NEXUS アーティスト・インタヴュー:怒髪天

約2年ぶりのオリジナル・アルバム『Tabbey Road』をリリースした怒髪天。結成から28年、紆余曲折のヒストリーを経て、衰えるどころか一層増しているバンドの熱量と勢いに満ちた作品だ。桃屋のCM曲三部作をはじめ、一度聴いたら耳に馴染むメロディのナンバーを多数収録。歳を重ねた今も旅に終わりはないと歌う“歩きつづけるかぎり”を筆頭に、泥臭さと、ユーモアと、自らを奮い立たせるような力強さが詰まっている。5月からは全国ツアーも始まるが、「みんなで歌える曲」を目指して作られたというこのアルバムを引っさげての、ライヴでの熱くダイレクトなコミュニケーションも目に浮かぶ。

昨年の東日本大震災以降、さまざまなミュージシャンが「音楽の力」について考え、語り、その思いを行動に移してきた。昨年5月に決意表明の歌として“ニッポン ラブ ファイターズ”を発表、被災地でのライヴを行なってきた怒髪天も、そのうちの一組だ。今回の増子直純へのインタヴューでは、激動の2011年を経て、2012年の「今」を彼がどう見ているのか?ということについても、語ってもらった。

取材・文=柴那典

俺らの作品じゃなくて“みんなの歌”を作ろう、と

――『Tabbey Road』は、非常に凝縮された、いい曲、必要な曲だけ詰まっているアルバムだと思います。そういうものにしようという意識はあったんでしょうか?

増子
そうだね。いつもアルバムって、できた曲順に入れていくのよ。今のバンドの状態をパッケージするっていう、スナップ写真みたいなもんがアルバムだと思ってるからさ。そこにいろいろ緩急をつけるためにグラデーションつけるでしょ? コンセプトっていうものを立ててやるっていうことはいつもないんだよね。でも今回は、去年に震災があって、そこから「バンド続けていくの?」「それどころじゃないんじゃないの?」っていうところまで考えたから。でも、そこからツアーを廻る中で、次のアルバムは、みんなで歌えるものを作ろうと思った。やっぱりさ、俺だってみんなだって、先行きは不安じゃない? 「これから日本どうなるのかな?」って。原発の問題も全然片付いてないし、震災の爪痕も全然残ったままで復興も全然できてないし、経済状況も最悪でしょ? でも、そんな中でもやっぱりライヴでシンガロングすると、勇気づけられる。同じ時代を生きてる仲間がいるんだと思ったらさ、もっと頑張ろうと思えたの。

――シンガロングできるっていうのが大事な要素だった?

増子
大事だったね、今回は。スローガンとして、俺らの作品じゃなくて“みんなの歌”を作ろうというのがあって。アーティスト的な表現みたいなのは度外視して、圧倒的にわかりやすい、すぐに覚えて歌えるようなものを作ったの。去年、「LIVE福島 風とロックSUPER野馬追」で6日間ライヴをやったんだけど、ちっちゃい子からおじいちゃんおばあちゃんまで、いわゆるロック聴く層じゃない人達まで来て、すごく喜んでくれたんだよね。それを見た時に、今はロック聴く層にだけ届けるようなもんを作ってる場合じゃねぇなと思って。そこで今いちばん必要なものは、みんなで歌える、力強い気持ちになれるものだと思った。それは今の日本にもそうだし、俺自身にもやっぱり必要なものだと思って作ったんだよね。

――増子さん自身に必要なものというのは、どういうところだったんでしょう?

増子
それはやっぱり、俺もみんなと同じなのよ。俺は別に誰かを引っ張っていこうなんてつもりは毛頭ないの。ただ音楽をやってるだけ。職業がいわゆるバンドマンであるっていうこと。ライターであろうが、カメラマンであろうが、工場で働いてようが、みんな職業はそれぞれ違うけど、同じ世代を生きてる、この時代を生きてる1人なの。で、今後どうするのかということに関して思うことは、非常に不安だよ。やっぱり震災直後は音楽なんてクソの役にも立たんと思ったし。でも、まずはやれることをやっていこうと思ってやっていくうちに、音楽ってやっぱりすげぇもんだなっていうことがわかって。目には見えない力、金で買えないものを与えてくれるよね。よく、うちらの音源聴いて、ライヴ観て「勇気もらえました」「元気もらえました」って言ってくれる人は、いっぱいいるけど、俺自身がやっぱり音楽っていうもの自体に力づけられたし、それを痛感した。今こそ音楽だって思ったね。やっぱりほら、周りには震災が起きてから、曲を作れなくなった、歌詞が書けなくなったって人もいるんだよね。でも、今こそ、思うこと、考えることを歌にしていくことが俺達のやることだと思ったな。

