<インタヴュー> 長澤知之「自分の人生が見えるものだから」――長澤知之が語る、部屋と妄想と音楽

長澤知之

ここのところ、長澤知之は「部屋」をテーマに音楽活動を行ってきた。4月から9月にかけて東京・青山にてマンスリーライブ「IN MY ROOM」を行い、11月には同じコンセプトでのツアーも開催。ステージを部屋に見立て、そこにお客さんを招き入れて弾き語りで歌い、リラックスした環境で音楽を奏でてきた。

アルバム『長澤知之III』も、やはり部屋がポイント。バイノーラル録音を駆使し、ヘッドフォンで聴くとまるで目の前で彼が歌っているかのような臨場感をおぼえるような楽曲も収録している。「享楽列車」や「そこ」など、柔らかな曲調ながら、新曲には鋭くヒリヒリとした筆致で今の社会を切り取る彼ならではの視点も息づいている。

実は当サイトでは、2年前に「部屋で弾き語り」という動画シリーズ企画も掲載。久々のインタビューでは、現在の彼の音楽との向き合い方を語ってもらった。

ライヴ写真=杉田 真   取材・文=柴 那典



やっぱり酒飲みながらいろいろ妄想するのは楽しいんですよ



――そもそも部屋で弾き語りというのはどういうところから始まった話だったんですか?

長澤:まず、部屋のほうが落ち着くからっていうのがいちばん大きいですね。それに、部屋だと妄想がいろいろできるので。

ーー妄想ができる。

うん。例えば電気を消して、歓声が沸くことを想像しながらギターを弾いていたら、何万人の観客の前で歌ってる妄想だって勝手にできるじゃないですか。弾き語りだとかバンドだとか、そういうことにとらわれずに、いろんなことができる。そういう妄想が実際にできるライヴができたらいいなっていうものがあったんですね。あとは、部屋だとリラックスするし、そういう環境で歌えば歌声はいちばん良くなるからっていうのもありました。

ーー実は、2年前にNEXUSのサイト上で「部屋で弾き語り」という連載動画を公開させていただいたんですよね。

はい、やりました。

ーーあの頃から、リラックスした環境で歌声がよくなるという実感があった。

そうです。あの経験がすごく糧になりましたね。というのも、あの時にも部屋でリラックスした状況でライヴをしたいという話をしていて。あれは事務所のスタジオだったんですけど、歌詞の紙を散らかしたりして、なるべく部屋に近づけるようにしたんですよね。「ああいう感じでライヴをやりたい」っていう、一つのきっかけになりました。

ーーたとえライヴのステージだとしても、それを部屋のようにすることで、妄想の部分がふくらんでいく。

そうですね。妄想が叶っていくという。まず、自分の部屋なのにお客さんがいるっていう状況が夢の実現の一つですから。それが楽しいですよね。

ーーなるほどね。ということは、あのライヴと今回のアルバムでやっていることというのは、やっぱり音楽と生活が近いところにあるという感覚、そしてそこに妄想が介在しているという感覚なんですね。何より普段からそういう風にギターを弾いて歌っている、という。

そうですね。それを実現したいなと思いました。

ーー今も基本的にそういう毎日を送っている?

そうですね。やっぱり酒飲みながらいろいろ妄想するのは楽しいんですよ。それを一人でフリーダムにやってる状況、そういうときの開放的な歌声を人に届けられたらいいなって。だから、そういう場所をいただけたということに感謝しますね。

長澤知之

空間の中で響くものをそのままつかまえる



ーーアルバムのコンセプトも「IN MY ROOM」というライヴと繋がっているわけですよね。

そうですね。「IN MY ROOM」っていう企画を話しているうちに、まずどういう形で出すかというところから話していって。たとえば毎月出すのか、録音をどうするかとか、いろいろ話したんですけれど、結局自分のやりたいことをやったものになったという。で、そう思えば、結果論なんですけども、とっても妄想っぽい「IN MY ROOM」な感じになりました。

ーーアルバムでは3曲でバイノーラル録音を取り入れていますよね。しかも、それぞれ方法も違う。

そうですね。

ーーまず「宛のない手紙たち」は、まさに長澤さんが暮らしている自宅の部屋で録音されたと。これはどういう風にやっていったんですか?

