NEXUS アーティスト・インタヴュー:avengers in sci-fi 木幡太郎と語り合う、avengers in sci-fiと「ロックの進化」の原理

自分が聴いてヤバいと思える音楽を作るのが出発点だった

――なるほど。今回の取材は、ベスト盤の話だけじゃなく、もう一つ企画を持ってきたんです。僕が以前にやったインタヴューを読み返して、そこでの太郎さんの発言をいくつか持ってきたんですけど。

木幡
マジですか?(笑)。

――最初にインタヴューでお会いしたのが2008年の『SCIENCE ROCK』の時で、その時にもハイスタとかREACHとかに影響を受けたという話をしていたので、さっきのAIR JAMの話に繋がった気がしていて。

木幡
ははは、そうですね。

――その時のインタヴューでは、ニルヴァーナからマイブラ、プライマルという90年代のロックを聴いて、AIR JAMのムーブメントの目の当たりにして、バンドを始めたと言っていたんですけれども。今の自分から振り返ると、その頃はどういうことを考えていたんでしょう?

木幡
その頃の初期衝動ですか?

――うん。

木幡
なんと言うのかなあ、すごく志が高かったんですよ。自分でオリジナルの曲を作ってオリジナルのバンドをやるんであれば、他に代わりのきくバンドであっちゃいけないと思っていて。そもそも、どのバンドを聴いてもツボにはまらなくなった時があって、それがこのバンドを始めた時だったんです。自分に聴かせるものとして作るというか。自分が聴いて、あれのパクリだとか、あのバンドのフォロワーだなって、自分をがっかりさせないバンドにする。自分が聴いてヤバいと思える音楽を作るのが出発点だったというか。ほんとに志が高かったんです(笑)。

――なるほど。確かに2008年当時のインタヴューでも、「おっさんがやっているつまんねえ音楽が相変わらず格好いいって言われてる」って言っていて。

木幡
はははは!

――めちゃパンクな発言だったんですけど、その真意は?

木幡
このバンドを始めたときって、ポスト・ロックが古いものを解体していくというムードがあったのと同時に、ちょうどザ・ストロークスとかがデビューして、スリーコードのロックンロールに回帰していく、みたいな流れがあった頃で。両極端だったんですよね。どっちも何かを犠牲にしている感じがあった。かたや懐古的過ぎるし、かたや破壊的過ぎるというか。ロックが構築してきた歴史を全部否定するような、ラジカル過ぎるのもあって。ウチらとしては、どっちのいいところも持っていきたかったんですよね。そこから「おっさん」発言が出てくるとはちょっと思えないんですけど(笑)。

――実際、その当時に「ロックはどんどん進化しなければいけないという意識がある」と言っている。それは今語っていただいたようなことですよね。

木幡
そうですね。なんというか、諦めている人が多過ぎるような気がするんですよね。人間が想像したものって、確実に実現してきたと思うんですよ。音楽もそうだと思う。ロックンロールリバイバルって、僕、すごく嫌いだったんです。

――当時から言ってました。ガレージ・ロックのリバイバルって、何が新しいんだって。

木幡/dt>
91年の段階でマイブラの『ラブレス』があったわけじゃないですか、そういう歴史を踏まえているはずの人たちがなんでガレージ・ロックに回帰してしまうのか、わからなかったんですよね。そこに諦めを感じたというか。

――諦めというのは?

木幡
もうちょっと上の世代の人はそう思ってないかもしれないけれど、90年代のロックまでは進化の過程にあったと思うんです。でも、00年代からはリバイバルばっかりになって。それが逆行していると思った。今から思えば、アークティック・モンキーズとかザ・ストロークスとか、そういうバンドには新しいものがあったんだなとは思いますけどね。

人間の本能の中にある酩酊感を追求していきたい

――もう一つ、昔にやったインタヴューを探っていたら、最初にやっていたバンド、avengers in sci-fiの前身バンドの名前が「アトム・ハート・マザー」だったということですけれど。

木幡
ははは! そうだった。

――あの名前は、今振り返るとどう?

