NEXUS特別対談 TOSHI-LOW(BRAHMAN)×磯部正文(HUSKING BEE)

HUSKING BEEが『SOMA』、BRAHMANが『超克』。それぞれのバンドに取ってかけがえのない、再出発のアルバムが2月20日同日にドロップされる。
 ハスキンは昨年、まさかの再始動を果たし、それが期間限定ではないものであることを、このアルバムではっきりと証明した。
 ブラフマンも過去曲の再レコーディングアルバムや、数々の伝説的なライヴ、そして震災以降のパンクバンドの無心の復興活動の先頭を走り続けながらも、オリジナルアルバムとしては5年振りのアルバムをようやく示せた。
 その両バンドは、1990年代後半からのこの国のロックの最大級の革命であったパンクムーヴメントを牽引したハイ・スタンダードの背中を必死に追いかけ追い越せと走り続けてきたバンドであり、そのムーヴメントの主役の座にいた数少ない存在である。彼らが今、再び同時に歩を進める、その偶然に必然を感じる者は少なくないだろう。
 TOSHI-LOWと、いっそんこと磯部正文。お互いのバンドのフロントマンがどんな言葉を交わし合うのか? ストリートロックの革命者らしく、リアルな物言いに徹した対談を楽しんで欲しい。
 あの時代を熱く疾駆し続けた者にも、これからロックを楽しもうとする者にも、確かな言魂が感じられる名対談になっていると思う

取材・文・撮影=鹿野 淳 構成・インタヴュー撮影=柴 那典

ひねくれてるところが一緒なんじゃないかって親近感があった(磯部)

――2月20日にそれぞれのアルバムが同時リリースされます。ブラフマンは5年振りのアルバムリリース、ハスキンは8年振りの再結成&アルバムリリースという、非常にめでたい再会なので、今回は集まっていただきました。

TOSHI-
LOW
きっとレコード屋の展開もやりやすいね、これは(笑)。

――(笑)。結成もハスキング・ビーが94年、ブラフマンが95年ということで、かなり交わってる歴史が多いと思うんですけど。ファーストコンタクトはいつぐらいだったんですか?

TOSHI-
LOW
……クリケッツのライヴだったかな?

磯部
あははは。よく覚えてるね(笑)。
TOSHI-
LOW
そりゃ覚えてるよ。クリケッツの7インチが出たでしょ? あのリリースライヴん時に初めて喋りかけたんだよ。でも、その時は「こういうのが好きなんですよね?」みたいに話しても「別に好きじゃないよ」みたいなこと言われて。冷てぇ人だなと思った。
磯部
俺、そんなだった?(笑)。
TOSHI-
LOW
「横浜系の人、冷てぇ!」って。ハスキンのこと勝手に横浜系だと思ってたからさ。

磯部
あの時はまだ仕事してたから、たぶん疲れてたんだと思う(笑)。人見知りも激しかったしね。

――TOSHI-LOWはハスキング・ビーにどういう興味を持って話しかけたの?

TOSHI-
LOW
もう、その頃から頭角を現してたからね。「横浜系」って言われてたシャーベットとかさ、「ハイスタの次」みたいな気運を感じてて。だから、何とか一緒にかましてくんねぇかなって思ってた。俺らは属してるジャンルがなかったし、どこにも引っ張り上げてもらえない感じがあったから。いいなって思って。あの頃は7インチを出せるっていうのもすごいしさ。

――いっそんとしては、当時のブラフマンはどう見てました?

磯部
ブラフマンを初めて観たのは、昔の新宿ロフトで何バンドかの中に出てた時で。TOSHI-LOWが言う通り、まったくどういうジャンルで言っていいかわからないような印象は受けましたね。新しい感じというか。当時は、自分の中では、オリエンタルな感じだなと思ってました。オリエンタルコアみたいなイメージ。
TOSHI-
LOW
それ! それでいこう、今年は。俺らのジャンル、オリエンタルコア(笑)。

一同
あはははははははははははははははは。

――TOSHI-LOWの方が後輩なんだよね? いっそんにとって後輩が、こういうオリエンタルなハードコアをやってるのは、どういう風に見えたんですか?

