対談 山口一郎(サカナクション)×津野米咲(赤い公園)

これはMUSICA10月号で、山口一郎が毎月連載をしている「珍事砲弾」用に行われた対談である。山口から「若手とフラットに話し合いをしてみたい」という要望があり、考えた結果、赤い公園のリーダーでありギタリストでありソングライターである津野にお願いをしてみたのだ。

津野と山口の共通項はそんなにあるわけではない。強いて挙げれば、2人ともSMAPに曲を提供し、それがシングルの表題曲になったことがあるぐらいだ。

それより2人の音楽に対する純粋さと執念に近い何か、そこから溢れこぼれるからこそ生まれる「今」という感覚。この対談を読んで、サカナクション『sakanaction』、そして赤い公園『公園デビュー』を聴いてみて欲しい。ここまで音楽と今のことを考え生きているアーティストの音楽が、何故ポップミュージックの新しい指針になるのかが、感覚としてわかるだろう。

取材・構成=鹿野 淳

津野
初めまして。楽しみにしてました、よろしくお願いします!
山口
いや、こちらこそ初めまして。90年代のアーティストが好きなんだって?
津野
そうなんです。マッキー(槇原敬之)とか、ユーミン(松任谷由実)とか、小田(和正)さんとか好きで。凄い聴いてました。
山口
ピチカート・ファイヴとかは?
津野
大好きです。お母さんが凄い好きで。
山口
そっか(笑)。21歳だもんね、若いよね。
津野
いやいや。新しいアルバム『sakanaction』聴かせてもらったんです。新しいアルバムももちろんよかったんですけど、私やっぱり“セントレイ”が1番好きで。
山口
へぇー!
津野
新しいアルバムは“intro”でやられました。『これやる?』って思って(笑)。“セントレイ”は完璧ソングです。
山口
あの曲を、ポップスとして聴いてる?
津野
そう思います。あの頃、たぶん高校生で、軽音でバンドやり始めたけどバンドものをあんまり聴いてなかったんですよ。けど“セントレイ”は聴けたんですよね。実はSWEET LOVE SHOWERに行って、観たんですよ。魚のタオルも買いました(笑)。
山口
はははははは、懐かしいね。僕も聴かせてもらいました、アルバム『公園デビュー』。“今更”って曲が凄い面白かった。頭いいなぁって思った。
津野
頭よくないですよ。偏差値40の学校通ってましたから。
山口
頭がいい悪いって、音楽の世界ではそういうことじゃないでしょ。津野さんが作る曲って、ちゃんと引きもあるし、深みがあって、曲として何を斬るんだろうって感じもある。楽器の音も凄くいいね。さっきも話したけど、凄いピチカート・ファイヴの臭いがした。メロディの感じとか、ヴォーカルの歌い方もそうかな。なんか、バンドっていう感じがしなかったんだよね。
津野
わかります。私、バンドじゃなくても、全然成り立つような曲を、ヴォーカルも楽器持たないで、ギター1本で、ベース、ドラムだけで成り立つというか、そういうのやりたいんです。だから本来、バンドじゃなくてもいいんですよね。……昔、吹奏楽やってたんですよ。
山口
楽器はなにやってたの?
津野
サックスです。それで吹奏楽のアレンジ凄い好きで。たとえばサックスが1曲の内に、前半が下位旋律というか第2メロディに回っているのに、途中で主旋律に代わって、最終的にベース音みたいになるっていう。1個の楽器で、入れ替わったものが、上手いこと折り重なって1曲になってるのが凄い好きで。
山口
ビッグバンドみたいな?
津野
そうですね。それをやりたいなって思ってはいますね。でもこの発想で作る曲のメロディ、凄く歌うの難しいと思います。
山口
その発想で耳に残るものを作るの難しいよね?
津野
凄い難しい。だから歌詞に頼ったりとか……簡単そうに歌ってもらうとか。そういう小技を使ってますね。

山口一郎(サカナクション)×津野米咲(赤い公園)


