NEXUS アーティスト・インタヴュー:BOOM BOOM SATELLITES

デビュー15周年を迎えたブンブンサテライツが、アルバム『EMBRACE』を完成させた。「抱擁」を意味するタイトルの言葉通り、深く胸を揺さぶって持ち上げてくれるような、強烈な高揚感と大らかな優しさに満ちた一枚。ビートルズ“HELTER SKELTER”のカヴァーなど、彼らならではのエッジの鋭いビート、ロックバンドとしてのタフネスは健在。それだけでなく、アルバム終盤、タイトル曲“EMBRACE”から“NINE”でスケールの大きなカタルシスに至る流れが、とても感動的だ。

アルバムの初回盤で楽曲のパーツを配布してリミックス選手権の企画を行ったり、12月のツアーでは観客によるライヴ撮影を解禁し、その写真を使用して新曲“NINE”のミュージックビデオを制作したりと、新たな参加型の試みも意欲的に行う彼ら。3年ぶりの新作に至るまでの苦悩の日々から、アルバムに込めた思い、そして彼らが見据える“音楽の未来”までを語ってもらった。

ちなみに、このインタヴューをしたのは12月下旬のこと。すでに報じられている通り、その後、川島道行(Vo, G)の脳腫瘍の治療のため、1月から3月にかけてのライヴを中止することが公表されている。しかし、ここまでの15年間、不屈の精神を持って、何度も立ち上がってきたのがブンブンサテライツというバンドだ。きっと、より大きな存在になってステージの上に戻ってきてくれると確信している。

取材・文=柴那典

突きつけられた問いは「何をするか?」っていうこと

――アルバム、本当に格好よかったです。一つ一つハードルを越えている感じもあるし、端的に、開放感があって、気持ちが持ち上げられるものになっていて。そういうわけで、まず制作期間を振り返ってどういう期間だったのかを語ってもらえれば。

中野
まあ、最初はかなり五里霧中でしたね。アルバムの形が見えたのは、2012年に入ってからで、わりと最近なんで。

――そうだったんですね。

中野
振り返ってみると、辿り着いたのが奇跡的だと思えるぐらい、制作の初期はひどい状態だったと思う。そう言っても全然差し支えないぐらいかなり混沌とした制作だったんで。前のアルバムとその後のツアーと、ツアーのライヴ盤でキャリアに区切りがついて、そこから何をしていくかっていうのは白紙の状態からスタートしていたんです。それで、2011年は、僕らにとってはトンネルの中にいる期間が長かったというか。

――どういう状態だったんでしょう。

中野
その一年間はほんとに辛かったかな。精神的にはタフなんで何とか乗り越えられたけど、ちょっと異常な状態だったとは思いますね。毎日毎日スタジオに行って作業してるんです。手を動かしてはいるんですけど、成果がない。モチーフを一つ手に入れるにも莫大な時間がかかる。それは、どこに向かって何をやってるかっていうことに確信がないからで。手を動かしてるうちにいつかわかるんじゃないかと思いながら、やっぱり自問自答になる。聴きたい音楽は何か、自分が発信したい音楽は何か、そもそも音楽の必要性はどんなところにあるのか、そういうものがいっぺんに問題として噴出してしまっていた時期というか。

――いろんなことがゼロからリセットされたという感じがあったんでしょうか?

中野
そうですね。2011年の2月に新しいスタジオを構えたんですよ。前のスタジオを引き払わなきゃいけなくなって。で、自宅兼スタジオっていう場所に引っ越して制作スペースを構えた、そのタイミングで大震災があった。そもそも震災が来る前に「こっからは手探りだな」という風には思っていたんですけど、強制的にリセットをかけられたような感覚があって。で、技術的なことだけは自分の手には残ってるから余計たちが悪い。記憶喪失で音楽を全部忘れたり、楽器の弾き方も忘れちゃったりしていたら、初期衝動で楽器を練習しながら曲を作ってくこともできる。要は、突きつけられた問いっていうのは「何をするか?」っていうことなんです。たとえば神様がいるんだとしたら、「川島くん、中野くん、君たちはこれができるけど、これらできることがある中のどれをピックアップして、誰のために何をやりますか?」と問われているような感じ。その答えを出すのがすごく難しい時期だった。何のために音楽を作るのかという。

――それはほんとに根源的な問いですからね。しかも、スキルは卓越したものがあるから、やろうと思えば音楽は作れてしまう。

中野
そう。で、そうやって作ったものが一番自分の価値観の中ではNGなものなんですよ。職業作家的に自分のコピーをやるのは、ロックとかパンクとか、あるいはレベル・ミュージックとか、自分が好きなタイプの音楽からは一番離れてしまう。そこから2012年に入ってなんとか抜け出すことができて、見出せたことがこのアルバムに結実してるんです。

毎日手を動かして何かを見出そうとしていた。それがちゃんと実を結んだ

――川島さんは2011年の期間をどういう風に振り返って捉えてますか?