木幡
プログレッシブだなって思います。それこそおっさんですけどね。批判してる場合じゃないや(笑)。でも、そういう、わけがわからないものへの憧れはありましたね。プログレッシブとかサイケデリックとか。その二つの言葉にはやたらと惹かれていた気がします。言葉では説明しづらい感覚として、体験するしかない世界というか。

――それ、過去のインタヴューでちゃんと太郎さんは言葉にしてるんですよ。

木幡
マジですか(笑)?

――これは2009年、『jupiter jupiter』の時にやったインタヴューなんですけれど、「太古の人間が生まれて最初に鳴らす音楽みたいな、プリミティブなパーティー感を取り入れたい」と言っていた。エッセンスとして、超越的なものをやりたいという。そういうことですよね。

木幡
まさにそうで。話は変わるんですけど、最近、すごくサイケデリックな体験をしたんですよ。といっても別にクスリやったとかじゃなくて(笑)。この間、マイブラのライヴに行ったんですよ。ずっとフェイバリットだったバンドだったんで、本当に念願叶って、という感じなんですけど。

――どうでした?

木幡
最後の“ユー・メイド・ミー・リアライズ”で、15分とか20分とかノイズを発生させ続けるっていうのをようやく体験して。それまではブートレグのビデオとかでしか観たことがなかったんです。で、10分以上ノイズを浴び続けて、気持ちいいはずがないって思ってたんですよ。愛ゆえですけど、マイブラって過大評価されているところがあると思っていて。でも、あの曲で15〜20分の爆音のノイズが映像と共に流れていて。それが、本当にいわゆるサイケデリックとしか言いようがない体験だったんです。ノイズが重くて、疾走感があって。あのライヴ、行きました?

――行きました。特に最後のノイズは、ジェット機のエンジンの前で爆風を浴びてるみたいな体験でしたね。

木幡
しかも、ワープするような映像がずっと流れていて。あれを説明しようとするなら、サイケデリックって言葉しかないって思って。あれって、人間の本能の中に備わっている感覚じゃないかって思うんですよね。視覚と聴覚が脳内でリンクした時に生まれる酩酊感、あれを感じとれるのって、人間の原初の頃から根源的に備わってる要素なんじゃないかと思う。いいメロディーとかいいハーモニーを綺麗だって感じるのと一緒で。ダンスミュージックの高揚感も同じだと思うんです。太古から存在しているものだという。そういうところを追求していきたいっていうのは、常にあります。

――2012年の『Disc 4 The Seasons』では、“和”の要素という、今までにない方法論が生まれていますよね。辿り着こうとしている場所は同じでも、新しい登山道を見つけたというような。あの頃は振り返ってどうですか?

木幡
最近なんで、やっぱり『Disc 4 The Seasons』は好きですね。やっと趣向がプロデューサー的になってきたというか、俯瞰した目線で音楽を作れるようになった気がします。それまではまだ若いバンドだったんでしょうね。だから、今になって昔の音源を聴くと、本能的で主観的な目線だと思って。それが「なんでこんなアレンジにしたんだろう」って違和感になるんですけれど。

――“和”の要素を打ち出しはじめたというのは?

木幡
和的なものって、それまでも内から出てきていたんですよ。でも、それまではあえて抑えていたところがあって。日本人が“和”に走るのって、短絡的だと思っていたんですよ。グローバルな視点から見ると色物っぽいというか。日本人がイロモノっぽく振る舞うのは負けたようで悔しいし、そこに頼りたくない気持ちがずっとあったんです。でも、もうちょっと肩肘張らずに、自然なスタンスで音楽を作ろうと思うようになって。そうすると、和的な要素が出てくるし、それが気持ちいいと感じる自分がいたので。そういうところも出していこうと思ったんですよね。

――なるほど。

木幡
演歌的なメロディーもそうですけど、トラディショナルなものって、どの文化でも共通するところがあると思うんですよね。前にも話したけど、オートチューンのケロケロする声って、ソウルのしゃくれにも近いし、それって演歌でこぶしを回すのにも近いというか。

――前にジェームス・ブレイクとボン・イヴェールの共通点について語ってもらった時だ。(http://www.nexus-web.net/interview/avengers/index3.php)。人が気持ちいいと感じるポイントって、国とか文化を超えて共通するものがあるんでしょうね。

木幡
アフリカの音楽でも、意外と日本の雅楽に近いものがあったりして。そういうところはすごく感じますね。

――あと、もう一つ、今日の話もそうなんですけれど、これまでのインタヴューを読み返すと、必ず洋楽のアーティストの名前を挙げている。

木幡
ああ〜。

――しかも、「最近これを聴いて気に入ってる」って話だけじゃなくて、欧米の音楽シーンにどういう流れがあるかを常にチェックしていて、それを自分の表現にもフィードバックさせている。

木幡
卑屈な野郎って感じですけどね(笑)。洋楽コンプレックスみたいな。

――ははははは!

