<インタヴュー> sasakure.UK「人と異形のものの共存というのは、歌とボーカロイドとの共存でもある」ーーsasakure.UKがボーカリストと描き出す物語音楽の新たな境地

<インタヴュー> sasakure.UK「人と異形のものの共存というのは、歌とボーカロイドとの共存でもある」ーーsasakure.UKがボーカリストと描き出す物語音楽の新たな境地

sasakure.UKがニューアルバム『不謌思戯モノユカシー』をリリースした。

今作は、異形の存在である「アヤカシ=(妖禍子)」と人間の少年少女たちとの交流、そしてそこから起こったさまざまな顛末を描いたストーリー仕立ての一枚。昨年のミニアルバム『摩訶摩謌モノモノシー』の続編にあたる内容だ。

そして、本作の特徴はボーカロイド、生身の歌声、インストが入り混じった構成になっていること。しかもそれが物語の世界観とも深いところでリンクしている。さまざまなキャラクターが織り成す物語がその背景にあり、アートワークやパッケージも含めてそれを象徴する一つの作品として仕上がっている。

果たしてどういうことなのか。彼に、作品の構想と背景を語ってもらった。

取材・文=柴 那典


最初に物語のプロットと、街とキャラクターの設定を作った


ーー今回のアルバム、初回限定盤のパッケージがめちゃめちゃ凝ってますよね。バカみたいな感想ですけど(笑)。

sasakure.UK:ありがとうございます(笑)。

ーーノートや護符のステッカーやお守りのストラップが封入される。これはどういうアイディアから?

実はこれはアルバムのストーリーと連動しているグッズになっているんです。主人公のケイ少年が、妖禍子たちのことを書き留めて持ち歩いていた「妖禍子日記(あやかしにっき)というノートが物語のキーになっていて。なので、実際のノートも一見普通のノートに見えるんですけど、よく見ると妖しい雰囲気を醸し出しているものになっているんです。

ーーそもそも、今回のアルバムは前作『摩訶摩謌モノモノシー』からの続編ということで作られたんですよね。

そうですね。『摩訶摩謌モノモノシー』の物語をさらに膨らませて、あちらが登場人物の紹介と世界観のさわりという立ち位置での作品ならば、今回の『不謌思戯モノユカシー』はストーリーの本編、完結編という形で作りました。

ーー最初から物語の構想のスケールとしてはこれくらい大きなものがあった?

最初からありました。まずは学校や街のような大きな舞台を用意して、その中でキャラクター同士が絡み合う、そこからストーリーが展開するという。群像劇のような形で進めていくイメージで作っていきました。

ーー改めて、そういう物語を元にしたアルバムを作ろうと思ったのは、どういうところからだったんでしょう?

自分は物語を構想したり、ストーリーのアイディアを作るのがすごく好きなんです。なので、楽曲を物語形式に、いっそのことアルバム全体で世界観が統一されたものを作ってみるのはどうだろう、と思ったんですね。だから最初に物語のプロットと、街とキャラクターの設定を作ったんです。そのキャラクターをどうやって動かしていくか、どういう風に展開させていくかっていうことを意識しながら2枚のアルバムの構成を組み立てていきました。

ーーアルバムには嫌な出来事をすべて空想の妖怪のせいにしてノートに綴る中学生ケイや、同級生の女の子イチジク、異形の存在「妖禍子」というキャラクターが登場します。舞台はとある街の学校になっているわけですが、そのイメージはどういうところから膨らんでいったんでしょうか。

半分は自分の地元からアイディアをもらってます。自分は田舎の街の出身で、学校まで距離もありましたし、閉鎖的なコミュニティの中で濃厚な人間関係を感じることも多かった。そういった経験を投影する場として、学校を舞台にすることに決めました。そこで様々な登場人物が登場して、その中でどう日常と共存していくのか、そういうストーリーを色々考えていました。

ーー「中学校」「ノート」「妖禍子(アヤカシ)」っていうキーワードはどういう風に出てきたんですか?