川島
自分が勝手に思い描いた正解とか目標に縛られて、手も足も出ないような状況もあったし、迷いみたいなものもあったと思います。やめるという選択もあっただろうし。続けるという選択を選んだとすれば進化なり成長なりはしなきゃいけないと思っていて。

――そこまでシリアスに考えたというのは、震災以降に生じた感情も影響していたんでしょうか。

川島
震災以降、やっぱりミュージシャンとして音楽をどう落とし込むのか、音楽の存在意義については考えました。音楽は直接的に傷ついてる人たちの傍にも届くわけで、その人たちにとっても、距離のある人にとっても、同じくその人の人生、日々の営みの中で必要とされる音楽であって欲しいから、そういったものとして音楽を届けたいっていう理想は持っていて。だけど、実際歌を歌うとか、言葉を音楽にするっていうことで、人を傷つけてしまったりするかもしれないと、勝手に出口のない思い込みを持っていて悩んだ時期があって。そういった大なり小なりの罪悪感みたいなものはあって。でもそれを少しずつ許したりとか、向き合うことで新しい一歩を踏み出したということもあって。それをそのものとして吐き出すことで浄化されることも音楽の機能としてあり得る。そこに立ち戻った感覚があったんですよ。作っていく中でそういう感覚を持ち得たっていうことは大きいかもしれない。

――お2人とも、「なんで自分は音楽をやるのか」っていうところまで立ち戻ったと。

中野
そこまで大袈裟じゃないけれど、僕らは、平常通りの音楽を作ろうっていう風に2011年の間、努めて頑張ってきたんですよ。これまでも誠実に音楽を作ってきたし、何かを変えることはないんだっていう風に決めてやってきた。でも、やっぱりものすごいプレッシャーを感じて。音楽家としてまっすぐ生きていくことがこんなに困難なのかっていうぐらい、何らかのプレッシャーがずっと働いている状態が続いていた。だから、やっぱり健康的な状態ではなかったと思うんですよね。それでも、時が解決してくれるだろうっていうのんきな考えでもなくて、毎日手を動かして何かを見出そうとしていた。それがちゃんと実を結んだと思ってるんですね。そうやって日々を過ごした中で、欠片みたいなものだけでも残しておいたから、それがアルバムとして最終的に形作られていると思うし、自分たちが表現者として何をしたいかを、改めて手繰り寄せてこれたと思う。だから、キャリアが一周した感覚は自分でも強く認識してますね。これでデビュー盤でもいいかなっていう気持ちがあるんです。

BOOM BOOM SATELLITES

1997年ヨーロッパでブレイクした中野雅之、川島道行からなるロックバンド。エレクトロニックとロックの要素を取り入れながら新しい未知の音楽を創造し続ける日本屈指のクリエイターである。ヨーロッパR&Sよりリリースされた12インチシングルをきっかけに、ヨーロッパの音楽誌「Melody Maker」は<ケミカル・ブラザーズ、プロディジー以来の衝撃!>と報じ、数々のヨーロッパ大型ロックフェスティバル、海外ツアーを敢行し多くのメディアに大絶賛される。数々のロックフェスティバルでオーディエンスに衝撃を残し国内外でライブバンドとして高い評価を受けている。デビューから現在に至るまでクリエイター、映画監督、アーティストからの絶大なる人気を誇り、楽曲提供やリミックスのオファーが絶えない世代を超えた不動の魅力を持ち合わせたアーティストである。

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new single

NEW ALBUM『EMBRACE』

2013年1月9日発売
初回生産限定盤(CD+DVD):SRCL-8162 / 4,750円(税込)
通常盤(CD):SRCL-8165 / 3,059円(税込)
Sony Music Shop


[ CD収録楽曲 ]
01. ANOTHER PERFECT DAY ※「スターシップ・トゥルーパーズ―インベイジョンー」テーマソング
02. HELTER SKELTER
03. BROKEN MIRROR ※「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」episode5主題歌
04. SNOW
05. FLUTTER
06. DISCONNECTED
07. DRIFTER ※Sony Ericsson「Xperia acro IS11S」CMソング
08. THINGS’'LL NEVER BE THE SAME
09. EMBRACE
10. NINE

[ DVD収録楽曲 ]
01. ANOTHER PERFECT DAY
02. BROKEN MIRROR
03. LOCK ME OUT
04. BACK ON MY FEET
05. WHAT GOES ROUND COMES AROUND
06. EASY ACTION
07. KICK IT OUT
08. PILL
09. MOMENT I COUNT
10. DIVE FOR YOU
11. PUSH EJECT


【ライヴ情報】
EMBRACE TOUR 2013
04月23日(火) Zepp Nagoya
04月25日(木) なんばHatch
05月03日(金祝) 日本武道館

以上3公演につきまして、予定通り開催したいと考えておりますが、治療の経過をみての最終判断が必要なため開催を一旦「見合わせ」とさせて頂き、後日正式に公演の開催決定/延期/中止の発表をさせて頂きます。 最新情報につきましては随時公式ホームページにてお知らせさせて頂きます。

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