NEXUS アーティスト・インタヴュー:星野源

歌い手として、ミュージシャンとして、大きな飛躍を遂げつつある。それが今の星野源というアーティストだと思う。しかも、とても理想的な形で。メディアで紹介される機会も増え、セールスや動員も増え、いわゆる「売れてきている」状態でありながら、リスナーとの信頼関係も深まってきている。ポップな開放感と、歌の真っ直ぐさと、人としての魅力と、いろんなものが相乗効果を持って高まってきている。

『フィルム』『夢の外へ』に続く、今年3枚目のシングル『知らない』。ストリングスを大きくフィーチャーしたバラードのこの曲も、とにかく、曲の持つ力が素晴らしい。心の底の方から揺さぶられるタイプのバラードになっている。

そして、彼の活動を追ってきた人ならご存知のことだとは思うが、毎回毎回シングルというパッケージにサービス精神を目一杯詰め込むのも星野源というアーティストの「らしさ」の一つだ。今回も、新曲を4曲収録。さらに初回限定盤には、日比谷野外音楽堂ワンマンの模様も含む70分ほどの映像作品を収録したDVDも付属。シンプルに「シングルを買う」ということの価値を感じさせてくれる人、だと思う。

新曲について、そしてシングルのパッケージについて、語ってもらった。

取材・文=柴那典

歌は言葉にできないことを作品にできるんです。向き合うことができる

――これは最初に言っておこうと思うんですけれど。ほんと、ここ最近の星野源さんの作る曲、素晴らしいんですよ。

星野
あはは(笑)。ありがとうございます。嬉しいです。

――てなわけで、今回のインタヴューでは、曲について、それから映像についても、いろいろ聞いていければと思うんですが。まずは、この曲が生まれてきたときの感覚ってどんな感じでした?

星野
曲自体は今年の夏に衝動的にできた曲で。普段起こったことに反応して曲ができることが多いんですけど、一つの出来事にショックを受けて、化学反応みたいな感じで曲ができて。その出来事にちゃんと向き合いたい思いで作詞をしていて、それで2ヶ月くらいかかってしまったんです。で、音のイメージとしては、アレンジ、編成も含めて、前のシングル曲の“夢の外へ”と同じ楽器でやっているんですね。“夢の外へ”は、自分の上限を越えたいと思って作った曲だし、自分なりに越えられた実感があって。あれは楽しい作品になっていたけれど、今回のような曲でも、ちゃんとそれを踏まえたものにしたかった。そういう気持ちでできた曲です。

――歌詞を読んでも感じるんですが、「終わり」というのが一つこの曲ができるモチーフとしてあったんじゃないかと思うんです。

星野
そうですね。

――今までも自分にとってショックなことや体験が曲になったことは多いですか?

星野
曲にして処理することは多いですね。特に昔はあんまり人とコミュニケーションがうまく取れなかったんで、人に相談して物事を解決するより、自分の中で一曲作品ができるとすっきりするようなところがあって。やっぱり現実に起こることって言葉にできないことが多いんですけど、歌は言葉にできないことを作品にできるんです。解決はしないんだけど、向き合うことができる。歌ってそういうツールでもあると思うので、そういうのは昔から多かったですね。

ヘヴィな題材であっても、ポップスの形で表現することで、前に進める

――前のアルバムの『エピソード』のときには、「頑張って違うことを書こうとしても死に関係する曲ばっかりができた」という話をしていましたよね。『エピソード』は、そういう意味でも、いわば“渦中”のアルバムだったと思うんですけれども。

星野
そうですね。何かに巻き込まれているっていうか、抗えない何かの中で作った感じですね。

――あのときと今回を比べると、どうですか?

星野
『エピソード』のときは、当初予定していたイメージをやろうとしても、どうしても違う方向に行っちゃうっていうできあがり方だったんですよね。でも、今回はあれから時間が経って、ヘヴィな題材であっても、ちゃんとそこを乗り越えるモチベーションがあったんです。だから、見つめ直すとか、ちゃんと向かい合うとか、そういうことをむしろやりたいと思って。“夢の外へ”がポップスになったように、こういう題材でもポップスの形で表現するっていうことで一つ前に進めるものがあるんじゃないかなと。付け焼刃的なことじゃなくて、もっと大きいリアクションができるんじゃないかなっていう気持ちでしたね。挑戦というか。

――曲を聴いても、すごく満たされる感覚があると思いました。温かく心を満たすバラードというか。

星野
嬉しいですね。そうなってたらいいなと思ってました。

ギターを歪ませてかき鳴らす以外の方法で、狂いそうな衝動みたいなものを表現できないかなって

――アレンジに関してはどんなイメージでした?

