1000say、新編成で新たな期待感を抱かせた奇蹟のようなツアーファイナル

1000say

12星座をモチーフにした傑作1stフルアルバム『APOLLON』から4年を経て、新たな代表作となる2ndフルアルバム『BABYLON』を作り上げた1000say(ア サウザンド セイ)。特に近年ではライヴバンドとしての成長が目覚ましい印象で、「JAPAN EXPO」の出演が契機となり海外のファンも獲得しているほか、東名阪は勿論、仙台でプレイする機会も多くなった彼ら。『BABYLON』は東日本大震災の被災地に幾度と足を運び見聞きしたものが結実したアルバムと言える。1000sayならではの多彩な音楽性…ロック、ブラックミュージック、ヒップホップ、R&Bなどにファンタジックなエッセンスも織り交ぜた魅力もさることながら、彼らならではのメッセージ性が殊更に顕著となった。アルバム完成後から精力的なツアーを展開してきた1000sayだが、そのツアーファイナルの会場となったのは代官山UNIT。天井高があり開放感あふれるフロアを千言LOVERS(1000sayのファン)が埋めた。そして本公演は『BABYLON』リリースツアーのファイナルであるとともに、結成10周年のメモリアルライヴという位置づけ。しかし公演直前に発表されたのはまさかのシンセサイザー奏者MICHELLEの突然の脱退劇…。本来であれば悲観的にならざるをえない状況だったはずだ…が、そうはならなかった。

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「THE GATEWAY TO BABYLON」がSE代わりに鳴り響き、3人のメンバーが登場する。ステージ向かって左側にAPI(Vo,Ba)、そして右側にMAN(Vo,Gt,Syn)、そしてセンター後方には一段高くドラムセットが授けられてNONが座る。フロアに手拍子が鳴り響き、誰もがアルバムの構成通りに「DET-ROCK」に突き進むと思ったがそこには意外な展開が待ち受けていた。<夜が明ければこの街で眠ろう 凍えた光は深くて痛いよ 壊れた世界がキミを連れ去っても 繋いだ手と手は離さない>…MANが愛器ジャズマスターでアルペジオを紡ぎ歌い、APIがハーモニーを重ねる弾き語りパートの導入部が用意されていたのである。そして「史上最高の夜にしましょう!」というMANの声とともにアッパーな「DET-ROCK」の幕上げ。シャープなバンドアンサンブルにMANのポエトリーリーディングが連なり、ギターソロもフィーチャーされる。そして間髪明けずプレイされた「SPECTRUM」では“Hey! Hey!”というオーディエンスの掛声とともに無数の拳が上がり、終始コール&レスポンスとシンガロングのメロディがUNITのフロアに鳴り響く。冒頭から相当なテンションであり実に激しい盛り上がりっぷりである。間違いなく1000say史上過去最速で沸点に達したライヴだろう。最初のMCでMANは結成10周年という節目でありつつ、3人編成での新しいスタートとなるライヴになること、オールタイムベストな最高のセットリストを用意してきたことを語った。

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「今日は何曜日だっけ?」という問いから、NONならではのアグレッシブなドラミングが痛快な「DANCE IN THE SEVEN DAYS」ヘ。さらに“SPARK!”の掛声でオーディエンスが拳を振り上げてジャンプする「PHANTOMAGIC」、もはや“1、2”の合唱カウント無しで成立しない「HANE」といった名曲が立て続けに披露される。続く「BORDERLINE」はMANのジャズマスターならではの巻弦のソリッドなリフと、NONのタイトなビート感で大盛り上がり。MAN、APIのボコーダー処理された追っかけボーカルが楽しい。さらに重々しいムードのSEによるインターバルを経て、やはりMAN、APIのボコーダーボーカルがフィーチャーされた「FIFI」へ。NONのハードな変拍子ドラミングにAPIのスラップベースという鉄壁の女性リズム隊に、MANのグルーヴィなギターカッティング、同期シンセが絡むこの曲は、1000sayの抜群の演奏力あっての1曲。そしてPVも撮られた「LET IT DIE… LET IT LIVE!」も大盛り上がりで、サビのコール&レスポンスがますます場のムードを高めていく。激しいギターロックが熱を帯びていく様と、近未来をどことなく感じさせる空気感がUNITに立ちこめた。

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新境地の楽曲とも言える「タイムマシン」ではAPI、MANともに弦楽器を置き、APIは赤く、MANは青く光るスティックを用いてのパフォーマンス。NONはエレパッドも用いたドラミングで、MANもまたエレパッドを叩く。APIが軽やかに舞うように、スタンドマイクで透明感あふれる歌声を披露するこのパフォーマンス、そして何処か浮遊感漂うムードはこれまでの1000sayのステージにはないタイプのものだ。ライティングは薄いブルーに統一されて、その中でAPIが伸びやかに上げた手でスティックを叩き赤く光らせる姿が実に幻想的な光景。さらに「CANARY」は“KAZE NO TANI Remix”のアレンジバージョン。ここではAPIはクラベスを叩き、やはり舞いながら歌っていく。4分打ちのダンスビートは徐々に熱を帯びていき、サウンド面では『APOLLON』と『BABYLON』のブリッジ役になったとも言える「GAIA」へ。ボーカルエフェクトも加味したハードなデジロックへ一転するのだが、NONのドラムソロがフィーチャーされるアグレッシヴなアレンジが1000sayならではである。

