<インタヴュー> ぼくのりりっくのぼうよみ「悲しいものを俯瞰的なところから見ている。その両方がずっとある」――2015年、最も鮮烈な登場を果たした17歳の肉声

<インタヴュー> ぼくのりりっくのぼうよみ「悲しいものを俯瞰的なところから見ている。その両方がずっとある」――2015年、最も鮮烈な登場を果たした17歳の肉声

デビューアルバム『hollow world』が大きな波紋を巻き起こしている、17歳の現役高校生ラッパー/ボーカリスト、ぼくのりりっくのぼうよみ。

彼のことを知ったのはデビューの数ヶ月前だった。最初に数曲のデモを聴かせてもらった時に鳥肌が立った。「これはすごい才能が出てきたんじゃないか」という直感があった。そして、完成したアルバムを聴いて、改めて確信した。

ここまで研ぎ澄まされた形で「まだ名前のついていない感情」をポップ・ミュージックに昇華できるアーティストはそうそういない。孤独なのか、不安なのか、空虚なのか――上手くは言えないけれど、とにかく誰もがどこかで感じたことがあるだろう、果てのない深みのある感覚。それを、とびっきりメロウな歌声が描き出す。一度聴いたら耳が惹きつけられるキャッチーさと、ハッとさせられる奥深い世界観の両方を持っている。ラップというスタイルだけれど、既存のヒップホップともR&Bとも違う新しい形で、それを魅惑的な音楽にしている。しかも、まだ17歳。高校3年生だ。とても大きな才能だと思う。

大学受験を控えた彼。模試が終わった後の時間をもらい、インタビューを行った。

取材・文=柴 那典


客観的な自分は小学生の頃からずっといた


ーーアルバム、傑作だと思います。いろんなところから評価が届いていると思いますが、まずアルバムが完成して最初の感触はどうでしたか? 

ぼくのりりっくのぼうよみ:曲を作って動画を上げるのとは、やっぱり違いますね。まとまってるだけあって重さがあるというか。

ーーレコーディングの途中にも一度お会いしましたけれど、『hollow world』というタイトルは、その時点では決まっていなかったですよね。

そうですね。でも最後に決めたわけではないです。たしか10月くらいだったかな。「会議があるから決めてくれ」とか言われた覚えがある(笑)。

ーーこのタイトルはどこから?

「world」という言葉を入れたいと思っていたんです。やっぱり1枚を通してひとつの世界観が完成する感じが初めてだったので。そこに対する形容詞を探してた感じですね。

ーー「空虚な世界」という意味もあるし、「hello, world」というプログラミングで最初に表示させる決まり文句が、デビューアルバムというタイミングにもかかっている。そういう二重性は、このアルバムにすごくしっくりきてると思いました。

ぴったりな名前を思いついた感じはありますね。「これはきた!」って感じでした。

ーー僕がアルバムを聴いた感触は、いろんなものが俯瞰で見えてしまうがゆえの悲しみや空虚さなんです。そういうものが、いろんな曲にモチーフとして出てきている感じがある。

それは順番が逆かもしれないですね。俯瞰だから悲しいとかじゃなくて、ただ悲しいことを俯瞰的に見ているという。いや、逆でもないかな。悲しいものを俯瞰的なところから見ている。その両方がずっとある。そういう感じです。

ーーそれは、最初に自分が曲を作ってリリックを書いてラップした時から自覚的でした?

どうだろう、「sub/objective」からですかね。それまでは、ラップというのはメロディーを使っちゃいけなくて韻を踏まなきゃいけない、みたいな謎のルールみたいなものが僕の中にあったので。それから脱却したという感じですね。それまでといっても、それまでに作った曲は2、3曲なんですけど。

ーーそこで何かしらの開眼があった?

自転車に乗れるようになったような感覚ですかね。何があったわけでもなく、ただ乗れるようになった、みたいな。

ーー「sub/objective」という曲を作ったのは15歳の頃なんですよね。何がきっかけになって書いた曲か覚えてますか?

