NEXUS アーティスト・インタヴュー:ヒャダイン/前山田健一 前山田健一が語る「中二病」と「ガラパゴス化するJ-POP」

作曲家、音楽プロデューサーとして、さらにはテレビ番組にも進出し八面六臂の活躍を続ける“ヒャダイン”こと前山田健一。先日にはソロアーティストとしてのニューシングル『半パン魂』もリリースした彼に、自身のクリエイティビティの源泉にまつわる様々なトピックについて話を訊いたのがこのインタビューだ。

語ってもらったテーマは、子供時代について、思春期と「中二病」について、そして彼の視点から見たここ数年のJ-POPの潮流について。

包み隠さず語ってくれた。

取材・文=柴那典

お調子者の33歳の人をプロデュースしている

――今回のインタヴューは、まず前山田さんがヒャダインというチャンネルを自分の中でどう位置づけているのかを訊ければと思うんですけれども。ご自分の中で、「ヒャダインは◯◯をする場所」とか、そういうことを決めていたりするんでしょうか?

前山田
実を言うとあんまりないんです。お調子者の33歳の人をプロデュースしているだけっていう感覚ですね。

――お調子者の33歳。

前山田
ですね。そういう考え方なんで、自分自身だからどうこうというのは、あんまりないんです。他の人に楽曲提供するのと同じイメージで作っています。それと、今こうやってヒャダインで曲を出しているのはアニメとかのタイアップがついた時だけなんですよね。アニメの監督から「こういう曲を作ってくれ」というお題があって、それに呼応して作るという感じです。

――今回の「半パン魂」は『ガンダムビルドファイターズ』の主題歌になっているわけですが、これについてはどういうお題だったんでしょう?

前山田
これは、30歳になってもガンプラをやっているような主人公の絵が監督の頭の中にあったらしく、そこから「趣味や趣向は大人になっても変わらないし、それは誇れるものだ」という曲を作りたいというオファーをいただきまして。楽しくて明るくて、前向きだけどちょっとだけ胸キュンな曲を欲しいということで作ったんです。

――なるほど。かなりストレートにお題に打ち返している。

前山田
そうなんです。

集中力は子供の頃についた

――でもこの曲の「趣味や趣向は大人になっても変わらない」というテーマは、前山田さん自身に当てはまるものでもあると思うんです。自分自身の歌でもあるというか。

前山田
そうですね。自分の歌でもあります。

――自分の「半パン」時代というか、小学生の頃って、どんな感じの子供でした?

前山田
まあ、子供ながらの素直さもありましたけど、人の顔色を見たり、少しばかりお勉強ができたので同級生のことをバカにしたりしてましたね。イヤな子供だったと思います。

――世代的には、小学生の頃にファミコンが登場しているわけで。それは大きかった?

前山田
ほんと仰るとおり大きかったです。ファミコンがちょうど出たての頃で、ほんとにファミコンばっかりしてましたね。

――ファミコンを持ってる友達がいて、そこに遊びにいってたり。

前山田
そうです。やってました。で、後ろで見てるっていう。見るだけでも楽しいっての、ありましたよね。その頃から上手い子がゲームをやってるのを見るのが楽しかった。

――その時に自分の基本的な素養が培われた、みたいな感覚はあります?

前山田
ありますね。”三つ子の魂百”までじゃないですけど、年齢がヒト桁の時に築き上げたものは土台になってますね。その時RPGがとても好きで、歌詞に書いたように意味なくレベルを99まで上げてたりして。いろんなことをやり込むクセとか集中力は子供の頃についたと思います。今でも集中して時間があっという間に過ぎることは多々あって。それは子供の頃にしていたゲームとピアノの練習のおかげだと思います。

当時書いていたポエムを机の奥の隅に封印してる

――子供の頃って、思春期のやっかいな自意識が芽生える前ですよね。

前山田
そうですね。中二病を発症する前というか。自意識関係なく何やっても楽しいっていうのもあるので。

――14歳くらいの頃って、どういう期間でした?

