NEXUS アーティスト・インタヴュー:Base Ball Bear 「僕は真ん中でいたいとずっと思ってた」――アルバム『二十九歳』と2014年の時代を巡る対話

『二十九歳』はセルフタイトル

――今回のアルバムの『二十九歳』というタイトルは、どういうところから来ているんでしょう?

小出
最初からありましたね。アルバムの制作を始めた初期は、本当はストーリー仕立てにしようかなと思っていたんです。でも説明的になるのが嫌だと思ったので、ストーリー仕立てというのはやめて。一つの考え方で作られるいろんな曲という構成にしようと思ってこれを完成させたんです。だから、最初の『二十九歳』とは実は意味が変わっているんですよ。

――どう変わったんでしょう?

小出
最初は、現実の「僕」と曲の中の「僕」という、二人の主人公がいて、それぞれが抱えているモヤモヤした部分や悩みというのが、二重構造の中で最終的に二人とも救われるということにしたかったんですね。その曲を歌うことで現実の僕も救われるし、曲の中の僕も救われるみたいな二重の救済にしたい。

――なるほど。美しいストーリーじゃないですか。

小出
美しいんですけど、この構造自体、すごく文学的なんだけど、説明的になってクサいなと思ったんですよ。だからそれをやめて、残った『二十九歳』というタイトルは、つまりセルフタイトルみたいなものなんですね。特に内容を説明したくないから、タイトルでも説明したくなかったので、極力意味の無いものにしようと思って、『無題』というのも意味があるし、『 』というのも意味ありげじゃないですか。だから、『二十九歳』という現在のバンドの平均年齢にしたと。だからセルフタイトルだと思ってもらって構わないです。

――ドキュメントすることの方に重要性を感じたわけなんですよね?

小出
そうです。

「普通」ということに向き合わざるを得なかった

――バンドっていろいろあるじゃないですか? 音楽的な格好よさを追求していればいい、歌っていることに意味なんかなくていいというバンドもある。でも、Base Ball Bearというバンドはそうじゃないですよね。何を歌うかが重要なバンドであると。その辺りは自分でどう捉えていますか?

小出
確かにバンドって音と中身と、どちらかだけで成立するんですよね。だけど、僕の考え方というのは、その両方とも高次元で成立させたいという考え方なんです。だから、4人で音を作るし、言葉については自分が深く考える。やって来た中で、言葉の比重を軽くした時期もあったんです。そうしたら、バンドをやっている実感というのが、僕個人に関しては薄らいだんですね。

――それはなぜ?

小出
自分がフロントマンとして歌う責任のわりに、言葉に責任がないのが不釣り合いだなと思ったんですよね。だから、“ドラマチック”とか“BREEEEZE GIRL”はとか、曲はいいんだけれど、言葉にあまり責任感がない。あの曲はそういう構造で作ったのでいいんですけど、ああいう曲ばかりをやっていると、なんかチャラいなと思ってしまう。

――なるほど。

小出
でも僕はチャラい人間じゃないから(笑)。人間性と噛み合ってないなと思ってしまう。でも重くしていくというのも違うから、基本僕はフラットなんですよ。そのフラットな状態、フラットな視点というのを実現したいと思ったし、そうなると、今回みたいに「普通」ということに向き合わざるを得なかった。それで向き合ってみたら一番厄介なブラックボックスだったという感じです。

“カナリア”はエンドロールの役割

――そういうコンセプトでも、最後に“魔王”“カナリア”という流れは決まっていたわけですよね? これはアルバムの中ではどういう象徴になってるのですか?

小出
本来、アルバムは“魔王”で終わりなんです。

――“カナリア”はエンドロール的な扱い?