特に象徴的な出来事があったとかじゃなくて。たしか春休みとかだったと思うんですけど、ずっとダラダラしていて。もともとは、ネガティブなことを書こうというか、自分のダメな部分を洗い出そうみたいな曲なんです。それをラップにしようと思った。ここから曲の作り方も変わったと思います。

ーー「sub/objective」という曲のリリックは、1番で「subjective(=主観的)」な視点が2番で「objective(=客観的)」になっているわけですよね。どうやってこの構造になったんですか?

最初は、ぼんやりと自分のダメなところを書いていったんですけど、尺が足りなくなって。他のJ-POPの歌詞でも、2番から逆のことを歌ったりするのがあるから、これはいけるなと思ったんです。そこから、1番は主観的で、2番は客観的にした。客観的に自分が嫌だと思ったところを書いていった感じです。

ーーこの視点って、アルバムのいろんな曲のモチーフになっていると思うんです。そういう風に、客観的な視点が生まれたのはなぜだったんでしょうか。

客観的な自分がそこで初めて出てきたわけではなくて、前からずっといたんですよね。漫画でも、みんなと真面目にやってるのを俯瞰で見てくだらないと思う自分、みたいな表現ってあるじゃないですか。そんな感じです。そんな風に考えていても何も作り出せないし変わらないってわかってるんですけど、そう思ってしまう自分がいる。

ーーそうやって、俯瞰のカメラみたいにして自分のいる状況を見てしまうのはいつ頃からのことですか?

小学生からですかね。

ーーそれはなぜでしょう。

どうなんだろう……。昔から本はよく読んでいて。自分の人生と小説を読むのがそんなに違っていないという感じがあったのかもしれない。日常の中であるシチュエーションに出会ったときに「物語でこのシーンを見たことがある」とと思ったりしたことはあったかな。「このときあの小説の中ではこうだったな」みたいな。

ーーちなみに、どういう本が自分の心に残っていますか?

小学生の頃は海外のファンタジー小説をよく読んでいました。最近はあんまりそういうものは読まないですけどね。最近読んだ中では楡周平の『再生巨流』が面白かったです。物流の話なんですけど、面白かったですね。

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ぼくのりりっくのぼうよみ

横浜在住の高校3年生、17歳。早くより「ぼくのりりっくのぼうよみ」、「紫外線」の名前で動画サイトに投稿を開始。

高校2年生だった2014年、10代向けでは日本最大級のオーディションである「閃光ライオット」に応募、ファイナリストに選ばれる。主催のTOKYO FMの人気番組「SCHOOL OF LOCK!」で、その類まれなる才能を高く評価されたことで一躍脚光を浴び、既にTwitterのフォロワーは10,000人を超えている。

これまで電波少女(DENPA GIRL)のハシシが主催するidler recordsから4曲入りEP『Parrot’s Paranoia』をリリースしているが、今回2015年12月16日にリリースする1stアルバム「hollow world」が初めてのCDリリースとなる。

他のトラックメーカーが作った音源にリリックとメロディを乗せていくラップのスタイルをベースとしつつ、その卓越した言語力に裏打ちされたリリック、唯一無二の素晴らしい歌声、高校生というのが信じられない程のラッパー / ヴォーカリストとしての表現力が武器。

音楽シーンに一石を投じる強烈な才能の登場である。


オフィシャルサイト


■1stアルバム『hollow world』


2015年12月16日(水)
VICL-64487 / 2,000円(税別)
[ 収録楽曲 ]
1. Black Bird
2. パッチワーク
3. A prisoner in the glasses
4. Collapse
5. CITI
6. sub/objective
7. Venus
8. Pierrot
9. Sunrise (re-build)


■ヴィレッジヴァンガード限定シングル『sub/objective』

sub/objective
2015年11月12日(木)発売
NCS-10105 / 1,000円(税別)
[ 収録楽曲 ]
1. sub/objective
2. パッチワーク
3. 海月


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