山口
SMAPに曲作ったよね。それも聴いたよ。
津野
あ、本当ですか!?
山口
菅野よう子さんが関わってるんだよね?
津野
はい。私も一郎さんがSMAPに作った曲を聴きました。
山口
ありがとう。津野さんが作ったの、凄く『らしい』曲だったね。
津野
SMAPらしい曲ってことですか?
山口
いや、凄い赤い公園らしい曲だった。
津野
嬉しいです。そう言ってくださる方、あんまりいないですよ。
山口
実際には、SMAPっぽく合わせて作ったの?
津野
そのつもりでしたね。往年の、たとえば“KANSHAして”とか、“オリジナル スマイル”とか。
山口
メロディの飛び方なのかな。Aメロ、Bメロとかっていう概念があるのかはわからないけど、赤い公園を聴くとその飛び方が凄い独特って思った。曲はサビから作る? それとも頭から?
津野
どっちもありますね。イントロ、間奏からってこともあるし。“今更”はAメロからです。
山口
そうなんだ、凄いね。今21でしょ? ヴォーカルの子とか全然そうは見えないね。
津野
26歳OLって言われてるんです(笑)。こないだOKAMOTO’Sにショムニって言われてた(笑)。
山口
バンド以外の音を、曲に入れるってあんまり抵抗はないの? たとえばシンセとかさ。
津野
今まで入れ過ぎてて、ディレクターに怒られました。もうちょっと情報量を減らそうって。でもそれは結果的に、今の段階では合ってたと思います。歌に耳がいくようになったんで。
山口
そうだね。楽しみだね、これからが。
津野
そうですね。でも……最近だんだん、赤い公園は他にないって言ってくれる人が多くて、他にないものを作らなくちゃっていうのが、点灯してきちゃって。『これは違うなぁ』って思い始めていて。
山口
難しくなりすぎちゃうとか?
津野
そうですね、変に捻くれちゃったりとか、いい曲であるっていう前提がなくなってきちゃったりとか。今は、ギターはギターの音域にいて、ベースはベースの音域にいて、わかりやすいドラムの名曲を作りたいってのが目標です。
山口
自分もそういう気持ちになる時があるけど、そういう曲は大抵シングルにならないからさ。
津野
ならないです(笑)。けどそこは自己満足な部分でいいと思ってて、作れるっていう自信が欲しいんですよね。
山口
でもまだ焦んなくていいんじゃない?
津野
ははははは、参考にします!
山口
俺20〜21の時なんて、ずっとアルバイトしながら釣りばっかしてたよ。
津野
釣り好きなんですね。釣りやったことないなぁ……。
山口
これからはさ、やりたくないことをやらなきゃいけない瞬間もいっぱいあると思うんだよね。そういう時にどう乗り越えるかとかさ。そこによってバンドの未来が変わるじゃん。
津野
そうですよね。
山口
そこが凄い苦しいと思うけど、若いうちからこんな世界でこんな経験できてるの羨ましいなぁって思うよ。……俺の一回り下でしょ? 凄いなぁ……。
津野
ちっちゃい頃から、父の影響もあって趣味も音楽しかなくて。
山口
一緒だ、俺と。
津野
できることも音楽しかなくて。
山口
それも一緒だ。

