NEXUS アーティスト・インタヴュー:COIL COILが語る「カセットテープからの15年」

職人肌のサウンドセンスと人懐っこいメロディーで、常に心の隙間を射抜くようなポップ・ミュージックを作ってきたCOILの2人。デビュー15周年を迎えた今年、彼らは久しぶりの新作アルバム『15』をリリースした。

「幻のデビュー曲」“ボンデージ・スーパーカー”から始まる15曲は、彼らのキャリアの集大成を示すようなもの。ビートルズの遺伝子が染み込んだギターポップから、ユーモラスな楽曲、内省的なバラード、ファンクなディスコナンバーまで――。「コンポーザー岡本定義+エンジニア佐藤洋介」のユニットとしての原点と現在地を同時に示すようなものにもなっている。

11月13日にはオフィスオーガスタ恒例イベント「オーガスタキャンプ」の初オンライン生放送「Augusta Camp 2013 Online Exclusive」のホスト役をつとめる彼ら。「アナログ宅録ユニット」からスタートしたCOILの15年を、じっくり語ってもらった。

取材・文=柴那典

気分的にはデビュー前の頃に近い感じにしようと思ってた

――アルバムは15年の歩みが詰まってて、初期の感覚もありつつ、変化してきた道のりも感じさせるし、一方で若い人に取っては新鮮なものとして届くと思います。

岡本
そうだとしたら嬉しいですね。

――15周年でアルバムを作るにあたってのコンセプトやヴィジョンはありました?

岡本
15周年で久しぶりのフルアルバムということになるし、たぶんコンセプトをしっかり作って取りかかろうと思えばできたと思うんですよ。でも、そういう風に取り組んでしまうと空回りしがちだし、COILとしてのライヴ活動や制作からも少しブランクがあったので、比較的フラットな気分であまり意気込まない感じでやっていました。

――特にコンセプチュアルな作品を作ろうと意識したわけではなかった。

岡本
コンセプチュアルと言ったら、『0・10』を作ってた時はガチガチに作ってました。あれはあれでいいんですけど、すごい準備とエネルギーが必要で。それよりも、最初のCOILに近い感じで作りつつも今の自分たちの雰囲気が入った作品になればいいねというのは、(佐藤)洋介とも、スタッフとも話していたんで。録音スタイルは違うし、原点回帰とは言わないまでも、気分的にはデビュー前の頃に近い感じにしようと思ってたかな。

――コンピュータを使って音楽制作する環境が当たり前になった今と比べると、COILのアマチュア時代の録音スタイルは大きく違いますよね。

岡本
今はコンピュータだけど、デビューする前に洋介と2人で宅録してたときは、カセットテープの4トラックとかオープンリールの8トラックの限られた制作環境でしたからね。デビューアルバムの『ROPELAND MUSIC』は、アマチュア時代の音源を使って作品として作っちゃってたんです。あの頃は、音楽が好きで、録音が好きで、楽曲制作が好きでやっていた。そこから、やれ売れるものをとか、やれわかりやすくとか、そういうところに行ってしまうと、純粋に音楽が好きで作りたいという気持ちと離れてしまうというのが何年もやってるとわかってきたので。

どんな形でも音楽をやり続けているだろうなという自信だけはあった

――デビュー前の気分というのはどんな感じでした?

岡本
デビューする前は、バンドも解散しちゃった30歳前のうだつの上がらない男2人だけが集まって、今とは全然違う音楽制作環境で、4つしか音が入らないカセットテープのレコーダーで、どうやって作品作ろうかと工夫してましたね。でも「ビートルズも4トラックであれだけのものを作ったんだぜ」とか言ったりしていて。やっぱり2人とも音楽好きなんで、宅録を続けてたんです。で、カセットをスタッフに渡してオーガスタに入ることができたたんだけど。実はその時も年齢詐称してたんだよね。

――年齢詐称してたんですか(笑)?

岡本
うん。4、5歳くらいずつ。それがバレて、お前ら30歳越してんのかって言われて、(スガ)シカオより年上なの?って言われて。それくらい、どんな汚い手を使ってもいいから、音楽的に認められたり、それで何かできたらいいなっていうのがあった。音楽でなんとかしなきゃいけないなっていう気持ちがすごくあった。カセットテープの4トラックとはいえ、楽曲を作るという意気込みは今とそんなに変わらないんじゃないかな。もちろん細かいところはすごく緻密にはなってると思うんですけど、自分たちの音楽を形にしていく気持ちの部分は今とあんまり変わらないような気がするんですよね。

――佐藤さんはどうでした?

佐藤
単純に楽しかったですよ。音を混ぜて音楽の形を作っていくというのは楽しみながらやっていたし、今も変わらずそういう気持ちです。サウンド、もしくはその楽曲自体が、どういう形に出来上がっていくのかっていうのが楽しい。単純にそれだけなんですよね。
岡本
でも、デビュー前は焦ってたかな。

――年齢的にですか?