人生の中でも最も多感な時期を描きたいと思ったので、中学生とその舞台として中学校を設定しました。ノート=日記なんですが、これについては、自分が実際に中学生の頃にいろんなことを綴っていたんです。それは良いことも悪いことも、詩だったりイラストだったり毎日何でも書くノートがあったんですけれども、そこからヒントを得ていますね。妖禍子は、身近で偉業な存在というものをモチーフにした時に、日本ならば“物の怪”のような存在を登場させたいなと考えました。


1人のキャラクターに、それを担当するボーカリストがいる


ーー『摩訶摩謌モノモノシー』と『不謌思戯モノユカシー』はどういう風につながっているんでしょうか。

実は曲の主人公のキャラクターとボーカルが対応しているんですね。2枚のアルバムで同じボーカリストの方にお願いした曲、同じボーカロイドを用いている曲は、それぞれ同じキャラクターを主人公に据えた曲になっているんです。それぞれのキャラクターの続編的なエピソードや前日譚が、こちらのアルバムで語られているという。

ーーなるほど。ということは、いろんな人をゲストに迎えたのは、単にサウンドのバラエティ以上にいろんな意味がある。

そうなんです。1人のキャラクターに、それを担当するボーカリストがいるというコンセプトなんですね。だからお願いする方にも、そのキャラクターの情報を伝えて歌ってもらいました。「このキャラクターは奥に闇を抱えているんです」だとか。そうした方が曲の深みも増すし、曲の背景や奥行きも出てくるのではないかと思ったんです。

ーーなるほど。ということは、ボーカリストもボーカロイドも演者としてアルバムに登場している。

まさに演者ですね。声の質だけでなく、心情やキャラクターも意識して歌ってもらいました。

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sasakure.UK
(ささくれ ゆーけい)


福島県出身。作詞・作曲・編曲の全てをこなすサウンド・プロデューサー。幼少時代、8ビットや16ビットゲーム機の奏でる音楽に多大な影響を受けて育つ。学生時代には男声合唱を学びながら、木下牧子、三善晃といった作曲家や、草野心平、新美南吉などの詩人・文学作家の作品に触れるようになり、この頃から独学で創作活動を開始。時代を越えて継承されてゆく寓話のように、物語の中に織り込められた豊かなメッセージ性を持つ歌詞と、緻密で高度な技術で構成されたポップでありながら深く温かみのあるサウンド、それらを融合させることで唯一無二の音楽性を確立。また、楽曲のコンセプトや世界観をもとに自らイラストや映像の制作も手掛けている。矢野顕子のアルバム『飛ばしていくよ』(2014年)にトラックメイカーとして参加。近年では様々なジャンルのクリエイターとのコラボレーションも企画・監修している。


オフィシャルサイト


NEW ALBUM『不謌思戯モノユカシー』


初回生産限定盤(CD+DVD+グッズ):UMA-9067 / 3,700円+税


通常盤(CD):UMA-1067 / 2,700円+税

2015年12月2日(水)発売
[ 収録楽曲 ]
・DISC1 / CD
01. ようこそ、不謌思戯
02. ピンボケ世怪平和 feat. Annabel
03. ポンコツディストーカー feat. IA
04. クレイマーズ↑ハイ feat. あやぽんず*
05. n o u r
06. ゴースト・ライト feat. 重音テト
07. ヤチヨノ子守唄 feat. そらこ
08. ウバワレタモノ feat. lasah
09. 阡年と螺旋、散るものを feat. すぃ
10. 百鬼夜行(MillionGhostWander)
11. ki ki kai kai feat. GUMI
12. ア(マ)ヤカシ・モノガナシィ feat. ピリオ
13. …to mo da ti ?
14. ガラテアの螺旋
15. 閃鋼のブリューナク feat. ピリオ

・DISC2 / DVD(初回生産限定盤のみ)
01. tig-hug feat. GUMI [Music Video]
02. ネコソギマターバップ feat. 重音テト [Music Video]
03. ポンコツディストーカー feat. IA [Music Video]
04. 百鬼夜行(MillionGhostWander) [Music Video]
05. ガラテアの螺旋 [Game Movie]
06. 閃鋼のブリューナク feat. ピリオ [Game Movie]


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