これはですね、機材を自宅に持ち込みまして。部屋にダミーヘッドっていうものを置いて、そいつに向かって歌ったんです。

ーーマネキンの頭みたいなヤツですね。

そうですね。俺の部屋、ほんとに散らかってるから、みんなイヤな顔してたけど(笑)。でもいろんなものが置かれている状態の音が出てくるんで、そういう意味ではドキュメンタリーな音だったし、素敵なものになったと思ってますね。

ーーこの曲って、ヘッドフォンをして聴くと、長澤さんが部屋をうろうろしたり、いろんなほうを向いて歌ってるのがわかる。

そうですね。

ーーレコーディングの常識で言えば、マイクにきっちり向かって歌うのが当たり前ですけれど、そうじゃないですよね。

でも、部屋で歌う時はマイクがないので、あっち向いたりこっち向いたりするのは普通ですし。ギター持ちながら立ってうろうろしながら歌うこともあるし、そう思うとバイノーラルレコーディングっていうのは空間の中で響くものをそのままつかまえるんで、「ああ、最高に楽しいなぁ」と思いながらやってました。

ーー“犬の瞳”はスタジオでのバイノーラル録音。これはどうでした?

やっぱりスタジオではその場所の音が出ますし、デカい声で歌えることができますし。コーラスはダミーヘッドを真ん中に置いて、その周りを囲んで歌ったらどうなるかなということをやって。これも楽しかったですね。臨場感もまた違うし。

ーーそして“いつものとこで待ってるわ”は、ライヴでのバイノーラル録音。この3パターンがあるわけなんですね。

そうですね。「IN MY ROOM」っていう企画とともに、それぞれ全然違うやり方で空気感を閉じ込めることが面白いなと思いました。で、「いつものとこで待ってるわ」っていうのはとりわけライヴでしか歌うことがなかったんで、どうせ録るならばライヴのテイクを録りたいなと思いまして。

ーーこの3曲はどれも昔からある曲ですよね。これは今もやっぱり歌い続けているわけで、今の自分にとってはどういう曲なんでしょうか。

今の自分にとっても大切な曲なのは言うまでもないんですが、例えばベクトルは違えど感情は同じであったり、解釈は変わったけれどもまた新しい喜びが生まれたり、少しずつ変わってくるところもあるんです。一緒に育っているというか。そんな感じですね。

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2006年「僕らの輝き」でデビュー。以降、コンスタントにライブ活動を行いながら、2011年4月に発表した自身初のフルアルバム 「JUNKLIFE」が各所で大評判となり、活動の幅が一気に広がっている。 只今もっともアツいアーティスト。 2013年11月6日セカンドフルアルバム「黄金の在処」をリリース。12月には、 “共演したいアーティスト”を招く対バン型自主企画イベント「シークレット ライド7」、2014年2月には、全国5カ所で、ワンマンバンドツアー「Nagasa・Oneman8 Band Ver.」を開催する。

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ニューアルバム
『長澤知之Ⅲ』

長澤知之 Ⅲ ATS-55 / 2,300円(税込)
[ 収録楽曲 ]
01. 只今散歩道
02. 享楽列車
03. バニラ
04. 犬の瞳
※Binaural Recording
05. シャウト
06. そこ
07. 宛のない手紙たち
※Binaural Recording at 506号室
08. そこぬけ
09. いつものとこで待ってるわ
※Binaural Live Recording at 月見ル君想フ 2014.7.29

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長澤知之 LIVE 〜IN MY ROOM〜 ライヴレポート

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