磯部
すごい好印象でしたね、やっぱり。僕もハイスタを見て、ハイスタと違うことやらなきゃダメだって思ってましたから。そういうひねくれてるところが一緒なんじゃないかって親近感があった。
NEXUS特別対談 TOSHI-LOW(BRAHMAN)×磯部正文(HUSKING BEE)

ハスキンは歌として心に残るものがあったんだよね(TOSHI-LOW)

――ハスキンが『GRIP』というアルバムをリリースしたのが96年ですよね。あれはPIZZA OF DEATHからのリリースで、(横山)健くんのプロデュースだった。

磯部
はい……懐かしいなあ(笑)。ラッキーだったですよね、ほんと。
TOSHI-
LOW
あれはほんと聴いてた。ずっと「すげぇ!」って思ったから。あれで全国ツアーを廻って、CDが万単位で売れたのを見て、「ああ、すごいな」って思ってた。

――ハスキンが頭角を現した時は、TOSHI-LOWはその音楽を聴いてどんな風に思ってたの?

TOSHI-
LOW
実は最初はアンチが入ってたかもしれない(笑)。同じにならないように意識してたし。で、「あいつらもハイスタと同じになっちゃうんじゃねぇの?」とか思っててさ(笑)。

――ははははははは。

TOSHI-
LOW
でも、むしろ「かっけぇじゃん、本家より」みたいになって(笑)。やっぱり、ハスキンは歌として心に残るものがあったんだよね。要は、その時って、俺らもそうだけど、足し算ばっかりのミクスチャーみたいな方法論が多かった時期だから。シンプルな音数でシンプルなコード進行で、だけどメロが良くて歌として成り立ってるっていうのにドカンときたよね。こんな真っ直ぐに届くんだって。みんな「どれだけ変なのやろうか」みたいな方に寄ってった時期だったから。

――そういうのがアンダーグラウンドなシーンの中で面白い時代だったんだよね。

TOSHI-
LOW
うん。それで、見た目も派手にしたり、(洋服の)ブランドとかもいっぱい立ち並んできて。そういう時期にねえ? チビ、デブ、ハゲっていう3人が並んで(笑)。
 
(全員、ひたすら静かに、腹を抱えながら笑いを我慢する)
磯部
ほんとそうでしたよ。まず、初めて観る人たちがいても負ける気しなかったですもん(笑)。だって別次元なんだから、ハスキンは。
TOSHI-
LOW
あはははははははははは!

磯部
もともとカッコ良くないから、もうカッコつけようがないじゃないですか。それがわかりきってるっていう。逆の意味で見た目で勝ってたなって。
TOSHI-
LOW
だからほんとの意味で、プロモーションとかコマーシャル的なものとか、そういう目に見えて売れたものと違って響いたのを感じたんだよね。コークヘッド(・ヒップスターズ)とかハイスタは一つ上の世代だから下から見てる感じだったんだけど、ハスキンがそうなった瞬間に「曲がいいっていうことだけで、こんなに売れるんだ」って思った。それまで、もっと突拍子もないことをやらなきゃいけないと思ってたんだよ。ハイスタより速くとか、コークヘッドよりミクスチャーでとか。でも、シンプルにいいものを出すっていうのがこんなに響くんだなっていうことに感動した。

一人一人仲間なのか敵なのかを探りながらやっていくしかなかった(TOSHI-LOW)

――僕から見ると、ハイ・スタンダードは時代の中で世界でパンクが再ブームになったものの、マーケットとしては突然変異な存在として登場したと思っていたんです。でも、その後でハスキング・ビー、ブラフマン、そしてバック・ドロップ・ボムという3つのバンドが、ポップスとヴィジュアル系的なものが多かった当時のチャートの真ん中に入ってきましたよね。あれは確実に日本の音楽シーンを変えていったよね。実際、当事者としてそういう気持ちがあったんですか?