星野
“夢の外へ”もそうですけど、アコギでピック使ってストロークしてるんです。あの曲以外は、だいたい指でアルペジオを弾くんですよね。でも、今回もピックでガーンと弾いて、それに素直にバンドをつけていって、ちょっと狂ってるぐらいのストリングスアレンジをつけてもらって。もともと曲に“着実にザクザク歩いてる”みたいなイメージがあって。それは弾き語りの時点でもあるものだったんで、それを拡大していくようなやり方でした。

――改めて、“夢の外へ”で掴んだもの、見えたものっていうのはかなりあったっていうことですね。

星野
そうですね。ここまでやって大丈夫なんだなっていうのはありました。やり過ぎなくらいがちょうどいいのかもなっていう。パッケージ全体のあり方もそうで。『夢の外へ』では、カップリングにはスリーピースでアコースティックの曲を入れたりとか、今までやってきた流れのものも入れたり、表題曲だけじゃないってことも表現できた気がするんです。だから、今まで同じことを二回繰り返すってあんまやってないんですけど、今回はそれをあえてちゃんとやりたいなと思って。パッケージの構成も似てるんですよね。今回は“知らない”の後、二曲目に明るい曲があって、三曲目にアコースティックソウルみたいな曲をやって、最後に宅録があるという。もう一回やるのって、普通の人からしたらわりと保守的なやり方だと思うんですけど、僕からするとすごいチャレンジなんですよ。

――二枚のシングルが対になっているぐらいの感じなんですね。

星野
なんとなくそんなイメージではありますね。

――さっき、「少し狂ってるぐらいがいい」「やり過ぎなくらいがちょうどいい」と言っていましたよね。これって、いろんなところでポイントになる話だなと思っていて。まずストリングスのアレンジの話で言うと、とにかく自由だし、バッキングに徹していないし、のびのびと発想を膨らませている感じがある。そういうものを求めていたんですよね。

星野
そうですね。ただ、今回は歌詞が強いので、ちょっとマイルドになっている部分もあります。“夢の外へ”ほどは狂っていないかもしれない。でも、ストリングスのアレンジをしてくれた岡村美央さんという方がすっごい頑張ってくれるんですよ。僕、音楽理論は全くわかんないんですけど、無理難題を言っても頑張って構築してくれる。すごくいいものになったなと思いますね。

――このストリングスは、激しくなくても、どんどん感情の水位が上がっていく感じがあると思います。ニール・ヤングとかザ・バンドに通じるような。

星野
ザ・バンドは音のイメージとしても意識しましたね。前々から考えてるんですけど、オルタナティブ、ハードコア、メロコアも大好きだから、ほんとはギターを歪ませて、かき鳴らしてうわーっと歌いたいんですよ。だけど、それって今はもうすごく普通で実はパンクから一番遠い所にあるんです。それをやったら負けのような気がしてしまって。そうじゃない方法で何か、例えば狂いそうな衝動みたいなものを表現できないかなって思っていて。そうすると、行き過ぎちゃったストリングスはやっぱりちょっと狂ってるように聴こえるんですね。綺麗すぎて狂っているように聴こえたりするし。感情をざわざわさせるいいツールだなと思います。

星野源

1981年、埼玉生まれ。シンガーソングライター。学生の頃より音楽活動と演劇活動を行う。2000年に自身がリーダーを務めるインストゥルメンタルバンド「SAKEROCK」を結成。2003年に舞台「ニンゲン御破産」(作・演出:松尾スズキ)への参加をきっかけに大人計画事務所に所属。10年にファーストアルバム『ばかのうた』、11年にセカンドアルバム『エピソード』を発表。ミュージシャン、俳優、文筆業など多方面で活躍中。

http://hoshinogen.com/


4thシングル『知らない』

2012年11月28日(水)発売
初回限定盤(CD+DVD+スリーブケース):
VIZL- 510 / 1,890円(税込)
通常盤(CD):VICL-36744 / 1,155円(税込)

■CD収録内容(初回盤・通常盤共通)
1. 知らない
2. ダンサー
3. 季節
4. おもかげ(House ver.)

■初回盤DVD
『ビデオのストレンジャー』 監督:山岸聖太
Music Video:「知らない」監督:山口保幸
Live:『星野源の日比谷野外大音楽堂ワンマンライブ』
Documentary: Recording & Music Video メイキング など
星野源とスタッフによるオーディオコメンタリー収録


【ライヴ情報】
■PIA 40th Anniversary
「MUSIC COMPLEX 2012」

2012年11月23日(金)
幕張メッセ国際展示場1〜3ホール

■『星野源のSHIWASU』
2012年12月13日(木)
渋谷公会堂
OPEN 18:30 / START 19:00
TICKET:全席指定¥4,500
※4歳以上チケット必要 / 3歳以下入場無料(保護者の方の膝上可)但し、座席が必要な場合チケット必要
LIVE:星野 源
GUEST:清水ミチコ
司会:寺坂直毅
問:HOT STUFF PROMOTION
  (03-5720-9999)

■rockin'on presents
COUNTDOWN JAPAN 12/13

2012年12月28日(金)
幕張メッセ国際展示場1~8ホール、イベントホール

■SPEEDSTAR RECORDS 20th Anniversary Live 〜LIVE the SPEEDSTAR 20th〜
2013年1月19日(土)
Zepp DiverCity Tokyo

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