NEXUS アーティスト・インタヴュー:いきものがかり いきものがかりからいろいろ学ぼう

もう6枚目のアルバムなのかと思うほどフレッシュなキャラクターのままでいながら、最早国民的バンドと呼ぶべき存在となった「いきものがかり」。
そのアルバム『I』は今まで以上にカラフルで、多くの人の共感を呼ぶ作品となった。聴き手を選ばないポップミュージックを作るためには、何よりも自分らの音楽に対して厳しく接しないといけないし、音楽の隅から隅までを見渡せないといけない。間違いなくいきものがかりはそれを実践し続けながら音楽を生み出しているのだが、あの通り3人はいつだって飄々とシーンをスキップしながら活動しているように見える。
何故、彼らは喜びも哀しみも、そして始まりも終わりも歌い響かせながら、一貫した希望をリスナーに抱かせるのか?そして3人は何故、エヴァーグリーンな存在感をキープし続けられるのか?
今だからこそあらためて「いきものがかりのいきかた」を確かめると共に、この傑作アルバムの背景にある心象風景を話し合ってもらった。

取材・文=鹿野淳

バラけているのがこのアルバムの特徴

――新作の『I』(読み方:アイ)は、今まで以上にバラエティに富んでいる作品になったと思います。自分たちにとってどういうアルバムになったと捉えてますか?

山下
そうですね、まずは1 年ぶりのオリジナルアルバムを作ろうということで、自分たちのストックの曲が百数十曲とあるんですけど――。

――そんなにあるの!?

山下
(笑)はい。これまで14年くらいの蓄積で、今まで作ってきて出してない曲が沢山あるんですよ。その中で、シングルを骨格に、肉付けするにふさわしい曲を揃えて。完成したら、結果的に幅広い、個性的な曲が揃ったアルバムになったと思いますね。
吉岡
デモテープを聴いて、それぞれいいと思う曲を選んで作るんですよ。たとえば、今回の歌謡曲テイストな曲は“恋愛小説”だね、とか。そういう風に、今思ういい曲、今届くんじゃないかという曲を選んでいきました。
水野
アルバムのバランスや統一感というより、一曲一曲いい曲を選ぶということに主眼を置いて選んでいったので。毎回そうなんですけれど、今回はそれがハッキリ出たと思いますね。バラけているのがこのアルバムの特徴というか。曲がいろんな方向に行っていて、それがそのままバランスをとることなく、バラバラのままで置かれている。なおかつそれが一つのアルバムとして成立しているというか。

――今までも同じように、過去からストックしている曲をまな板に乗っけて、そこから選んでアルバムの曲を決めていくやり方をとってきたんですか?

水野
そうですね。5年前作った曲も、つい最近に作った曲も、同じようにフラットなものとしてテーブルに並べて選ぶ。作者も山下、水野、吉岡の誰が作ってようが関係なくて。とにかく今ある曲を全部聴き直して、今の僕らが出すべきものとして、いいものをチョイスしていく。毎回そうですね。

高校生の頃に作った曲と30代になって作った曲が同列に並ぶ、そこに誇りを持っている

――いきものがかりって、路上で男子二人で始め、やがてヒットし、そして今やスタジアムやアリーナというところにたどり着いている。それを踏まえると、昔の曲から今の曲まで同じ一線上に並ぶのって、不思議なことだなとも思うんですけれども。本人たちとしてはそうでもないんですか?

水野
違和感はないですね。10年前の曲が演奏できなくなるようなグループでもないし、高校生の頃に作った曲と30代になって作った曲が同列に並ぶということのよさがあるので。そこに誇りを持っているというか、それを大切にしてるグループだと思います。
山下
今回のアルバムでも、選曲の段階では、高校時代に作って路上で歌っていた曲を入れようかとギリギリまで議論していたんです。たまたま違う曲があったから入らなかったんですけれど、次回やその次に議題に上がるかもしれないし。

――今作は30代になって初めて作ったアルバムですけど、そうやって年齢を重ねてきたことが作品に影響しているわけでもない?

