玉・サンシティ越谷市民ホール (大ホール)
10月27日(日) 埼玉・サンシティ越谷市民ホール (大ホール)
10月30日(水) 神奈川県民ホール 大ホール
11月01日(金) 石川・本多の森ホール
11月03日(日) 名古屋国際会議場センチュリーホール
11月04日(月) 名古屋国際会議場センチュリーホール
11月08日(金) 福井フェニックス・プラザ
11月10日(日) 新潟県民会館
11月14日(木) 仙台サンプラザホール
11月15日(金) 岩手・奥州市文化会館 (Zホール)
11月21日(木) 札幌市民ホール
11月22日(金) 札幌市民ホール
11月24日(日) 北海道・北見市民会館
11月29日(金) 広島・ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ 大ホール
11月30日(土) 山口・防府市公会堂
12月02日(月) 岡山・倉敷市民会館
12月07日(土) 秋田県民会館
12月08日(日) 岩手・盛岡市民文化ホール
12月10日(火) 福島・郡山市民文化センター 大ホール
12月11日(水) 群馬・ベイシア文化ホール 大ホール
12月20日(金) 福岡・サンパレス ホテル&ホール
12月21日(土) 福岡・サンパレス ホテル&ホール
12月23日(月) 長崎・ブリックホール
12月25日(水) 熊本・市民会館崇城大学ホール (熊本市民会館)

■2014年
01月10日(金) 鳥取・とりぎん文化会館 梨花ホール
01月12日(日) 広島文化学園HBGホール (広島市文化交流会館)
01月13日(月) 広島文化学園HBGホール (広島市文化交流会館)
01月15日(水) 高知県立県民文化ホール オレンジホール
01月22日(水) 奈良・なら100年会館 大ホール
01月23日(木) 滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
01月25日(土) 和歌山県民文化会館 大ホール
01月29日(水) 山口・下関市民会館 大ホール
01月31日(金) 宮崎市民文化ホール
02月01日(土) 鹿児島市民文化ホール 第1ホール
02月07日(金) 宇都宮市文化会館
02月08日(土) 群馬・桐生市市民文化会館 シルクホール
02月15日(土) 日本武道館
02月16日(日) 日本武道館
02月23日(日) 徳島・鳴門市文化会館
02月25日(火) 神戸国際会館こくさいホール
02月26日(水) 香川・アルファあなぶきホール 大ホール
02月28日(金) 島根県民会館 大ホール
03月06日(木) 静岡市民文化会館 大ホール
03月08日(土) 三重県文化会館 大ホール
03月09日(日) 岐阜・長良川国際会議場 メインホール
03月15日(土) 富山オーバード・ホール
03月16日(日) 長野・ホクト文化ホール
03月20日(木) 長崎・アルカスSASEBO 大ホール
03月22日(土) 佐賀市文化会館 大ホール
03月23日(日) 大分・iichikoグランシアタ
03月25日(火) 愛媛・宇和島市立南予文化会館 大ホール
03月29日(土) 秋田・湯沢文化会館
03月30日(日) 山形・酒田市民会館「希望ホール」
04月04日(金) 千葉・市川市文化会館 大ホール
04月06日(日) 山梨・コラニー文化ホール (山梨県立県民文化ホール)
04月13日(日) 函館市民会館 大ホール
04月15日(火) 苫小牧市民会館
04月17日(木) 旭川市民文化会館 大ホール
04月19日(土) リンクステーションホール青森
04月25日(金) 大阪城ホール
04月26日(土) 大阪城ホール
04月29日(火) 沖縄コンベンション劇場

インタヴューArchives