そして「THE ODYSSEY OF NOAH」から『BABYLON』ストーリーは佳境へと進んでいく。「方舟に乗って宇宙への旅に出よう!」というAPIの言葉に続いて、軽やかなシンセアルペジオのフレーズが鳴り出す。『BABYLON』の核とも言える「流星DESTINY」だ。APIのリードボーカルをフィーチャー、MANのエレピプレイによる軽やかなサウンドスケイプが拡がっていく。タイトな指弾きベースとやはりNONのドラムソロもフィーチャーしたアレンジが聴き応えたっぷり。さらにMANは再びジャズマスターを手にして、トレモロピッキングを駆使したギタープレイを繰り出す「サジタリウス」へ。シングルコイルサウンドならではのきめ細やかなドライブ感を感じさせるギターソロも聴きどころだった。直後のMCではMICHELLE脱退の経緯が驚くほど率直に語られて、何処かにいるMICHELLEを気遣いつつ笑顔でメッセージを送る3人。普通ならヘヴィなことになってもおかしくない局面だが、不思議なほど和やかで千言LOVERSの笑いを誘えるあたりに、音で繋がることは勿論のこと、1:1の人間関係を極めて重要視してきた1000sayだからこそのシーンにも思えた。その痛みもリスペクトもオーディエンスには伝わるのである。

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そしてライヴは終盤戦へ。1000say史上、最もヒップホップテイストを押し出した「V.I.P.」は関東圏では初披露。NONのファンキーな16ビートドラミングにAPIのスラップベースリフ、そしてMANのラップ調ボーカルが連なっていく。サビでは“YEAH!”の掛声がUNITに響き渡る大盛り上がりで、一転してAPIの可愛らしいラップ調ボーカルパートもあれば、MAN渾身のギターソロも披露されたりと、これまた今までにない1000sayの一面で楽しませる。さらにジャンプ、タオル振り回しで千言LOVERS達がもみくちゃになるお馴染み「BASKET SHOES」が登場。再びMANはシンセ、ボーカルに回り、APIとのツインボーカルで出逢いの奇蹟を歌い上げる。そしてこれまではMICHELLEが担当していたオカリナソロパートは、MANが代わりに吹くというサプライズも用意されていた。ラストナンバーは1000sayにとってのデビュー曲と言える「LOSTMAN」。10年の歩みを凝縮した本編の最後にはあえて彼らのスタートラインの楽曲をプレイ。未来へのイマジネーションを想起させる音はいまだ色褪せることはない。

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アンコールではまず『BABYLON』Tシャツに着替えたNONが再登場。MCの最中、千言LOVERS達からまさかのグリーティングカードが手渡される一幕も(このカードは最終的にアンコールで3人それぞれに手渡された)。そして暗転したステージに不穏なムードが立ちこめ始めたかと思いきや、銀髪のウィッグにやはりMICHELLEが愛用していた赤く点滅するサングラスをかけたAPIが登場。MANとともにステージをくまなく駆け巡るようなステージングを展開する「MICHELLE AGAINST THE MACHINE」だ! MICHELLE無しでお蔵入りするのかもと思っていたこの曲を、ちゃんとMICHELLEテイストを継承して(APIはわざわざMICHELLEに扮して…)プレイしてみせる1000say。これにはフロアはもう大歓声を上げてさらに大盛況となり、MANはジャズマスターをフロアに委ねて弾かせるといったシーンも。さらにダブルアンコールを求めて巻き起こる声に応えて再び三人が登場。そして最後の最後にはお馴染みのコール&レスポンスからポジティブなヴァイヴを生み出す定番ナンバー「HOLY RAIN」が奏でられてライヴは幕を下ろした。

渾身のオリジナルアルバム『BABYLON』のリリース、そして結成10周年という大きなタイミングに達した1000say。“1000sayがフェイドアウトするとか思っている人がいるかもしれないけど、もう来年もライヴ決まっているから!”とはMCでのMANの発言だが、すでに彼らは先述の通り、結成10周年という節目とともに3人編成での新しいスタートを切っている。欠けようのない4ピースのうち1つを失いつつも、3人は卓越した演奏技術と持ち前の旺盛なエンタテインメント精神により、トリオでもいつも通りのステージングを具現化してみせた。それはある種の絶望を抱いていたかもしれない千言LOVERSに、嬉しい驚きとともにバンドとしての新たな覚悟も提示するという、まるで奇蹟を起こしたかのようなライヴだった気がする。「1000sayは大丈夫だ!」という確信とともに、『BABYLON』を経てこの先どんなものが生まれてくるのだろう?と僕らは早くも新たな期待感を胸に抱いたのだ。

Photo:Takayuki Kimeda、Yokito Oku
Text:北村和孝

オフィシャルサイト

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