NEXUS特別対談 TOSHI-LOW(BRAHMAN)×磯部正文(HUSKING BEE)[後編]

HUSKING BEEが『SOMA』、BRAHMANが『超克』。それぞれのバンドに取ってかけがえのない、再出発のアルバムが2月20日同日にドロップされる。
 ハスキンは昨年、まさかの再始動を果たし、それが期間限定ではないものであることを、このアルバムではっきりと証明した。
 ブラフマンも過去曲の再レコーディングアルバムや、数々の伝説的なライヴ、そして震災以降のパンクバンドの無心の復興活動の先頭を走り続けながらも、オリジナルアルバムとしては5年振りのアルバムをようやく示せた。
 その両バンドは、1990年代後半からのこの国のロックの最大級の革命であったパンクムーヴメントを牽引したハイ・スタンダードの背中を必死に追いかけ追い越せと走り続けてきたバンドであり、そのムーヴメントの主役の座にいた数少ない存在である。彼らが今、再び同時に歩を進める、その偶然に必然を感じる者は少なくないだろう。
 TOSHI-LOWと、いっそんこと磯部正文。お互いのバンドのフロントマンがどんな言葉を交わし合うのか? ストリートロックの革命者らしく、リアルな物言いに徹した対談を楽しんで欲しい。
 あの時代を熱く疾駆し続けた者にも、これからロックを楽しもうとする者にも、確かな言魂が感じられる名対談になっていると思う

取材・文・撮影=鹿野 淳 構成・インタヴュー撮影=柴 那典

対談の前編はこちら

痛いですよ。痛いほど悔しかった(磯部正文)

――2005年にはハスキング・ビーは解散をしてしまうわけですけれども。そこでTOSHI-LOWはどういう風に思ったんでしょうか。「ふざけんな!」って電話しなかったの?

TOSHI-
LOW
まあ、理由もわかってたからね。けど、なんだろう、やっぱりハスキンの解散は爪が剥がれるぐらい自分も痛かったな。やっぱり同じ世代を過ごしてたし。で、2005年ぐらいで、予想していた現実がやっぱり来るじゃない? 一気にみんな上手く行かなくなって行くんだよね。俺はずっとそんなの意識しないでやってたつもりなんだけど、「はい、前の世代の人」みたいな流れが来るわけよ。

――それは例えば青春パンクって言われてる人たちが登場したとか、そういうのと関係ある話なの?

TOSHI-
LOW
まあ、それも含めて2000年以降の全体的な流れだよね。でもやっぱり、2005年ぐらいに顕著に感じたな。「ああ、時代っていうものがあるとすれば、それが本当に終わるんだな」っていうのを感じたというか。「俺らはそういうの関係ないから」って言いつつもさ、やっぱり90年代の人っていう扱いをされて。「あれ? 俺そこの席だったんじゃないの?」みたいに思ってても、「下がってください」みたいな感じになってくるじゃん。雑誌の上の方に名前があったものが、いきなりなくなってて、別のバンドに入れ替わっていくわけよ。そういう時にハスキンが解散だったから、余計にダメージがデカかったんだよね。頑張ってほしいって思ってたし。でも、地方でライヴに人が入らなくなってきたり、陰りが見えてたから。現実だなって思いつつ、痛かったね。

――悔しかったんだね。

TOSHI-
LOW
うん。

――ハスキンも、断腸の想いで終わっていったんだよね。

磯部
うん。まあ、本当にそうせざるを得ない状況だったんです。でも、おこがましくも、自分たちの同世代のシーンにハスキンは欠けてはならないと思っていたので。それを止めるわけじゃないですか。だから「みんなは頑張ってくれ!」とか思ってたんですよ。けど、TOSHI-LOWの言うように時代の変化もあるでしょうし、新しい世代のバンドの勢いもあるでしょうし、いろんなバブルが弾けたり、音楽がデータ化したことによる問題もあったし、いろんなことがのしかかってきてる時代でしたから。大きなバランスを崩してしまったという想いはありますね。ハスキンが解散した後に解散したバンドも沢山いたし……。
TOSHI-
LOW
確かにハスキンが心の支えだったり活動の指標にしてたところはあるよね。ハスキンがダメだったら、ウチもダメだろうって思ったバンドが多かったんだと思う。