磯部
あったような、なかったような……。チャートに入ってたというのは嬉しかったですけど、でも、僕はそこを目指して始めたわけではなかったんで。あんまりそんなに気にしてなかったですね。

――では逆に、あの頃周りがザワついていく感じっていうのは、自分では不思議なもんだったの?

磯部
いや、そこはハイ・スタンダードの影響がありましたからね。冷静に見てました。AIR JAMにも出させてもらってたし、それならこうなるでしょうって感覚はありましたね。とにかく、ハイスタに必死でついていこうってずっと思ってた。

――TOSHI-LOWはその状況をどう見てました?  98年の『A MAN OF THE WORLD』の頃とかは。

TOSHI-
LOW
それはもう、ほんとにバイトの兄ちゃんが急に売れちゃったようなもんだからさ。わかってないよね、何にも。だって、あの頃も普通にバイトしてたから。

――『GRIP』や『A MAN OF THE WORLD』がヒットして、お金も入ってきたわけですよね。で、これはちゃんとインディペンデントにやらなくちゃいけないなと思って、それぞれ自分たちで事務所を始めたんじゃないかと思うんですけれども。その辺の流れはどういう感じだったんですか?

TOSHI-
LOW
ini(※ハスキング・ビーとバック・ドロップ・ボムが共同で立ち上げたマネージメントオフィス)はいつから?

磯部
98年ですね。

――TACTICS RECORDS(※ブラフマン、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDの所属するレーベルマネージメントオフィス)を立ち上げたのもその頃でしょ?

TOSHI-
LOW
うん。でも、はっきり言って何もわかってなかったね。もう計算方式も曖昧なままの始まりだからさ。本当にどれだけの利益があって、自分にいくら金があったら1年食えるっていうのもよくわかってないし。貰えれば貰えるだけいいじゃん、みたいな感じだった。明確に何かできるとか、これをやろうっていうことで始めたわけではないんじゃないかな。

――当時のことを思い返してみると、自分だけじゃなくて周りも「あー見えてTOSHI-LOWはやる男だ、計算できる男だ」っていうイメージがあったんだけど(笑)。実際はそんなもんじゃなかったんだ。

TOSHI-
LOW
(笑)いや、やりたいっていう気持ちはあったよ。でも、裏付けするものがなかったから。今じゃCDを売った取り分が何%かなんてフリーペーパーみたいなのにも出てるけどさ、昔なんか隠されてたわけじゃない?「絶対言わないでね」みたいに言われてて。どこに本当があるかわかんないから、だから自分たちがまず立ち上げて、一人一人仲間なのか敵なのかを探りながらやっていくしかなかったんだと思うんだけど。

――そういう中で、ブラフマンとハスキング・ビーは、仲間や同士のような感触はあったんですか。

TOSHI-
LOW
うん。やっぱり同世代っていうのは大きいよね。直接同級生じゃないけど、いっそんとはバンド的な意味では同級生みたいなもんだから。バック(・ドロップ・ボム)もそうだし。そうするとやっぱり、他の年代と違う繋がりはあるよね。たださ、その後時代が動いていって、2000年のAIR JAMがあって、一気にみんな別れていくからね。ハスキンが4人になった時も、俺、最初は「3人のバンドが4人になっていいの?」って思ったし。だって、人数が増えてよかった例をそれまで見たことなかったからさ。でもサウンドを聴いてぶったまげたよ。すげぇ!と思って。だから見てたよ、ずっと。

――逆に、いっそんにとってのブラフマンっていうのはどういう存在だったんですか?

磯部
まず、最初に観たロフトの時は、ハードコアのバンドが出てるのとは違う静けさがありましたし。ずっと面白いなと思ってましたね。KOHKI(G)のリフとか、ギターのフレーズがすごいなって思ったり。あとは、RONZI(Dr)。“松本のYOSHIKI”がね(笑)。

――RONZIくんって松本のYOSHIKIって言われてたの?