「おっさん」を引き受けていくことがリアルなんだよ

――今語ってもらったような「そもそも音楽なんて役に立つのか」というところに立たされた時って、それまでにどういうことをやっていたかが自分にとってのガイドになると思うんです。結局、自分のやるべきことを貫くしかないわけですからね。そういう意味では、怒髪天というバンドが『オトナマイト・ダンディー』というアルバムを作っていたことは大きかったと思うんです。そこで「おっさん」の格好よさ、大人の格好良さとは何かということを歌っていたという。

増子
そうだね。ロックバンドのキーワードの一つは「リアルであること」だと思うんだよね。いかにリアルであるか。そう考えた時に、現時点で俺が自分のリアルを歌ったら、完全におっさんなんだよ。でも、そこから逃げて作ってるヤツが多すぎるわけよ。もっと若いイメージの主人公で作ってるようなね。でも、自分はもう、ジャストナウおっさんだから(笑)。そこを引き受けていくのがリアルなんだよ。そこを避けちゃいけないなって思うよね。

――世の中のおっさんを励まそうとして作ったってよりは、自分がそうだから、という。

増子
そう。励まそうっていうか、もう全然誇らしいもんだと思ってるからね。で、今回の“押忍讃歌”もそうだけど、こんなに頑張ってるのにどうも「おっさん」って、評価が不当であると思うんだよね。ディスられてるというか、よくないイメージが入ってるから、それをひっくり返しちゃおうかと思って。パンクロックの使命である価値観の逆転っていうのをさ、ちょっと面白おかしくやってみよう、と(笑)。

怒髪天

増子直純(Vo)、上原子友康(G)、清水泰次(B)、坂詰克彦(Dr)からなる4人組ロックバンド。1984年に札幌にて結成、「JAPANESE R&E」を旗印に、強烈にエモーショナルなライブを全国各地で展開し、独自の音楽性にて幅広い人気を集める。2011年12月7日(水)には東日本大震災を受けて5月に配信された『ニッポン ラブ ファイターズ』をタワーレコード限定リリース。3月14日(水)には両A面シングル『歩きつづけるかぎり/DO RORO DERODERO ON DO RORO』とライヴDVD+CD『D-LIVE IN JAPAN 2011』もリリースされた。

http://dohatsuten.jp/index_gate.html


アルバム

アルバム「Tabbey Road」
2012年4月18日(水)発売
TECI-1326 ¥2,800(税込)
テイチクエンタテインメント/インペリアルレコード

[収録曲]
01. 押忍讃歌
02. もっと…
03. 歩きつづけるかぎり
04. ホトトギス
05. ナンバーワン・カレー
06. 夢と知らずに
07. 愚堕落
08. そのともしびをてがかりに
09. 雪割り桜
10. YO・SHI・I・KU・ZO・!


【ライヴ情報】
全国ツアー
OK! Let's Go TOUR 2012 "夢追道中"

2012年5月06日(日)大阪城野外音楽堂
2012年5月12日(土)札幌道新ホール
2012年5月13日(日)札幌KLUB COUNTER ACTION
2012年5月19日(土)盛岡CLUB CHANGE WAVE
2012年5月20日(日)青森Quarter
2012年5月22日(火)渋谷公会堂
2012年5月23日(水)下北沢SHELTER
2012年5月29日(火)浜松MESCALIN DRIVE
2012年5月31日(木)岡山IMAGE
2012年6月02日(土)熊本DRUM Be-9 V1
2012年6月03日(日)鹿児島SR HALL
2012年6月05日(火)滋賀U★STONE
2012年6月07日(木)和歌山CLUB GATE
2012年6月10日(日)仙台市青年文化センター
2012年6月16日(土)新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
2012年6月17日(日)郡山HIP SHOT JAPAN
2012年6月19日(火)HEAVEN'S ROCK宇都宮 VJ-2
2012年6月23日(土)富山MAIRO
2012年6月24日(日)金沢AZ
2012年6月26日(火)水戸LIGHT HOUSE
2012年6月29日(金)高松DIME
2012年7月01日(日)都久志会館
2012年7月04日(水)高知X-pt.
2012年7月06日(金)広島CLUB QUATTRO
2012年7月13日(金)中京大学文化市民会館プルニエホール
2012年7月14日(土)名古屋HUCK FINN
2012年7月16日(月・祝)ZEPP DiverCity TOKYO


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