――ダムを決壊させちゃったんだ。

磯部
そう。バンドシーンからハスキンが欠けたことによる影響を目の当たりにして。できることなら、自分だってバンドを続けてシーンを活性化したかったから――。
TOSHI-
LOW
もう、解散の理由を明確に記事に残したほうがいいんじゃないの? 鹿野、聞いて書いちゃえよ。

――でも、それは難しい話だよね。

磯部
まあ(笑)、あの当時は99%くらい理由をちゃんと言った方がいいと思ってたんですよ。こういうことがあるんだっていうのを伝えたほうがいい、と。でも、いろんな人に相談したら、絶対言わないほうがいいと言われた。そういう気持ちの悪い理由で解散しましたしね。ハスキンのイメージ自体も悪くなるし、言わないでほしいって。……悔しいですよ。痛いほど悔しかった。葛藤はありましたよね。でも今となっては、解散理由を言わなくてよかったという結果に至ってるんですけど。

――例えば、レオナくんとか、今何をやってるの?

磯部
わからないです。全然。

――そっか、なんか言葉に詰まるよね、ごめん。

TOSHI-
LOW
別にいいんじゃないの? テッキンが何をやってるのかを訊くのと一緒でしょ? だってさ、テッキンだってシャブ止められないじゃない?

――はははははは、何を言うんだお前は。

TOSHI-
LOW
これは載せてもいいよね?(笑)。

磯部
うん。“(笑)”付きでお願いします(笑)。
NEXUS特別対談 TOSHI-LOW(BRAHMAN)×磯部正文(HUSKING BEE)

情念は俺なんかよりあると思うんだよ。中に渦巻いて、燃えるものが(TOSHI-LOW)。

――話を進めます。2007年にはハスキンのトリビュート・アルバムがリリースされますよね。TOSHI-LOWはブラフマンとOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDと両方で参加してますけれども。

TOSHI-
LOW
でもさ、俺ら自体もあの頃はすごい迷ってたというか、時代のバイオリズムに乗っていない時期だったから。ハスキンのトリビュートをやるのは大変だった。どうしていいかわからなかった。自分たちに自信もないのに、なんで人の曲をカヴァーできるんだろう?みたいなのがあって。

――それはブラフマンにしてもOVER〜にしても?

TOSHI-
LOW
OVER〜のほうが、逆にシンプルにできたかな。あの頃はまだアコースティックというものを触ったことがなかったから、楽しかったし。ブラフのほうは、今聴くと、もうちょっとやりようがあったって思うな(笑)。その時は一生懸命やったつもりだったんだけど。

――いっそんは、あれを聴いてどう思いました?

磯部
僕はもう、全バンド同じように、最高に嬉しかったです。参加してもらって、自分たちの持ち味で曲が変化するのを感じて。自分の曲を客観的に見ることこともできましたから。「嘘みたいだな!」って思いましたね。

――当時のディスクレビューにも書いたんですけど、あの頃はトリビュート盤が多かったんですよね。でも、ハスキンのトリビュートは群を抜いてよくできてる作品だった。その理由は、気持ちでやってる人が多かったからだと思う。無償の愛のようなものが出ている曲ばっかりだったと思うんですけれども。あれは、時代を共有してきたもの同士の特別な想いが乗っている感じがしましたけどね。

TOSHI-
LOW
そうだね。あれはもう、いっそんのためだけにやった気がする。あのジャケのまんまだよね。………もう一回やりたいな。今だったらもっとやれる気がする。もう一回やらせて(笑)。

――ははは。TOSHI-LOWは“THE SUN AND THE MOON”と“SUN MYSELF”をカヴァーしてるわけですけど、あれは自分で曲も選んだんですよね。

TOSHI-
LOW
“THE SUN AND THE MOON”は、それがまだ無いって言われたときにすごく嫌だったんだよね。絶対に聴きたいと思ってた曲だから。

――ああいう、月とか太陽に想いを馳せて、人間の生きていく力とか虚しさを表現している部分は、お互いの作る歌詞に共通していると思うんです。TOSHI-LOWにとって、いっそんの歌詞の世界とかに共感している部分とかはありますか?