小出
そうですね。製作中に“魔王”で終わりでいいかなと思いかけた時期もあったんですけど、でもやっぱり“カナリア”があることでやっぱりBase Ball Bearらしくなるし、“魔王”で終わる思わせぶりな感じも嫌だなと思ったので。最後“カナリア”がエンドロールになってる。すごく重要ですね。

――あれ、曲が「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」ってカウントで始まるじゃないですか。あれ、すごく重要だと思いました。

小出
ですよね。あれって、本編が終わって暗転して、エンドロールが流れ始めるという役割だから。
堀之内
あのカウントを録音するときにいろいろ注文がありましたよ。もうちょっとフザけた感じで、とか。
小出
あれは最後までカットしようとしてたんですけど、最終的に入れて良かったな。

みんな、同じように時代を捉えて作品を作っているんだな

――ここからはちょっと大きな話をしようと思うんですけれど、2012年から2013年くらいで、日本の世の中のムードが変わった感じがあるんです。それはどう変わったかというと、端的に景気が良くなった。90年代初頭からの「失われた20年」みたいなデフレの時代だったということがわかった。

小出
うん。

――それによって、ポップスの役割も変わりつつあると思うんです。閉塞感を共有するような役割が終わりを告げつつあるという。いわゆる「等身大」という言葉が効力を失いつつあるというか。

小出
それはわかりますね。

――そのうえで、「楽しさ」と「苛立ち」が力を持ち始めているという感覚があるんですね。刹那的な楽しさも共有されるし、何かに対しての怒りや苛立ちも共有される。そういう分断があらわれているような時代感がある。その辺はどうですか?

小出
その時代感は、僕も結構肌で感じているんですけど、その分断があると同時に、僕に近いような感性の人も結構いると思うんです。

――というのは?

小出
たとえば米津玄師さんの『YANKEE』というアルバムなんかも、結構スピリッツとしては近いと思ってるんです。それには結構ビックリしていて。似たような言葉も出てくるし。

――「呪い」ですね。

小出
そう、「呪い」。しかも『YANKEE』というタイトルじゃないですか。“Ghost Town”の元タイトルが「ヤンキーになりたい」だったんですよ。俺も地元の友達みたいになっておけば良かったという曲にしようと思ってたんですけど、そのタイトルを見て慌ててシフトして。“魔王”の最後の「呪い(のろい)を呪い(まじない)に転じさせる」ということを先にやってたらどうしようと思って、結構ヒヤヒヤしていたんです(笑)。

――あそこはすごく大事なところですもんね。

小出
あと、ゲスの極み乙女の新しいアルバムのタイトルが『みんなノーマル』だったりとか。やっぱり、それぞれ捉え方は違うけれど、同じように時代を捉えて作品を作っているんだなって思うんです。世間的なムードとか時代のムードを、肌で捉えて、誰よりも先に形にしていくという。

――そうなんですよね。

小出
そう考えると、ポップミュージックにそういうのは顕著に出てくるから。チームしゃちほこの“いいくらし”もそういう曲だし、ジャニーズWESTも“ええじゃないか”という曲を出したりとかしている。“ええじゃないか”という言葉が今出てくるのも意外と必然かもしれないと思ったし。やっぱり馬鹿にできないんですよね。

――そうですね。そういう言葉が欲されているところはあると思う。

小出
そうだし、作り手は敏感だから、それが出てくるという。

――たぶん小出さんは作家もやっているから、世の中に求められている言葉、時代のムードに適合する言葉を探るセンスや能力もあると思います。だけど、Base Ball Bearでやるのはそれじゃない。

小出
それじゃないですね。その原因を描写したいと思ったし、それを見ているということが重要だと思った。でも、そのスタンスは答えのない曲を作るということだし、答えのないアルバムを作るということにたどり着くということだと思うんですよね。だから、こういう作品を作るということ自体が、すごく意義のあることだと思う。それが全うできたのはよかったと思う。これって古畑任三郎の第1話の結末と同じなんですよ。見たことある?
関根
見たことある。こいちゃんの家で。
小出
古畑任三郎の第1話って、中森明菜さんが演じる女性コミック作家が主人公で、彼女のアトリエの地下で編集部の男性が死んでいるんですよ。その倉庫で、彼が白紙を持っているんです。ペンのキャップを外している。要は書ける状態にして、何にも書いていないんですよ。どういうことかというと「書ける状態なのに書かない」というのがダイイングメッセージだと。だそれこそが犯人を示していると。つまり、それについて描写しないということが描写することになる。