岡本
年齢的にもあるし、実家が商売やっていて自分が長男なんですけど、このままだと家を継がななきゃいけないなとか、その時はバイトしてたけど、正社員としてやっていくのかなとか。でもまあ、変な自信はあったかな。漠然と、それを仕事にしてるかどうかは別として、どんな形でも音楽をやり続けているだろうなという自信だけはありましたね。

ビートルズは、調べれば調べるほど面白くなっていく

――改めての質問になりますが、最初のアルバムの『ROPELAND MUSIC』から今作に至るまで、COILの楽曲にはビートルズへのオマージュがいろんなところに出てきていますよね。お二人にとってビートルズとはどうしてそんなに大きな存在だったんでしょうか?

岡本
僕がすごい好きなんですよね。洋介ももちろんお兄さんの影響を受けて知っていて、家に遊びに行くと裸でビートルズのレコードが立てかけてあったりしたけど、僕はそれこそ幼稚園に上がる前にビートルズを聴いてそれに喜んで踊りだしたらしいんですよ。それくらいルーツミュージックとして血肉になっていて。あと、ビートルズは資料というか、本にしろ、ブートレッグにしろ、レコーディング中のエピソードとか情報が入りやすかったんだよね。ビートルズって、情報を調べれば調べるほど面白くなっていくんですよ。ギターの音色、転調、メロディライン、機材、録音方法、デザインとかコンセプトも、知れば知るほど面白く感じる。デビュー前は『レコーディングセッション』っていうレコーディング日誌をずっと読んでいたし。でも、昔は「こういう感じにしたい」とか「ちょっと似過ぎかな」みたいに、距離感を置いて作ってたんですけど、今はもう聴き返したりとかしないですね。思い出すだけであのサウンドとかエッセンスとか雰囲気が蘇ってくるから。

――“ボンデージ・スーパーカー”って、資料では幻のデビュー曲って言われていますが、これはどういう経緯で幻のデビュー曲になって、どういう経緯で今作の1曲目に入ったんでしょうか?

岡本
当時のディレクターが気に入ってくれて、これをデビュー曲にしたいってずっと推してたんですけど、(オフィスオーガスタの)社長がRCサクセションのディレクターもやってたんで、どうしても“雨上がりの夜空に”と重なってしょうがないということでボツになったんです。女性を車に喩えて歌うっていうのがね。それで“天才ヴァガボンド”を書きおろしたという経緯があって。それ以来ずっと、出し損ねてきてしまって。今このギターポップの感じは無いだろうとか、40歳過ぎてこの感じは無いだろうとか、ね。でも、こうして50歳に近くなってくると、恥ずかしいとか恥ずかしくないとか、古いとか古くないとか関係なく、素直にいいと思ったものをいいと思った形で出すのがいいんじゃないかと思って。テンポやキーはちょっと変わってるんですけど、アレンジもほぼデモテープのままで録り直すことにしたんです。

――当時いろんなところにデモテープを送っていたお二人にとって、オフィスオーガスタの第一印象はどんな感じでしたか?

岡本
社長がそのとき坊主頭だったから「ヤクザなんじゃないか」って思ったけど(笑)。すごいビートルズが好きな社長で、「君たちビートルズ好きでしょ」みたいに言ってくれて、ちょうどその頃山ちゃん(山崎まさよし)はポール(マッカートニー)のソロっぽい『ラム』とかその辺りの雰囲気のある曲も作ってたんだけど、それほどビートルズのニュアンスやエッセンスを持っているアーティストがいなかったんで、すごく面白がってくれて、契約してくれて。フレンドリーな感じでしたよ。社長に初めて会った時はちょっと恐かったけど、音楽とかビートルズに対する愛情はやっぱり感じましたね。

COIL

岡本定義(7月27日生、神奈川県出身)と佐藤洋介(12月25日生、神奈川県出身)の2人によるユニット。
1998年10月、シングル「天才ヴァガボンド」でデビュー。完全アナログ自宅録音ユニットとしての活動スタイル、文学性の高い歌詞世界と独特のオルタナ・ギターサウンド、楽曲のクオリティーの高さで高い評価を集める。そのほか、両者ともソロとして他アーティストへの楽曲提供やプロデュース、映画音楽、エンジニアリングなどで、幅広く音楽活動を行っている。
2013年からは「ニコニコ生放送」にて、マンスリーレギュラー番組「COILのおしえて!パンポット先生(仮)」放送スタート。
11月13日には、初となるウェブでのオーガスタキャンプ「Augusta Camp 2013 Online Exclusive / Featuring COIL 15th Anniversary」の生放送が決定している。

オフィシャルサイト


『15』

2013年10月30日(水)発売
ATS-046 / 2,800円(税込)

【収録曲】
01. ボンデージ・スーパーカー
02. CASANOVA
03. ニューモーニング
04. 君とオンザラン
05. あまのじゃく
06. チョコレート・シティ
07. コールドターキー
08. 嘆きの人魚
09. 薔薇とシャボン
10. 僕と彼女とモーツァルト
11. バルコニー
12. ノスタルジア
13. 移動遊園地
14. 日蝕
15. 回想

[ ニコ生詳細 ]
Augusta Camp 2013 Online Exclusive
Featuring COIL 15th Anniversary
日時:11月13日(水) 20:00〜
出演:COIL / 杏子 / 山崎まさよし / あらきゆうこ / 元ちとせ / スキマスイッチ / 長澤知之 / 秦 基博 / さかいゆう

詳細はこちら

インタヴューArchives