TOSHI-
LOW
でも、2個年上だから、いつもその時点ではわからないんだよね。喋り口調の歌詞とかをいっそんが始めたときも、俺は「何それ?」って思うわけ。もうちょっと言い切ったりカッコつけなきゃダメじゃんって。でも、その何年後にわかる。基本的に、あのキャラクターだから見えづらいけど、その裏に何があるんだよね。

――そうだよね。心象風景とか。

TOSHI-
LOW
情念なんかは、むしろ俺なんかよりあると思うんだよ。中に渦巻いているものか、燃えるものが。でも、いつも、その瞬間にはわからないんだ(笑)。「なんだよいっそん!」とか思うんだけど、後からくるんだよね。こないだ車で『variandante』聴いてたんだよ。「あ、いいじゃん」って。今頃だよ? どれだけ遅いんだ!っていう(笑)。
磯部
市川くん(LOW IQ 01)と同じだね。市川くんも『variandante』聴いて、「こんなもん作ってんなよ」みたいに、「前のハスキンの感じを出してこいよ」って思ってたと思うんだよね。でも僕は、その時すごくこれを出したくて。先のためにこれを作りたいってところがあって。でも、市川くんに聴かせたら、あからさまにクソ面白くなさそうで(笑)。帰り際に「わかった、10年早いんだと思うことにする」って(笑)

――はははははははは、何てイッチャンらしいエピソードだ。

磯部
(笑)でも、あのアルバムは今聴き直してもひねくれてるなって思う。悔しいことが沢山ある中で、それでもポップに聴こえるように、がむしゃらに作ったアルバムだから。
TOSHI-
LOW
あんまりいい印象なかったから聴けないかなって思ってたんだけど、こないだ聴いて思ったんだよね。「ああ、いいアルバムじゃん!」って(笑)。

TOSHI-LOWは男の子なんだと思う(磯部正文)

――いっそんはどうですか? TOSHI-LOWの歌詞とか歌心に関して感じるものはありました?

磯部
最近すごく思ったんですけど、自分と比較したときに、TOSHI-LOWは男の子で、童心に近い部分で人に甘えることができる人なんだと思うんですよ。僕はそういうことができない。恥ずかしがりやで、人見知りで、そういう癖がまだ抜けてない。しかも、子供も男の子が2人生まれるくらいだから、すごい男の子だなって思うんですよね。

――そこから気付いたんだ(笑)。

磯部
そう(笑)。これも最近、ふと思ったんですけど。僕は自分でも女々しいところがあったり、女子と話すのが好きなところがあって。すぐに人の彼女と仲良くなったり。
TOSHI-
LOW
そうそう(笑)。いっそんが女子会に一人だけいるみたいな風景、見たことある。

磯部
オカマか?とか思ったんですけど、それは違って。だから、自分の中には常に女の子がいるんですよね。

――なるほどね。

磯部
で、これも最近思ったことで。さっき歌詞の話をしたんですけど、日本語で格闘する大変さって、よくわかるんですよね。メロディに乗せるときの母音の強さとか、意味をはめるときの流れの組み方って。でも、TOSHI-LOWの中に男の子がいるってことを思ったときに、なんだか納得したんですよ。男の子って散らかすじゃないですか。そこから何かを見つけるじゃないですか。そういうことがやっぱり好きなんだろうなと思う。そうやって人に自分の思ってることを言えるって、相当強いことだし。TOSHI-LOWは超男の子だなって思うんですよ。