――なるほど。

小出
まあ、音楽でそれやる必要があるのかということなんですけど(笑)。難しいし伝わりにくいし、こんなこと誰もやらないはずだと。それはそうだなと思ったんですけど。でも誰もやっていないからこそ、その立場を獲得していくというのが、“魔王”で言ってることだし、これだなと思っていますね。

――5年後、10年後に振り返ってみて、こういうことだったんだというのが後々証明されるかもしれないですね。

小出
俺もたぶん45歳くらいでやっと評価されるだろうなって思います。でも間違っていないなと思いますし、今こういう時代なんで、やっぱりその同じような感性のアーティストの人もたくさんいるということは、同じようなアンテナを持っている人も絶対いると思うんで、その人はこのレイヤーを何枚もくぐって奥まで行ってもらいたいなと思う。もちろん、サウンドだけでも最後まで楽しめるアルバムになっていると思いますけどね。

――まあ、今回のインタビューはすごく込み入った話だけれど、普通に聴いて格好いいロックアルバムですからね。

小出
うん。いろんな風に楽しんでもらえたらって思います。


アーティストインタヴュー|Base Ball Bear  アーティストインタヴュー|Base Ball Bear


Base Ball Bear

メンバーは、G&Vo小出祐介、B&Cho関根史織、G湯浅将平、Dr&Cho堀之内大介。 2001年、同じ高校に通っていた4人のメンバーにより、学園祭に出演するために結成。10代のころから都内のライブハウスに出演し、その高い音楽性と演奏力が大きな話題を呼ぶ。2006年、東芝EMIよりメジャーデビュー。 2012年1月3日、2年ぶり2度目となる日本武道館での結成10周年ワンマンライブを大成功させる。2013年2月13日、初のベストアルバム「バンドBのベスト」とシングル「PERFECT BLUE」を同時リリース。2014年6月4日、約3年振りとなるニューアルバム「二十九歳」をリリースする。

オフィシャルサイト


『二十九歳』

2014年6月4日(水)発売
完全生産限定盤(CD+DVD):
UPCH-29167 / 3,500円(税抜)
通常盤(CD):
UPCH-20353 / 2,931円(税抜)

【収録曲】
01. 何才
02. アンビバレントダンサー
03. ファンファーレがきこえる(Album Mix)
04. Ghost Town
05. yellow
06. そんなに好きじゃなかった
07. The Cut feat.RHYMSTER(Album Mix)
08. 方舟
09. The End
10. ERAい人
11. スクランブル
12. UNDER THE STAR LIGHT
13. PERFECT BLUE(Album Mix)
14. 光蘚(Album Mix)
15. 魔王
16. カナリア

[DVD収録内容(予定)]
・メンバーによる初の公式インタビュー
・2014年4月4日、TOUR「光蘚」ファイナルとして名古屋ボトムラインにて敢行されたBase Ball Bearによる最新ライブ映像 (収録曲未定)


■LIVE INFORMATION

「2014年秋ツアー」※タイトル仮

09月06日(土) 高崎club FLEEZ
09月07日(日) 水戸LIGHT HOUSE
09月13日(土) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
09月14日(日) 米子AZTiC laughs
09月16日(火) 京都磔磔
09月20日(土) 札幌PENNY LANE24
09月21日(日) 帯広Rest
09月23日(祝・火) 函館club COCOA
10月04日(土) 高松DIME
10月05日(日) 高知X-pt.
10月11日(土) 宮崎SR BOX
10月12日(日) 福岡DRUM LOGOS
10月16日(木) HEAVEN’S ROCK Utsunomiya
10月18日(土) 新潟LOTS
10月19日(日) 金沢AZ
10月25日(土) 広島CLUB QUATTRO
10月30日(木) なんばHatch
10月31日(金) Zepp Nagoya
11月02日(日) 仙台darwin
11月03日(祝・月) 盛岡CLUB CHANGE WAVE
11月07日(金) Zepp DiverCity Tokyo
11月11日(火) 下北沢GARAGE

チケット:4,167円(税別)
一般発売:7月12日(土)10:00

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