だけど一郎と違って、米咲は友達多いから(笑)。

津野
最近私頑張ってるんですよ。
山口
……別に頑張る必要ないもん。友達いると作るものって変わる?
津野
変わんないですけど……友達がいて、損はないです。
山口
そっか…………まあいっか。
津野
あとは、予期せぬ時に予期せぬ話を聞けたりとか。そういうとこですね。
山口
それはいいなぁ………。
津野
……友達いないんですか?
山口
ほぼいないね。でもいないから、このペースでやれてるのもあるかな。いたらやっぱ頼っちゃうもん。音楽大好きなんだね。
津野
逃げ場がないです、音楽から。他に趣味がなくて……1回ルービックキューブにハマったんですけど、すぐ攻略しちゃってそれ以来趣味がないです。
山口
ピアノで曲作るって凄いね。
津野
楽しいですよ、凄い。
山口
いろいろと飛びそう。
津野
飛びますね。コードもめちゃくちゃになっていくし。
山口
その感じわかる。だから、『いつのまにか、サビだ!』みたいな感じする。
津野
あといつの間にか終わってくんですよ。曲が短いんで。
山口
情報量が凄い多いよね。槙原さんとか、90年代の米米CLUBとかってさ、情報が凄く少ない気がするんだよね。
津野
そうですね。
山口
俺らさ、俺が作ったものをメンバーで合わせていくんだけど、みんなやっぱり変にしたいんだよ。ストレートにしたがらないんだよね。そこでグルっと回ってストレートになることもあるんだけど、その過程でいろんな変なものがこびりついてきててさ。で、もう1回頭からに戻るから、最初からドンって出したものとは違うんだよね。その違和感が、俺らの中のバンドらしさってものな気がしてて。人間臭いしさ。そういう自分達ではイメージしてない自分らしさみたいなものって、対外的に出てくるはずなんだよね。それが見えてくると、結構楽になるかもね。
津野
それ楽しみです。今までで1回だけ、赤い公園らしいって思ったことがあって。アルバムの前に、シングルを出したんですけど、そのカップリングで小田和正さんが2009年に出した“さよならは 言わない”のカヴァーをしたんですよ。そこで自分達でアレンジして、最初のサビがアカペラになったんです。そのアカペラを聴いた時に、『あ、凄い赤い公園らしい』って思ったんですよね。楽器入ってないんですけどね。
山口
生々しいね。これからだね、本当に。
津野
そうですね。SMAPさんが決まったお祭り騒ぎみたいなものがこの夏で一段落して、このチャンス無駄にしたらバカだなって思うんですよ。
山口
そんなことないって。十分やれてると思うよ。
津野
なんか焦りもあって。けど、アルバムは自分達でも凄い納得のいくものにはなったので、ここからどうしていくかっていうところですね。
山口
俺がたとえばSMAPとかに曲作る時って、サカナクションっていう人達に曲を書いてるイメージなのね。だから、自分のために書く曲とサカナクションのために書く曲って違って。サカナクションのためっていう、マインドでSMAPに向けても書いたから――。
津野
だからだ! “MOMENT”聴いたら、『あぁサカナクションの曲だ』ってわかるっていうことはそういうことですね。
山口
オリンピックの曲を書いた時は、なんかダイジェストとか総集編とか、あとはCMに行く前にちょっと流れるとか……そういうことをイメージしながら戦略的に書いたかな。
津野
私はまだ新人の特権だからかもしれないですけど、色もついてないじゃないですか。あと、SMAP大好きだし、自分が赤い公園だなんてことは、完全に忘れてましたね(笑)。純粋に楽しく書けて、本当にルンルンでした(笑)。
山口
これから凄いいろんなことあるよ。今までテレビで観てた人と話したり、知り合いになったりするわけじゃん。そうなると、自分を見失ったりするし。そもそも20代前半からきっと24ぐらいまでが感受性のピークだと思っててさ。25になってくると、エモーションをコントロールできなかったのが、落ち着いてきちゃうんだよね。だから、これからが凄く多感な時期だと思うから、今はいろんな出会いをいっぱいして、いろんなものを手に入れといたほうがいいかもね。俺の場合はその頃、ずっと釣りばっかして、自然からエネルギー得てて。
津野
それはそれでいいと思いますけどね。

サカナクション


■『SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction -LIVE at MAKUHARI MESSE 2013.5.19-』


2013年11月13日(水)発売
・Blu-ray初回限定盤
 VIXL-119 / 5,800円
・Blu-ray通常盤
 VIXL-120 / 4,800円
本編音源は2chステレオ音源(96kHz 24bit)、5.1chサラウンド音源(96kHz 24bit)、バイノーラル音源(96kHz 24bit)の3種類の音源で収録
※一部音声収録フォーマットにドルビーTrueHDを採用。

<Blu-rayのみ特典映像>
・VISUAL REMIX 「『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』-SAKANAQUARIUM 2013 VERSION-」remixed by LAPTHOD
・SAKANAQUARIUM 2013 sakanaction -LIVE at OSAKA-JO HALL 2013.5.22-〜4K shooting & binaural recording〜
※一部音声収録フォーマットにドルビーTrueHDを採用。

DVD初回限定盤:VIBL-688 / 4,800円
DVD通常盤:VIBL-689 / 3,800円
本編音源は2chステレオ音源(48kHz 24bit)、バイノーラル音源(48kHz 24bit)の2種類の音源を収録

<Blu-ray、DVD初回限定盤共通特典>
・特殊パッケージ仕様、豪華104Pブックレット封入

<初回限定盤のみ>
SAKANAQUARIUM2014
“SAKANATRIBE”チケットweb先行抽選予約用シリアルナンバー封入
(受付期間 : 2013.11.13(水) 12:00 - 2013.11.25(月) 23:59)