TOSHI-
LOW
まあ、地元オンリーですけど(笑)。Xのコピーバンドやってたんだよね。

――はははははははは! そうなんだ。

磯部
そうそう。気合いとか、曲を生み出すグルーヴはRONZIの中にあるんだなって思ったりしますしね。難しいことはしてないんですけど、なんかどんどんひとつのデカい玉になっていくみたいな感じで見えていて。一気にブラフマンというジャンルになったなって思いましたね。

BRAHMAN

BRAHMAN

TOSHI-LOW(Vo)、KOHKI(G)、MAKOTO(B)、RONZI(Dr) 95年東京にて結成。98年、1stアルバム『A MAN OF THE WORLD』をリリース。その後01年に『A FORLORN HOPE』、04年に『THE MIDDLE WAY』、08年に『ANTINOMY』をリリース。ヨーロッパやアジアでもツアーを行うなど日本以外でも活動を展開し、ライヴバンドとしての評価を不動のものとしている。2011年の東日本大震災以降は被災地の復興支援の活動を続ける中、『霹靂』『露命』と2枚のシングルをリリース。

http://www.tc-tc.com/

HUSKING BEE

HUSKING BEE

磯部正文(Vo/G)、平林一哉(G/Vo)、岸野一(B/Cho)、山崎聖之(Dr/ Cho)

94年結成。4人編成からボーカル・ドラムが脱退。磯部正文(Vo/G)、工藤哲也(B)、平本レオナ(Dr)の3人編成となり、東京、横浜を中心にライブ活動を続ける。96年、レーベルPIZZA OF DEATHより横山健プロデュースで1stアルバム『GRIP』をリリース。98年、BACK DROP BOMBと共にマネージメント事務所「ini(アイエヌアイ)」を設立。同年10月、マーク・トロンビーノをプロデューサーに迎えた2ndアルバム『PUT ON FRESH PAINT』をリリース。00年、平林一哉が加入し4人編成となり3rdアルバム『FOUR COLOR PROBLEM』を、02年に4thアルバム『the steady-state theory』、04年に5th アルバム『variandante』をリリース。05年3月にバンド解散。2012年2月、「DEVILOCK NIGHT FINAL」にて再結成。同年9月「AIR JAM2012」にて新メンバーの参加と工藤の離脱、本格的な再始動を発表。

http://www.husking-bee.com/



BRAHMAN
NEW ALBUM『超克』

2013年2月20日(水)発売

初回限定盤(CD+DVD) TFCC-86425 / 3,500円(税込)
通常盤(CD) TFCC-86426 / 2,625円(税込)

[CD収録曲]
01. 初期衝動
02. 賽の河原
03. 今際の際
04. 俤
05. 露命
06. 空谷の跫音
07. 遠国
08. 警醒
09. 最終章
10. Jesus Was a Cross Maker
11. 鼎の問
12. 霹靂
13. 虚空ヲ掴ム

[初回限定盤付属DVD収録内容]
LIVE at AIR JAM 2012
01. TONGFARR
02. THE ONLY WAY
03. SEE OFF
04. BEYOND THE MOUNTAIN
05. CHERRIES WERE MADE FOR EATING
06. SPECULATION
07. 鼎の問
08. 露命
09. 警醒
10. ANSWER FOR...
11. 霹靂
12. 賽の河原
BONUS TRACK
・初期衝動(MV / dir. タナカノリユキ)
・警醒(MV / illust. 芦沢ムネト)


HUSKING BEE
NEW ALBUM『SOMA』

2月20日(水)発売
HICC-3432 / 2,500円(税込)

[CD収録曲]
01. Art Of Myself
02. Put On Fresh Paint
03. Feedback Loop
04. Mingle With The Night
05. 暖願コントロール
06.らせんの夜
07. Sun Pillar
08. Taking In The View
09. 星降る昏い
10. Face The Sunflower
11. 窓朗夢
12. 萌弾タイムス
13. Cosmo

LIVE DVD
『HUSKING BEE 2012 LIVE at AIR JAM 2012, DEVILOCK NIGHT, BAD FOOD STUFF』
2013年4月3日発売予定
TFBQ-18137 / 3,000円(税込)

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