水野
僕らのほうにストーリーがあるのは間違いないんです。30代になっても同じ感覚で曲を作れるのか、そこに不安がないわけではないし。でも、僕らのストーリーを重視する必要もないと思っているんですね。聴いてくださる方にとっては、僕らが10年前から知っている曲でも新曲として聴くわけだし、そこはフラットに俯瞰で考えるようにしてますね。
吉岡
私としては、歳を重ねて曲との距離感が変わってくるところはあると思います。たとえば、“恋愛小説”は4〜5年前にできた曲なんですけれど、年齢を重ねたからこそ、曲の重みとかディープさに対応できた気がしていて。逆に“1 2 3 〜恋がはじまる〜”は、デビューした当初だったら自分のそのままの感じで歌っていたところを、今は距離をとったところから「このストーリーを伝えるにはどうすればいいだろうか」と考えて歌っていたりしていて。

――吉岡さんにとって、歌を歌うという表現は、より難しくなっているか、それともいろんなものを会得してシンプルになっているか、どちらだと思いますか?

吉岡
どうかなあ……。今回は押し引きがすごく難しかったですね。曲がいろんな方向を向いているんで。“恋愛小説”は、自分の中の一番大人っぽい表現だと思ったら、まだ足りないし。でも、深く歌おうとすると、しつこすぎちゃったりするところもあって 。逆に“MONSTAR”とか“ぱぱぱ〜や”みたいな曲は、もっとやんちゃにしようと思ったし。そういう押し引きの具合は難しいなと思うところでもあり、燃えるところでもありました。

僕らが中心になるんじゃなくて、あくまで曲が中心にある

――今回のアルバムタイトルの『I』は、誰が言い出しっぺなんですか?

水野
僕なんですけど。僕ら、アルバムのタイトルで、自分たちの姿勢とか、曲がどう伝わるかということに願いを込めることがあって。僕らは自分たちの曲がいきものがかりの曲としてとどまるんではなくて、聴いてくださる方それぞれが自分の物語に結びつけて、自分の曲として聴いてもらいたいということをずっと言っていて。そこを突き詰めて、最初は自分の作った曲を共有するとか、曲を閉じ込めるんじゃなくて開きたいって意味で「シェア」とか「オープン」とか、そういうハッキリ言っちゃうようなタイトルを考えていて。でも、それをスタッフに言ったら反応がよくなかった。「逆に押し付けがましい」って(笑)。

――ははは、なるほどね。

水野
そう考えているうちに、「I」が出てきて。最初は「いきものがかり」をローマ字にしたら頭文字が「I」で、1文字っていいねっていう単純なアイディアだったんですけど。でも、よくよく考えると、「I」は僕ら作り手側の曲ですっていう意味の「I」でもあるし、聴き手側からの「自分にとってこういう曲です」という「I」にもとれるし。あとは、漢字にしたら「愛」にも「哀」にもなる。捉え方が沢山あるなって思って、こういうタイトルになったんですね。前に『My song Your song』っていうタイトルをつけた時も同じことを考えていたんですけれど。「YOU」って言った途端に作った側と聴いた側がわかれちゃうような気がして。『I』は誰でも主人公になれる。それがいいんじゃないかって思いました。

――いいタイトルですね。震災以降って、個人の力が大切だって言われることも多くて。サッカー日本代表を見ていても「個の力、個の力」って。まさにジャストだ(笑)。

水野
ははは! 実際、僕らのようにモノを作っていると、「いきものがかりは何を考えているんだ」「いきものがかりの歌を聴きたい」という、こっち側の視点を求められることが多くなってくるんですよね。でも、それが大きくなりすぎるのは、曲にとっては不幸だなって思っていて。僕らが中心になるんじゃなくて、あくまで曲が中心にある。それを僕らが支配できるわけではなくて、誰でもどう捉えてもいい。そういうことが上手くできないかなっていうのが、ずっと思っていたことですね。

ニュートラルな状態に戻ろうとして、結果、戻ることができた。それが今の状態

――前回のアルバムは全体的にポジティヴなムードが浮かんでくるような統一感があったように思うんですけれど、今回は作っている中でそういうものはありました?