[ 収録楽曲 ]
01. INORI
02. ミュージック
03. M
04. アイデンティティ
05. ルーキー
06. multiple exposure
07. mellow
08. ボイル
09. アルデバラン
10. なんてったって春
11. ホーリーダンス
12. 僕と花 -SAKANAQUARIUM 2013 VERSION-
13. 『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』-SAKANAQUARIUM 2013 VERSION-
14. ネイティブダンサー -SAKANAQUARIUM 2013 VERSION-
15. アルクアラウンド
16. アドベンチャー
17. Aoi
18. 夜の踊り子
19. ストラクチャー
20. ナイトフィッシングイズグッド
21. 朝の歌
22. 映画


2013年10月23日(水) 3作同時発売
■『SAKANARCHIVE 2007-2011 〜サカナクション ミュージックビデオ集〜』

Blu-ray:VIXL-116 / 3,800円
2011年12月14日にリリースされたMUSIC VIDEO集のBlu-ray化作品。Blu-ray化にあたりDVDよりも高画質化、音質もドルビーTrueHD・アドバンスド96k アップサンプリングを採用し、高音質化を実施。

■『SAKANAQUARIUM 2010 (B)』

Blu-ray:VIXL-117 / 4,200円
2010年10月8日に行われたサカナクション初の日本武道館公演「SAKANAQUARIUM 21.1(B)」をBlu-ray化。Blu-ray化にあたりDVDより高画質化、音質もドルビーTrueHD・アドバンスド96k アップサンプリングを採用し、高音質化を実施。

■『SAKANAQUARIUM 2010 (C)』

Blu-ray:VIXL-118 / 4,200円
4th ALBUM「kikUUiki」を携えた全国ツアー「SAKANAQUARIUM 2010“kikUUiki”」ファイナルである2010年5月15日新木場STUDIO COAST公演をBlu-ray化。Blu-ray化にあたりDVDより高画質化、音質もドルビーTrueHD・アドバンスド96k アップサンプリングを採用し、高音質化を実施。

< TOUR INFORMATION >
「SAKANAQUARIUM2014 “SAKANATRIBE”」
1月23日(木) 東京 ZEPP TOKYO
1月23日(金) 東京 ZEPP TOKYO
1月29日(水) 大阪 ZEPP NAMBA (OSAKA)
1月30日(木) 大阪 ZEPP NAMBA (OSAKA)
2月01日(土) 広島 上野学園ホール
2月02日(日) 香川 サンポートホール高松
2月07日(金) 仙台 “東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)
2月08日(土) 仙台 “東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)
2月11日(火) 石川 金沢市文化ホール
2月15日(土) 札幌 ZEPP SAPPORO
2月16日(日) 札幌 ZEPP SAPPORO
2月25日(火) 名古屋 ZEPP NAGOYA
2月26日(水) 名古屋 ZEPP NAGOYA
3月01日(土) 新潟 新潟テルサ
3月07日(金) 福岡 ZEPP FUKUOKA
3月08日(土) 福岡 ZEPP FUKUOKA
3月11日(火) 東京 ZEPP TOKYO
3月12日(水) 東京 ZEPP TOKYO

チケット:前売り 6,000円(D代別)
※広島、香川、仙台、石川、新潟公演に関してはドリンク代は不要です。

sakanaction.jp


SAKANAQUARIUM2013 sakanaction

SAKANAQUARIUM2013 sakanaction in Taiwan

赤い公園

1stフル・アルバム
『公園デビュー』


2013年8月14日(水)発売
・初回限定盤(CD+DVD)
 TOCT-29184 / 3,500円(税込)
・通常盤(CD)
 TOCT-29185 / 2,800円(税込)

[ 収録楽曲 ]
01. 今更
02. のぞき穴(Album Version)
03. つぶ
04. 交信
05. 体温計
06. もんだな
07. 急げ
08. カウンター
09. 贅沢
10. くい

[ 初回限定盤DVD収録内容 ]
5月5日大復活祭@渋谷CLUBQUATTRO映像(part.2)
1. 何を言う
2. 公園
3. 急げ
4. もんだな
ドキュメンタリー映像「情熱公園」


< TOUR INFORMATION >
赤い公園ワンマンツアー2013
「いざ、公園デビュー〜トトトツーツーツートトト〜」

10月26日(土) 仙台LIVE HOUSE enn 2nd
11月03日(日) 広島CAVE BE
11月04日(月・祝) 福岡DRUM SON
11月08日(金) 大阪Shangri-La
11月15日(金) 名古屋APOLLO THEATER
11月23日(土) 東京キネマ倶楽部

akaiko-en.com


インタヴュー | 赤い公園

インタヴューArchives