前山田
あの頃はリアル中二病でしたね。面倒くさい自意識にがんじがらめで、一人でメシを食ってるのを見られるなら便所で食ってるほうがマシだって便所飯したり。運動神経が悪かったんですけど、それをネタにしてからかわれるようなキャラクターでもなくて。あえてダサくしていることで自己弁明して周りを誤魔化すような、文字通りの中二病で。

――あの頃はまだ「中二病」という言葉はなかったけど、まさにあれはそうだったんだ、と。

前山田
ですね。だから言葉の重要性ってすごく大事だと感じていて。何かの部族で、「怒り」と「悲しみ」を表す言葉がなくて、その感情の区別がつかないという話を聞いたことがあって。なので、今の子供達は「中二病」という言葉が生まれているので、妙ちくりんな自意識とかトゲトゲしたものを、1%でも俯瞰して見ることができる。それは救いになると思うんですよね。

――そうなんですよね。これは僕自身の話なんですけど、最近実家から中学生時代のノートが発掘されまして。そこに何が書いてあったかというと、自作のファンタジー小説で。

前山田
いやー、やめてー!!(笑)。

――(笑)。これはもう我ながら純度の高い中二病ですよ。設定ばっかり壮大だったりして。

前山田
あるある! それで帰着点がないんですよね。わかるなあ、拙い文字から繰り出されるしょうもない自意識とか。誰にも見せられないですよね。

――前山田さんにもそういう過去を失ってない、みたいな感覚があるんじゃないかと思ったんですけど。

前山田
僕もね、文字通り失ってない部分がありまして。当時書いていたポエムみたいなのがあるんですよ。それは机の奥に封印して、怖くて見れないんですけど。

――これ、なんで捨てられないんでしょうね?(笑)。絶対誰にも見せられないのに。

前山田
そうそう、でも実際、クリエイティビティに関しても、そういう中二的な感覚はなくしちゃいけないって、戒めとして持ってる部分はありますね。

――その「戒め」みたいな感覚って、いつくらいに思うようになったんでしょうか。

前山田
まずそれは僕が作る作風によると思っていて。というのは、いろいろ試行錯誤していたんです。ジャズがあうのか、AORがあうのか、R&Bがあうのか。僕にピタッと似合ったのが、ポップスやゲームミュージックやアニソンやアイドルソングや、リスナー層が若い曲を作るのが得意だという適正に気付いたんです。それを作り続けるには、そういう感覚を持っておかないといけないなっていうことを、その時に思ったのがきっかけですね。

ヒャダイン/前山田健一

ひゃだいん・1980年大阪府生まれ。本名 前山田健一。
3歳の時にピアノを始め、音楽キャリアをスタート。
作詞・作曲・編曲を独学で身につける。
京都大学を卒業後、2007年 に本格的な音楽活動を開始。

京都大学を卒業後2007年に本格的な音楽活動を開始。動画投稿サイトへ匿名のヒャダインとしてアップした楽曲が話題になり屈指の再生数とミリオン動画数を記録。

一方、本名での作家活動でも倖田來未×misono、東方神起への提供曲が2作連続でオリコンチャート1位を獲得。2010年にヒャダイン=前山田健一である事を公表し、作家とアーティストをクロスオーバーした活動を開始。

ももいろクローバーZ、SMAP、ゆず、山下智久、AKB48、関ジャニ∞、私立恵比寿中学、でんぱ組inc.などのアイドル、JPOPからアニソン、ゲーム音楽など幅広い楽曲提供を行う。

また、自身も歌手、タレントとして活動。
また「musicるTV」(テレビ朝日系)、「ワンセグ☆ふぁんみ」(NHKワンセグ2)と2つの音楽番組のMCを担当。

作家を軸に様々な顔を持つ音楽クリエイター。

オフィシャルサイト


8th Single
『半パン魂(スピリット)』

・初回限定盤:
LACM-34185 / 1,429円(+税)
3曲入り/MV収録のDVDつき!/アーティストジャケット

・通常盤:
LACM-14185 / 1,143円(+税)
3曲入り/描き下ろしアニメジャケット

【収録曲】
1. 半パン魂
(TVアニメ「ガンダムビルドファイターズ」新エンディング主題歌)
2. シャアが来る
(TVアニメ「機動戦士ガンダム」挿入歌カバー)
3. わーきゃーいわれない
(文化放送 超A&G+「ヒャダインのわーきゃーいわれたい」テーマソング)

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