NEXUS アーティスト・インタヴュー:クリストファー・オウエンス

 とても美しく、儚い物語が描かれている。ソフト・ロックやフレンチポップにも通じるような柔らかで甘いメロディ、洗練された洒落っ気を持つサウンドのスタイルに、繊細な声で綴られるセンチメンタルな歌。2012年7月、世界的な成功を収めたサンフランシスコのロックバンド、ガールズを脱退したクリストファー・オウエンスによる初のソロ・アルバム『リサンドレ』。タイトルにもなっている“リサンドレ”という女性との出会いをもとに書かれたというこの作品は、彼が実際に体験した物語を時系列順に追った一つのコンセプト・アルバムになっている。そこでは、世界各地を舞台に、恋の目覚めとその終わりを描く、ロマンティックなストーリーが綴られる。

 プロモーションのために来日取材を行った彼に、アルバムについて、自身について、そして今のポップシーンをどう見ているかについて、話を聞いた。

取材・文=柴那典

音楽を演奏することでどんなに自分が興奮するかについて書いた

――アルバム『リサンドレ』聴きました。どこか懐かしい感じ、切ない感覚のするアルバムでした。とてもパーソナルな物語を綴ったアルバムだけれど、同時に、素晴らしい映画がそうであるように、いろんな人が自分の思いを重ねられるものになっていると思います。

クリストファー
うん。それはいい感想だね。

――ソロ・アルバムを作るにあたって、まずは自分がガールズというバンドで体験した物語をロードムービーのような音楽にしようと思ったのはどういう動機だったのでしょうか。

クリストファー
まず、自分にとっては、全部の曲がパーソナルなことを語っているものだと思うんだ。ただ、今回のアルバムで初めてやったのは、自分が曲を書くことについての気持ちを書いたということ。音楽を演奏することでどんなに自分が興奮するかについて書いたんだよね。それは他では語ったことのない感情だと思う。あと、一つのアルバムの全体を一つのストーリーとして提示したという。

――自分が曲を書くときの気持ちを歌にするというのは、ガールズというバンドの体験と結びついて離れないものだった?

クリストファー
そうだね。やっぱり、ガールズというバンドが始まったときの最初のツアーの物語なので。もちろんすべてがあのバンドでの体験と繋がっているよ。

――それが、ロックバンドのサウンドではなく、ソフトでノスタルジックなポップソングとして結実したのは何故でしょうか。

クリストファー
そうだね、全体として見たときに雰囲気があって、思慮深くて、ロマンティックで、センチメンタルなところはあると思う。瞬間としてはロックンロール的なものは多いと思うし、スタイルは曲によって変化するとは思うけど。とにかく、自分にとって大事なのは、ストーリーを語る前にその物語のムードを作ることなんだ。

――アルバム全体のストーリーのために雰囲気を作ることが重要だった。

クリストファー
そうだね。それがこのアルバムの一番の挑戦だし、一番ユニークなところだと思う。一つのストーリーを一つのアルバムで語るのは、やったことがなかった。初めてのことだったので、それをいかに形にするのが重要だし、大きな挑戦だった。

――ニューヨーク、リヴィエラ、と、世界各地の都市の名前が様々な曲に現れています。まるでロードムービーのような感触もありますが、そういう作りにしたのは?

クリストファー
これは実際に起きたことを実際に時系列ごとに語っているので、脚色はないんだよね。ストーリーテリングにおいて、いくつかの古典的な形はあるよね。それに対してはものすごく意識的だったと思う。旅の物語であるということと、少年が成長して大人になっていくという物語、男の子と女の子が出会って恋に落ちるというボーイ・ミーツ・ガールのストーリーであったり。それが全てあるということに対しては意識的だった。

クリストファー・オウエンス

米サンフランシスコのロックバンドGirls(ガールズ)の元フロントマン&ソングライター。リヴァー・フェニックス他も所属していたカルト教団、チルドレン・オブ・ゴッドのヒッピーの子として生まれる。幼児期には、日本を含む世界中を旅し、外界から保護され、プレイヤー(祈り)・セッションに出席するという生活を送ってきた。16歳の時に教団から脱走。テキサス州に流れ着き、アマリロのパンク・シーンに没頭した後、サンフランシスコに移る。同地でアリエル・ピンクや彼のプロジェクトであるホーリー・シットとギグをするようになり、最終的にChet JR White(チェット JR ホワイト)と出会い、ガールズを結成した。ガールズは2009年にファースト・アルバム『アルバム』をリリース。このアルバムは新人としては同年最大の評価を獲得。その後のUSインディ・ギター・ポップの流れを作る歴史的な作品となった。EP『ブロークン・ドリームズ・クラブ』のリリースをはさみ、2011年にはセカンド・アルバム『ファーザー、サン、ホーリー・ゴースト』をリリース。アルバムはインディながらビルボードのチャートで37位を獲得。大ヒットを記録した。しかし、2012年7月、「僕はガールズを脱退します。今のところ個人的な理由と言っておきます。前進するにはしかたがなかったことです。曲を書いたりレコーディングをしたりすることは続けます。すぐにいろんなことを明らかにしていきます。これまでのすべてのことに感謝します」という言葉をツイッターに残し、クリストファーはガールズを脱退した。

http://www.randc.jp/
christopher_owens/top.html


New Album『リサンドレ』

2013年1月9日 日本先行発売
YRCU-98000 / 2,300円(税込)
※解説/歌詞/対訳付

[CD収録曲]
01. Lysandre's Theme / リサンドレのテーマ
02. Here We Go / ヒア・ウィー・ゴー
03. New York City / ニュー・ヨーク・シティ
04. A Broken Heart / ブロークン・ハート
05. Here We Go Again / ヒア・ウィー・ゴー・アゲイン
06. Riviera Rock / リヴィエラ・ロック
07. Love Is In The Ear Of The Listener / ラヴ・イズ・イン・ジ・イア・オブ・ザ・リスナー
08. Lysandre / リサンドレ
09. Everywhere You Knew / エヴリホェア・ユー・ニュー
10. Closing Theme / クロージング・テーマ
11. Part Of Me (Lysandre's Epilogue) / パート・オブ・ミー (リサンドレのエピローグ)

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