――見事に言い当てられてますけど。

TOSHI-
LOW
鍼灸の先生にも言われた。「安定とかを求めると、一番調子悪くなりますよ」って。

磯部
ははははははははは!
TOSHI-
LOW
確かに、「大変だ!」とか「これがこうなって」みたいな未来の話とかしだすと、急に身体の調子がよくなるんだよ。

BRAHMAN

BRAHMAN

TOSHI-LOW(Vo)、KOHKI(G)、MAKOTO(B)、RONZI(Dr) 95年東京にて結成。98年、1stアルバム『A MAN OF THE WORLD』をリリース。その後01年に『A FORLORN HOPE』、04年に『THE MIDDLE WAY』、08年に『ANTINOMY』をリリース。ヨーロッパやアジアでもツアーを行うなど日本以外でも活動を展開し、ライヴバンドとしての評価を不動のものとしている。2011年の東日本大震災以降は被災地の復興支援の活動を続ける中、『霹靂』『露命』と2枚のシングルをリリース。

http://www.tc-tc.com/

HUSKING BEE

HUSKING BEE

磯部正文(Vo/G)、平林一哉(G/Vo)、岸野一(B/Cho)、山崎聖之(Dr/ Cho)

94年結成。4人編成からボーカル・ドラムが脱退。磯部正文(Vo/G)、工藤哲也(B)、平本レオナ(Dr)の3人編成となり、東京、横浜を中心にライブ活動を続ける。96年、レーベルPIZZA OF DEATHより横山健プロデュースで1stアルバム『GRIP』をリリース。98年、BACK DROP BOMBと共にマネージメント事務所「ini(アイエヌアイ)」を設立。同年10月、マーク・トロンビーノをプロデューサーに迎えた2ndアルバム『PUT ON FRESH PAINT』をリリース。00年、平林一哉が加入し4人編成となり3rdアルバム『FOUR COLOR PROBLEM』を、02年に4thアルバム『the steady-state theory』、04年に5th アルバム『variandante』をリリース。05年3月にバンド解散。2012年2月、「DEVILOCK NIGHT FINAL」にて再結成。同年9月「AIR JAM2012」にて新メンバーの参加と工藤の離脱、本格的な再始動を発表。

http://www.husking-bee.com/



BRAHMAN
NEW ALBUM『超克』

2013年2月20日(水)発売

初回限定盤(CD+DVD) TFCC-86425 / 3,500円(税込)
通常盤(CD) TFCC-86426 / 2,625円(税込)

[CD収録曲]
01. 初期衝動
02. 賽の河原
03. 今際の際
04. 俤
05. 露命
06. 空谷の跫音
07. 遠国
08. 警醒
09. 最終章
10. Jesus Was a Cross Maker
11. 鼎の問
12. 霹靂
13. 虚空ヲ掴ム

[初回限定盤付属DVD収録内容]
LIVE at AIR JAM 2012
01. TONGFARR
02. THE ONLY WAY
03. SEE OFF
04. BEYOND THE MOUNTAIN
05. CHERRIES WERE MADE FOR EATING
06. SPECULATION
07. 鼎の問
08. 露命
09. 警醒
10. ANSWER FOR...
11. 霹靂
12. 賽の河原
BONUS TRACK
・初期衝動(MV / dir. タナカノリユキ)
・警醒(MV / illust. 芦沢ムネト)


HUSKING BEE
NEW ALBUM『SOMA』

2月20日(水)発売
HICC-3432 / 2,500円(税込)

[CD収録曲]
01. Art Of Myself
02. Put On Fresh Paint
03. Feedback Loop
04. Mingle With The Night
05. 暖願コントロール
06.らせんの夜
07. Sun Pillar
08. Taking In The View
09. 星降る昏い
10. Face The Sunflower
11. 窓朗夢
12. 萌弾タイムス
13. Cosmo

LIVE DVD
『HUSKING BEE 2012 LIVE at AIR JAM 2012, DEVILOCK NIGHT, BAD FOOD STUFF』
2013年4月3日発売予定
TFBQ-18137 / 3,000円(税込)

インタヴューArchives