山下
今回はやっぱり一つ一つ独立している感じですね。ただ、タイトルにかけるつもりはなかったんですけど、曲を並べると、「愛」という言葉を使うことが増えたと思っていて。あえて技巧的に“恋跡”という曲で《本当の「逢い」を探したけれど》と書いてみたり、“風乞うて花揺れる”という曲で《僕らが愛の種だとして》と書いていたり、水野が作った“MONSTAR”にも「愛」という言葉が入っていて。独立しあっているけれど、どこかで括られるかなとは思ってましたね。
水野
前作が『NEWTRAL』というタイトルがついていたんですけれど、そのわりに意志があるアルバムだったと思うんですね。このアルバムのほうが、よりニュートラルだと思うんです。あれを経てやっとこうなったというか。あの時は今よりもさらに世情が動いていた時期だったので。その中でニュートラルでありたいという気持ちを込めての、あのタイトルだった。よりニュートラルな状態に戻ろうとして、結果、戻ることができた。それが今の状態なのかな、と。これだけ曲がいろんな方向を向いているのは、曲を中心に考えるならば自然のことなんで。変な言い方ですけれど、こちらのほうがニュートラルかなと思います。


いきものがかり

吉岡聖恵(Vo)、水野良樹(G)、山下穂尊(G, Harmonica)による3人組ユニット。小・中・高校と同じ学校に通っていた水野良樹と山下穂尊によって、1999年2月1日結成。ユニット名は、2人の共通点が小学校1年生の時に一緒に金魚に餌をあげる「生き物係」をしていたことによる。結成後は地元の厚木・海老名や小田急線沿線でカバー曲を中心に路上ライブ活動を始める。1999年11月3日、吉岡聖恵が加入。地元の厚木・海老名を中心に精力的に活動し、ライブハウスやホールでのワンマンをソールドアウトするようになってゆく。

2006年3月15日、「SAKURA」でメジャーデビュー。「SAKURA」はCMソングに使用され問い合わせが殺到、ブレイクのきっかけとなる。2007年3月7日、1stアルバム「桜咲く街物語」をリリース。2008年には「NHK紅白歌合戦」初出場を果たし、その後2012年まで5年連続で出場、幅広い層から支持を集める。2012年2月には5thアルバム「NEWTRAL」を、12月19日には、初のバラードベストアルバム「バラー丼」リリース。

http://ikimonogakari.com/


6th Album『I』

2013年7月24日発売
初回生産限定盤[CD+DVD]
 ESCL-4089-90 / 3,500円(税込)
初回仕様限定盤[CD]
 ESCL-4091 / 3,059円(税込)

http://www.amazon.co.jp/dp/B00DCU8EN0/

■収録曲
01. 笑顔
02. 1 2 3 〜恋がはじまる〜
03. ぱぱぱ〜や
04. 恋跡
05. ハルウタ
06. マイサンシャインストーリー
07. なんで
08. あしたのそら
09. 風乞うて花揺れる
10. MONSTAR
11. 恋愛小説
12. 東京
13. 風が吹いている
14. ぬくもり

【ライヴ情報】
「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2013 〜 I 〜」

09/01(日) サンドーム福井
09/10(火) 横浜アリーナ
09/11(水) 横浜アリーナ
09/15(日) 宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
09/16(月祝) 宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
09/28(土) 大阪城ホール
09/29(日) 大阪城ホール
10/05(土) マリンメッセ福岡
10/06(日) マリンメッセ福岡
10/12(土) 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
10/13(日) 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
10/19(土) 愛媛県武道館
10/20(日) 愛媛県武道館
10/26(土) 広島グリーンアリーナ
10/27(日) 広島グリーンアリーナ
11/09(土) 神戸ワールド記念ホール
11/10(日) 神戸ワールド記念ホール
11/16(土) 静岡エコパアリーナ
11/17(日) 静岡エコパアリーナ
11/22(金) 日本武道館
11/23(土祝) 日本武道館
11/27(水) 日本ガイシホール
11/28(木) 日本ガイシホール
12/07(土) 三重県営サンアリーナ
12/08(日) 三重県営サンアリーナ

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