木幡
まあ、新しいもの好きって言ったら簡単ですけど、新しいものに常に触れて刺激を受けたいっていう気持ちが常にあるんですよね。それって、苦痛な時もあるんですよ。音楽をやっていると、CDを聴く時にどうしても参考資料になってしまうんで。DJ的な視点だったら紹介するだけで楽なんだけど、バンドで咀嚼したい思いもある。そういう風にやっているところはありますね。

――自分のやりたいことだけを追求しているんじゃなくて、今のムーブメントにどういうものがあるのかを捉えて、それに対してどうアプローチするかという発想があるバンドなんだと思います。

木幡
そうやってロックって進化してきたと思ってるんですよね。デヴィッド・ボウイがソウルを咀嚼しきれなくて面白い音楽になった、とか。ギャング・オブ・フォーとか、ポスト・パンクの人たちもそうですよね。白人がファンクをやってみたら全然できなくて、それが逆に面白かったという。トーキング・ヘッズも面白いし。そういう、「なんちゃって」な感覚がすごく面白いんですよ。そうやって進化してきたものがロックなんじゃないかと思うんです。

avengers in sci-fi『Selected Ancient Works 2006-2013』Special Site
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avengers in sci-fi

木幡太郎 (Guitar/Vocal/Synthesizer/Samplar/
Song&Lyrics)
稲見喜彦 (Bass/Vocal/Synthesizer/Samplar)
長谷川正法 (Drums/Percussion/Samplar/Chorus)

木幡太郎、稲見喜彦、長谷川正法により2002年に結成。最小限の3ピース編成でありながら、シンセサイザー/エフェクト類を駆使したコズミックで電撃的なロックを響かせ、“スペース・ロック”とも表される独自の近未来的とも言うべきサウンドを大胆に展開。木村カエラの「BANZAI」(2009年)をプロデュースするなど、高い音楽的IQが話題を呼ぶ。昨年はNew Album 「Disc 4 The Seasons」をリリース。SHIBUYA-AXでのワンマンライブ、全国ワンマンツアーを行った。6月19日に新曲&ライブプレイ率上位の楽曲を収録した初のベストアルバム「Selected Ancient Works 2006-2013」をリリースする。

http://www.avengers.jp


Best Album
『Selected Ancient Works 2006-2013』

2013年6月19日(水)発売
VICL-64038〜9 / 2,900円(税込)

[CD収録曲]
■DISC 1
01. The Planet Hope
02. Yang 2
03. Homosapiens Experience(2013 Mix)
04. Sonic Fireworks
05. Nayutanized(2013 Mix)
06. Psycho Monday
07. Delight Slight Lightspeed
08. Beats For Jealous Pluto(2013 Mix)
09. Starmine Sister(2013 Mix)
10. Universe Universe
11. Before The Stardust Fades
12. Cydonia Twin
13. Wonderpower
14. Wish Upon The Diamond Dust
15. Radio Earth
16. Crusaders(New Song)

■DISC 2 [Selected Ancient Mixes]
01. Yang 2
02. The Planet Hope
03. El Planeta / Death
04. Wonderpower
05. Odd Moon Shining
06. BANZAI (Remix)
07. Pulsar A

[ LIVE INFORMATION ]

■ HighApps Tours
6月03日(月) 高松DIME
6月05日(水) 福岡Queblick
6月06日(木) 広島ナミキジャンクション
6月14日(金) 札幌DUCE
6月16日(日) 仙台CLUB JUNK BOX

■「avengers in sci-fi presents “SCIENCE ACTION”」
6月23日(日) 東京・渋谷O-EAST
 guest:9mm Parabellum Bullet
6月26日(水) 大阪・心斎橋Music Club JANUS
 guest:Sawagi
6月27日(木) 名古屋・池下CLUB UPSET
 guest:Sawagi

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